表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星⭐︎すらぐ!!  作者: 藍川 卯木子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/51

第三十五話 暗闇の底へ

「おい、エチカ! しっかりしろよ!」


 俺たちは闇の底へ真っ逆さまに落ちていた。

 落下している際に生じる風が鼓膜を震わせ、上下の感覚すら曖昧になる。

 腕の中のエチカは、先ほどの衝撃で完全に固まっていた。

 俺の声なんて、いまのエチカには届いていない。


「くそっ、仕方ねぇ」


 俺は片腕でエチカを抱えたまま、もう片方の手でポシェットを必死に漁った。

 ポシェットに手を入れると、見た目以上に容量があることがわかる。

 しかし今はそんなことは気にしてられない。

 指先に触れたのは、あのプロテクトジェルの小瓶。考えるより先に引っ張り出し、落下地点めがけて力いっぱい投げつけた。

 地下は見た目以上に深いらしく、底はまだ遠い。俺はエチカの頭を守るように強く抱きしめた。


 ――ぽよん。


 その弾力に包まれながら落下の衝撃を吸い込まれた俺は、妙な気持ちで胸が締めつけられた。

 小さな体で、地球から遠く離れた惑星スラグまで親友を探しに来たエチカ。

 だが、その親友は死んでいる。その原因が、あんなゲス野郎のせいだなんて。

 だが今は、俺が立ち止まっている場合じゃない。エチカが絶望に沈んでちゃいけない。

 俺は、こいつがいたから希望を見つけられた。だから今度は、俺が支える番だ。

 プロテクトジェルから抜け出し、俺はエチカをそっと床に立たせた。

 あたりは真っ暗で、手を伸ばしても自分の指先すら見えない。

 俺は手探りでエチカの肩に手を置いた。


「エチカ、しっかりしろ。アイツの言葉が本当かなんて、まだ分かんねぇだろ」


 慰めなんて得意じゃない。言葉がうまく出てこないのが自分でも分かった。


「それにお前の親友の形見、キューブを取り返すんだ。もし本当に死んでたなら、敵討ちしたっていい。俺も一緒にやる。お前が俺を助けてくれたみたいにな」


 その瞬間、エチカがぎゅっと抱きついてきた。俺の服を握る手が震えている。

 そしてエチカは唇をかすかに震わせながら、言葉を紡いだ。


「チセイのキューブ……取り返したいよ、ジーノ」

「あぁ。俺が必ず取り返してやる」


 エチカは顔を上げた。暗くてはっきり見えないが、たぶん泣いている。


「じゃあ、まずはここから脱出だな」

「うん」

「少しは元気出たか?」


 エチカは少し間を置いて、いつもの声色で口を開いた。


「元気じゃないけど……でも、よく考えたらチセイ、まだ生きてるかもしれないし!」


 そう言って、また俺の服の裾を握りしめた。


「だから、本当のことが分かるまでは、エチカ頑張る」


 すると、エチカは急にゴソゴソし始める。たぶんポシェットを漁っている。


「あった! 今、明かりつけるね!」


 取り出したのは、普通のライトらしき物だった。

 これまでの奇妙な道具群に比べれば、妙にまともで逆にホッとする。

 光が一気に広がり、俺は思わず目を閉じた。少しずつ薄目を開けると。


「なんなんだよ、これ」


 そこには想像もしなかった光景が広がっていた。

 壁も床も、赤黒いシミがべったりと染みついている。


「これは、血の跡だね」


 エチカは表情を引き締めた。


「多分、ここに落ちてきた人の血だと思う」


 背中に寒気が走った。ここに今まで何人が落とされたんだ。考えたくもない。

 だが、エチカの次の一言がその不安を吹き飛ばした。


「でも、ここから出られるよ」


 彼女はあっけらかんと笑い、いつもの自称天才科学者らしい自信満々な表情を見せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ