文明人を目指す
ゲームばかりしてるとバカになる。
つまらないダジャレみたいなものだが、あながち間違ってないと思ってる。
ただ、正確にいうなら、ゲームばかりしてると思考が理解されなくなる、だ。
例えば初期からクラフト出来る『焚き火』、普通の人ならこの『焚き火』で何をするのだろう。
夜の暗闇を照らす灯りとして使うのだろうか。
それとも、寒さをしのぎ暖をとる為に使うのだろうか。
はたまた、料理をするのに使うかもしれない。
では、オレはどう考えるか。
『焚き火』の灯りで敵を呼び寄せる為の罠として使う。
『焚き火』を使って継続的に延焼ダメージを与える為の罠として使う。
そんなことを真っ先に考えてしまう。
こういった理解されない部分がバカに見えるのだと思う。
現在、オレが欲しいのはコスプレ本。
どっかの巡回中のオンナが持ってた謎アイテムじゃない。
だからこそ、コスプレ本が欲しくてマップを眺め、どこを探索すれば手に入るのか考えていた。
で、バカだったことに気づく。
普通、本が欲しいなら買うのでは?
およそ文明人とは思えない生活をし過ぎて、お店で買うという考えがオレから無くなっていた。
とはいえ、オレは無一文。
お金なんて持ってない。
だが、考えてみればそもそもこの世界に国家なんてものは存在してない。
つまり、国家が発行する紙幣もない。
ってことは、何かしらお金の代わりになる物をお金として利用してる訳だ。
では、商売の本質とはなにか。
それこそ、物々交換だ。
結局商売なんて、お金という物と別の物を交換してるだけ。
だったら、オレの物と相手の物を交換することも可能なはず。
そこで瞬時に思いつくのが水商売だ。
文字通り『綺麗な水』を売ることだ。
イメージだと、なんか綺麗なお姉さんがエロい服を着て売ってる気がするが、多分たまたま売り子がそういう人なだけだろう。
そして、偶然か企業努力で販売員の付加価値が商品単価を上げ利益を生み出す商売ってことだ。
是非とも、オレも真似したいが、生憎これは却下だ。
なぜなら、水は無尽蔵だが『空き瓶』には限りがある。
何処かで大量の『空き瓶』を入手、もしくはクラフトしない限り、商売(取引)として成立しない。
そうなると、オレが売るべき物は水を使う食料となる。
これなら、毎日収穫出来るし。
なせかこの新鮮野菜、保管しても腐らないし。
オレはそのまま食べてるが、料理にも使えるし。
リアルなら怪し過ぎて食べたくないが、ゲームだし。
うん、売っても問題ないだろう。
で、売り先なんだが、オレが知ってるのはマミコの店だけだ。
ってな訳で、遺伝子操作によって永遠の若さと瑞々しさを与えられた特別な野菜を持って、商売しに行くことを決めた。
ところで、ビジネスなら大事なステータスがある。
それが『魅力』だ。
オレの場合、現在『魅力』は4。これが高いか低いか分からないが、少なくとも『イヴニング』より低いことは確定してる。
それでも、『イヴニング』を連れて行く訳には行かない。
どう考えても人類とオンナの間にある溝ときたら、マリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵くらいありそうだ。
例え『イヴニング』がテイム済みでも嫌な予感しかしない。
そこで『イヴニング』には地下でお留守番をお願い(命令)した。
『待機』でも、その場にある軍服と女性用下着を即着用したことから、装備に対する優先順位の異様な高さもついでに知ることが出来た。
とはいえ、確かに装備は大事だ。
これからマミコに会う訳で少しでも好感度がアップするように、マミコから貰った装備にする。
世の中、プレゼントした物を身につけてくれると喜ぶらしいし。
ま、オレには経験ないけど。
ってか、複数の異性に好かれてる人が意図的に欲しい物を匂わせ、同じ物をプレゼントさせる。その中の一つを身につけ、他を全て売るという鬼畜な所業を知ってると、オレならプレゼントする気にもならない。
まあ、彼らにとっての救いは、おそらく貰った本人も誰からのプレゼントを身につけてるか覚えてない可能性があることだ。
ワンチャン、自分がプレゼントした品かもって希望はそこにある。
そんなプレゼントボックスなのかパンドラボックスなのか分からないくらい曖昧な世界に、一歩足りとも足を踏み入れたくないオレは、マミコとビジネスしようと思っている。
うん、オレにはその世界はまだ早いから……。
さてと、ビジネスで役立つ『効率厨万歳』と、目標の一つだった『隠れんぼは得意です』を習得したオレは、無事にマミコのところまで行けるのか。
既になんだかんだやってたら、夕方から夜になってるし。
『イヴニング』とお祝いしたり、巡回中のオンナたちをナンパ……むしろ肉食系の方たちとコンパしてたらこんな時間になってた。やっぱり楽しい時間ってあっと言う間に過ぎてく。
世の中、時間の流れは同じっていうけど、実は違うんじゃないかってオレは密かに疑ってる。
もち、相対性理論とは別のベクトルでの話。
なんか時間と心っていうのか精神との関係かな。相対性理論が物理法則なら、心理法則もそこにあるような気がしてる。
ほら、お湯と水を同時に冷凍庫へ入れると、なぜかお湯の方が先に凍るっていう科学的に証明出来ない事象とかあるからな。案外、時間にも不可思議な事象があってもおかしくないだろう。
ふぅ……。
リアルじゃ1秒、ゲーム内では1時間睡眠でセーブして、出発だ。




