光と影
まず、名前の変更が出来るようになった。
そこでこのオンナの名前を変える。
『イヴニング』
実に素晴らしい名前だ。
そう言えば責任がどうのって聞こえたが、もはやこの名付けで全ての責任を果たしたといえるだろう。
なにせ、毎日英語圏の人々が大勢褒めてくれる名前だからな。
これに匹敵する『モーニング』は次のオンナにとっておこう。
次に出来るようになったのが『命令』だ。
人権無視するような背徳感な感じがたまらない。まあ、お互い人間じゃないけど。
待機:そのまんまその場にいることみたいだ。
警護:これは対象を選ぶことで、その相手を警護するのだろう。
現状、オレしか選べないが。
警備:これは地図が表示され、『寝袋』を設置した場所を選ぶ感じだ。
おそらく、その『寝袋』にエリア判定があり、そのエリア内を警備するのだろう。
採取:これも地図から範囲を選ぶタイプだ。
その指定範囲内で採取すると思われるが、大まかに朝、昼、夕方、夜の4つから時間帯も指定出来る。
育成:専用のトレーニング施設を利用することで、大幅な経験値を獲得出来る。らしい。ってレベル上げ要素か。ヤバッ……。
研究:これも試してみないと分からないが、説明の感じだとクラフトの種類が増えるみたいだ。
運搬:これは複数の拠点を持った時、文字通り物資の運搬をする為みたいだ。地図からチェストとチェストを選ぶみたいに設定する感じだ。
偵察:これは多分地図の穴埋めが出来ると思われる。実際、事前に地形を把握出来たら、かなり探索で有利だろう。
と、ここまでが多分常識的な命令だ。
ここから先が、変態の領域。
操縦:テイムしたオンナを乗り物みたいに操縦出来る。らしい。それがおんぶなのか、お馬さんごっこなのかは、是非とも試してみたいところだ。
一応、鞍みたいなのが別に必要らしい。
交配:年に一度だけだが、プレイヤーとテイムしたオンナとの間で交配出来る。らしい。ただ、妊娠出産とは違い、培養ポッドが必要になるそうだが、オレ、それ、ある。
撮影:もうね、なんて言うかテイムしたオンナをコスプレイヤーみたいに出来る。らしい。いいね。欲望を隠さないその感じ、嫌いじゃない。思わず、クラフトで服ばかり作りたくなる。
ってことを考えて、ふと気づいた。
オレは改めて床で寝てる『イヴニング』を見た。
…………これって、エロいのでは?
無防備に床で寝てる姿。
微かに聞こえる寝息。
まるで鼓動を感じさせる胸の動き。
手錠がもたらすインモラルなシルエット。
エロいじゃん。
めっちゃエロじゃん。
オレってば、なんでこの状況で文字なんか読んでたんだ?
自分が信じられない。
こんなエロの神が降臨してるとき、もはや不遜ですらある。
例えるならデート中に彼女じゃなく、他の女を見てるようなものだ。
下手したら別れ話になってもおかしくないだろう。
それぐらい失礼といえる。
ごめん。
すまなかった。
許して欲しい。
そんな気持ちを込めて、オレは『イヴニング』のインベントリを開いて装備を外していく。
ひとつ、ひとつ、丁寧に。
そして、こんな愚かなオレを許してくれ。
って感じで『イヴニング』を見た。
こうして改めて見ると、マジで美女なんだよな。
ただ、一点納得がいかないところがある。
そう、光あるところに影があり、肝心のところが暗くて見えない。
視点変更しても、しゃがんでも見えない。
見えそうなのに、見えない。
あと、ちょっとなのに。
誰かレフ板(撮影用反射板)を当ててくれ。
これはグラフィック検査に必要なことなんだ。
いや、そんな事務的な気持ちじゃダメだ。
もっとこう人間的な本能を呼び覚ますような熱い思いこそ必要だ。
さあ、今こそ目覚めの時。
オレの本能よ、本気出せ。
尻とふくらはきの間、まるで架け橋のような腕がある。
間違いない、たしかにそこに希望がある。
人類を救うかもしれない希望が。
だがしかし、今、その場所は闇に包まれている。
閉ざされたその場所は、きっと助けを求めてる。
ああ、オレにはその声が聞こえる。
はっきりと、聞こえる。
ふぅ……。
人間とは諦める生き物なのか?
否、断じて否。
困難に対して道具を使ってきたのが人間である。
ということで、さっそく『作業台』に行く。
そしてお目当のアイテムを見つけた。
『炭鉱夫のヘルメット』
いわゆるヘルメットにライトが付いてるものだ。
そう、暗いなら照らせばいい。
オレはそれをクラフトし、装備した。
いつも全裸のオレだけど、ようやく人並みに装備を身につけたのだ。
それこそ、誇るべきことなのだろう。
ならば、このアイテムは今だけ別の名称で呼ぼう。
『冒険者のヘルメット』と、
これこそ、このアイテムに相応しい名。
いざ、暗闇を照らし
人類に希望を見せるときだ!
気分だけ冒険者のオレは颯爽と地下に降り、部屋に戻る。
すると普通に『イヴニング』が起きて床に座っていた。
そして、黙ってこっちを見てる。
おっと、なんか気まずい空気です。




