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バカと天才



オレはチェストに入ってる水と食料の数を数えていた。

このホーム以外、離れた場所にあるチェストにも保管してるし、地下の部屋にもある。

こうやって物資を分散させるのは、サバイバーとしての習慣みたいなものだ。



そしてサバイバーだからこそ、ゲーム開始直後に目立つ拠点は作らない。

いつ拠点を壊されても大丈夫な状態にしている。

だから、こんな無防備なホームなんだが、不思議と今のところ襲われてない。それでも、これから先いつまで続けられるか不明だ。

そこで念のため、ホームにある物資で必要そうな物は全て、金庫にしまうことにした。

それが終わり、残った水と食料と少しの木材を全て『イヴニング』に渡す。



これで、準備出来た。



オレは全裸に『炭鉱夫のヘルメット』だけを装備し、『石のシャベル』と『石のピッケル』を持ってアスファルトの道路から土の地面に移動する。



後はここから、ひたすら穴掘りを開始した。




穴を掘り、インベントリに『土』や『石』や『砂』などが溜まれば『イヴニング』に渡す。

そして、ただ黙々と掘り続ける。



この世界から作業がなくなった?

あれは、嘘だ。

って感じにひたすら掘り続ける。



ってか、とにかくレベルを上げて『隠れんぼは得意です』を習得しないことには話にならない。

だが、夜間の建築レベリングは、たぶんもう使えない。

ならば次にするのが穴掘りレベリングって訳だ。


これのいいところは、それなりの経験値が入るってところ。

少なくとも、地下でひたすらジャンプしてるよりかは経験値効率がいい。


その上、掘れば掘るほど安全ともいえる。

さらに、耐久値が無くなったらその場で修理しつつ出来るところも良いし、その際必要な素材の一つ、『石』も取れる。

この状況下なら、最適だと判断した。




で、こういう時無心で掘りたいが、ついつい色々と考えてしまうお年頃。


おそらく忍者みたいなオンナに殺された訳なんだが、もしかしてオンナも『特殊能力』を持ってるのではないか、っていう疑いが強くある。


そしてもし、それが『隠れんぼは得意です』だった場合は?



お互い同じ『特殊能力』持ち、相殺されるなんて考えは、今の50%糖質カットしたオレには思えない。

むしろ、忍者みたいなオンナなら『夜間でも昼間みたいに見える』や、他の有用な『特殊能力』も所持してるのではないか。



どうしても、そう思えてならなかった。



そんなオンナを相手に、夜間に水を取りに行くのは単独でも難しいし、まして『イヴニング』を連れてなど尚のことだ。

常にオレより先を歩こうとする姿は助かるが、なにより隠密には向いてない。


そうなると現状、『隠れんぼは得意です』を最速で習得し、昼間探索するほうが良いという結論に至った訳だ。



だが、これには致命的な欠点がある。



それが水の確保だ。

巡回してるオンナから隠れられても、川に近づくと撃ってくるスナイパーから隠れられるとは思えない。

たぶん、そいつも『特殊能力』持ってそうだから。


むしろ『イヴニング』みたいに『ポーン』だけ『特殊能力』を持ってないと思いはじめてる。


その代わり、『イヴニング』は特訓することで経験値を大幅に稼ぎ、そうやって好きな『特殊能力』を付与出来るのではないか。って感じかもしれない。


それならそれで、やっぱり『イヴニング』は有用といえる。

『イヴニング』の為にトレーニング施設の導入も検討すべきだろう。




で、本題なんだが、オレとしてはレベルも上げたいし、水も欲しい訳だ。

そこで穴掘りなんだが、これにもちゃんと別の理由がある。



なにせ、マミコ曰くこのマップには複数の湧き水ポイントなるものが存在してるらしい。

それって地下水脈が豊富ってことだと思えた。

それなのに、サバイバルゲームでおなじみともいえる井戸がロックされたままだ。

すぐにでも解放したいのだが、アンロックする条件が拠点の人数が5名以上だから、それが現状無理。



そこで発想を変えた。



井戸がクラフト出来ないなら、人力で掘ればいいじゃないか、と。

地下水脈まで掘ればいいじゃないか、と。



もしかして、オレってバカなのか。

そう自問したら、いや天才だ。

と、オレが答えた。

ならば、天才なのだ。



さてと、天才のオレはこの世界に地下水脈があると信じてる訳ではない。

オレが信じてるのは、この世界がゲームということだ。

リアルじゃない、ゲーム。



だからこそ、出来ることがある。



それこそ、オレが掘ってる穴の方向だ。

今、オレはひたすら川へ向かって掘ってる。このまま川まで掘れば、確実に水にたどり着くが、そこまで掘るとオレは溺れて死ぬだろう。



だが、川の少し手前なら?



ほぼ安全に川まで行けるルートを開拓出来るのではないか。

しかも、そのルートまでの道はマップを見れば一目瞭然。

だって、地下にいても地上マップが表示され、ゲームだからこそオレの現在地も正確に表示されているんだぜ。



この機能をここで活かさない理由などない。



そんな事を考えながら、オレは自分のインベントリを圧迫する『土』や『石』や『砂』を、カーソルを『イヴニング』に合わせて移動する。

その際、オレのヘッドライトが『イヴニング』を照らした。


暗闇の中、ライトの明かりに照らされる『イヴニング』は、少し眩しそうな表情を浮かべる。



おっと、失礼。



オレは直ぐに視点を胸に変える。

そこには服を着た『イヴニング』の胸がライトアップされている。



もちろん、服は着てる。



ただ、少しでも重量を持てるように気を使ってくれたのだろう、『イヴニング』は今、下着を着用していない。



実に仕事熱心だ。

素晴らしい。



やはり仕事と向き合う姿勢とは、こうあるべきなのだ。

生肌に服という組み合わせの素晴らしさを、『イヴニング』の胸で実感しながらアイテムを渡していく。

リアルならセクハラ案件の可能性が高いが、これはゲームっていう魔法の言葉がある。



オレの大好きな魔法だ。



この魔法の特別なところは、別に30歳で賢者にならなくても発動出来るところだ。


とはいえ、この程度は子供の浅知恵といえる。

だって、本物の大人の凄さをオレは知ってる。




実は本物の大人……リアルで『特殊能力』を使えるらしい。

正直、これにはオレも驚いた。


初めは勿論、疑いもした。


でも、オレはこの目で見た。

マジだった。




そう、あれは紛れもなく『時間停止』だった。

そしてこれこそ世界の秘密であり、深淵ともいえることだが……



なんと、『時間停止』してる最中も犬は動けるんだぜ。




マジで犬、凄い。

それに動じないAV俳優も凄い。

やっぱり大人って凄い。



そんな訳で、オレも彼らみたいな立派な大人を目指し、穴を掘りますか。

男……ですし。



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