テイム完了
今、オレの眼前には忌まわしきオンナがいる。
普通ならどうするのだろう。
もしかして、復讐とか言いながらこのオンナを殺すのだろうか?
だが、生憎オレは普通ではなく変態だ。
そんな勿体無いことする訳がない。
大体、せっかく人間のフリをやめたのに、ここで活用しなくてどうする。
という訳で、オレはオンナに近づくと×ボタンを長押しした。
これをする事で運べると思ってたが、画面には重量オーバーの表示がある。
おや?
今のオレは既に『ボッチですがなにか?』まで習得してる。
ってことは、総重量は60kgまで運べるはず。
所持してる水や食料の重量を考えても、十分このオンナを運べると思っていた。
もしかして、見かけより重いオンナなのかもしれない。
それに気づいたオレは、オンナのインベントリ(所持品)を開いて確認した。
すると重量120kgという表示と、バカみたいな数の武器がリストに出てきた。
なんなんだ、このオンナは。
武器ショップでも開くつもりだったのか。
そうツッコミしたくなるほど、大量の武器を所持していた。
オレはその武器を持てるだけ自分のインベントリに移し、『寝袋』の近くまで戻った。
辺りを見て、少しでも目立たない場所へ移動すると、全ての武器をそこに捨てる。
それを繰り返して、武装的にオンナを丸裸にした。
ま、当然だな。
こんな武器庫みたいな状態じゃ運べないし、かといってチカの秘密基地に物騒な武器を捨てる訳にもいかない。
ただ、軍服や下着はそのままにした。
理由は簡単だ。
コスプレ衣装を捨てるなんて、変態には出来ない行為だから。
なにより、脱がせる楽しみってヤツは大事にすべき、というオレなりの信念もある。
さてと、ここですべきことは……
おっと……まだ、あった。
オレは廃墟にあるヌイグルミを拾うと、一旦オンナをどけて、その場所にヌイグルミを捨てた。
ホントは置きたいが、その動作が出来ないから仕方ない。
そして、ヌイグルミの側に『綺麗な水』と食料を少し飾るようにした。
ん、よし。
まあ、こんなものか。
チカが戻ってきたとき、何もなかったらきっと悲しむだろう。
これで少しはその悲しみが和らげればいい、そんな風に思った。
後はこのオンナを連れて帰るだけだ。
探索などで寄り道しなければ、時間的には多分間に合うはず。
そう考えて、オレは帰宅した。
実際、その考えはある意味では正しかった。
ゲーム内時間で2時間ぐらいで戻って来れたのだから。
しかし、それはここで1時間睡眠すると、オンナが先に目覚めてる可能性が高いってことでもあった。
しかも、現時点でチカのイベントだけで4つセーブデータがある状態だ。ここでセーブすると、どう足掻いてもチカのイベント前に戻ることが出来なくなる。
それは、なんとなく避けたい。
そこでオレはオンナを地下に運ぶと、セーブせずに目覚めるのを待つことにした。
オンナは汚物を見るような眼差しでオレを見ている。
右手と右足を手錠され、左手と左足も手錠されているオンナは、強制的に床の上に座ってる状態だ。
「くっ……薄汚い人間が考えそうなことだ。だがな、こんな事をして許されると思うな。必ず私の仲間が来て、お前を八つ裂きにするだろう」
画面には『テイム薬』を使用するかと表示された。オレは『はい』を選ぶ。
「くぅ……こんな真似をしてタダで済むと思うなよ。おぞましい人間が。気持ち悪い。この私に近寄るな」
画面には『テイム薬』を使用するかと表示された。オレは『はい』を選ぶ。
「きゃふん……こんな事をしても意味などないぞ。この私が貴様なんぞになびくと思うな、人間がッ」
画面には『テイム薬』を使用するかと表示された。オレは『はい』を選ぶ。
「にゃ……いい加減にしろ。何度しても無駄だ。なぜ、それが理解出来ないのだ。これだから知能の劣った人間なぞ、生きてるだけで害悪なのだ」
画面には『テイム薬』を使用するかと表示された。オレは『はい』を選ぶ。
「やぁん……いいか、今すぐやめなければ殺すぞ。絶対に殺す。必ず殺す。何が何でも殺す。殺す……」
さてと、オレがなぜ淡々と『テイム薬』を使用してるのかと言えば、もう散々このオンナに殺されたからだ。
最初は軽く挨拶でもしようとオレは思っていた。
が、そんなオレをこのオンナは素手で瞬殺しやがった。
そして、目覚めるとあの銃声。
また、セーブデータを選びロード。
全部やり直して、再度ここまで戻ってきた。
もちろん、そのまま待つ訳にはいかない。
『作業台』と睨めっこしながら、『ロープ』というアイテムをクラフトした。
説明には対象を拘束出来るみたいな事も書いてあったからだ。
で、それをオンナに使用して、さあ今度こそ対話を……って思ってるオレの目の前で、このオンナはロープを引きちぎり、普通にオレを殺した。
オンナを拘束出来ない『ロープ』ってなにを拘束する為なのか、少し考えて闇を見た。
そして、また響く銃声。
また、全てやり直しでここまで戻ってきた。
今度は『手錠』をクラフトした。
説明には強固に拘束するって説明を信じて使おうとしたら、手と手、手と足、足と足、と項目が表示される。
意味が分からなかったオレは、普通に手と手を選び、オンナを拘束した。
すると、目覚めたオンナに蹴り殺された。
そして響く銃声。
また、全てやり直して戻ってきた。
今度は両手、両足を『手錠』で拘束。
もう、大丈夫だと思ったら、目覚めたこのオンナはこっちに向かって飛ぶと、床に両手をつけ側転するようにしながら、両足を使ってオレを殺した。
そして響く銃声……っていい加減にしろ。
何度も何度もチカが殺された時の音を聞かせやがって。
こうして完全にうんざりしてるオレは今、淡々と作業してる、って訳だ。
で、『テイム薬』を使用した。
「あぁん……ホントに殺すぞ。貴様も死にたくはないだろ。今ならこの拘束を外し私を解放すれば、見逃してやらないこともない。どうだ?」
『テイム薬』を使用した。
「んぁ……くッ……なぜ、答えない。なぜ、何も言わない。私の言葉が分からないのか?」
『テイム薬』を使用した。
「あっ……あっ……こ、これ以上はやめろ。分かっているのか、自分が何をしてるのか?」
『テイム薬』を使用した。
「んっ……はぁん……やめてくれ。た、頼む。ホントに……私が私ではいられなくなる」
『テイム薬』を使用した。
「あっ……あぁん……はぁ………はぁ……せ、責任、とって貰うからにぁ……」
責任?
問題ない。
現状、このオンナの名前『ポーン』の下にはテイムゲージなるものが表示されている。
その数値は94%
これは時間経過で下がっていく。
そしてここまで使用した『テイム薬』の数は9個。
間違いなく、次でラストだ。
おっと93%に……まずい、まずい。
ってな訳で、サクッと
『テイム薬』を使用した。
「んっ……んっ……んんっ……」
オンナは口を閉じ、何かを我慢するように目も瞑った。そして眉を少し寄せると、ビクビクと軽く痙攣する。
その後だらしなく口を開き、熱い吐息を出しながら床に倒れた。
画面にはお店のPOPみたいに
『テイムが完了しました』
と表示された。
ふぅ………。
一仕事終えたサラリーマンって、こんな気分なのかな、と勝手に無礼な想像しながらオンナを眺める。
オンナにカーソルを合わせると、今までとは違う項目が表示されるようになっていた。
くくくっ
さーて、どうやらお楽しみはこれからみたいだ。




