表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星⭐︎すらぐ!!  作者: 藍川 卯木子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/51

第三十一話 地下世界

 足を踏み下ろした先の通路は、地上とはまるで別世界だった。

 壁も床も無機質な灰色で統一され、一本の直線が奥へ奥へと伸びている。余計な装飾は何一つない。磨き抜かれた床はやけに光を反射して、そこに映る俺たちの影まで異様にはっきりしていた。

 天井には照明が等間隔で並び、白い光を寸分の狂いもなく降らせている。

 スクラップと瓦礫に埋もれた地上に慣れた目には、この整いすぎた空間のほうがよっぽど不気味だった。


「……なんか、やな感じする」


 隣でエチカが眉を寄せる。

 俺も同じ違和感を覚えていた。 

 けど、何が気持ち悪いのか、自分でもうまく説明できない。


「やな感じって、どういう意味だよ」

「うーん……」


 エチカは周囲を見回しながら、小さく唸った。


「ここ作った人、すっごく神経質そう」

「神経質?」

「うん。でも、いい意味じゃなくてね」


 神経質、って言葉自体は別に珍しくない。

 エリオットだって几帳面なところはある。

 でも、エチカが言ってるのは、そういうのとは違うらしい。


「悪い意味って?」


 俺が聞き返すと、エチカは白い壁を指先でなぞるように見上げた。


「多分、この設計した人って完璧主義なんだよ。ちょっとした乱れも許せなくて、自分のルールだけで全部支配したいタイプ」

「……支配、ねぇ」

「外の世界を汚いって思ってそう。だからここだけ切り離して、“完璧な空間”にしてる感じ」


 言われてみれば、その通りだった。

 床にも壁にも埃ひとつない。 

 空気は淀むほど静かで、風の気配すら感じない。

 まるで外の世界を徹底的に拒絶して、この場所だけを別世界として保存しているみたいだった。

 その息苦しさが、じわじわ胸に広がっていく。


「……趣味悪ぃな」

「エチカもそう思う」


 俺たちは警戒しながら通路を進む。

 やがて一本道が途切れ、開けた空間へ出た。


「なんだ、ここ……」


 思わず足を止める。

 広い。 

 だが、異様だった。

 俺たちが入ってきた場所以外に、どこにも扉がない。

 逃げ道を最初から消しているみたいな造りに、嫌な汗が背中を伝った。

 

 バッ!


 頭上から強烈な光が降り注いだ。


「っ!」


 視界が真っ白に染まり、反射的に腕で顔を庇った。


「ま、眩しいよジーノ!」

「ちっ、今度は何だ!」


 光に目が焼かれる。

 ようやく慣れ始めた頃だった。


 ゴウン――。


 天井の奥から重たい音が響き、巨大なモニターがゆっくり降下してきた。


 ジジッ――パチッ。


 画面が点灯する。

 映し出されたのは、一人の男だった。

 彫りの深い顔立ちに、作り物みたいに整った笑みが張り付いている。

 その笑顔が、逆にぞっとするほど不気味だった。


「ようこそ――ネズミさん」


 低い声が、静まり返った空間にゆっくり広がる。

 耳障りじゃないが、妙に耳に残る声だった。


「私はグライト・ブリアン。君たちを心より歓迎しよう」


 その言葉に、背筋が冷えた。

 ブリアンの声音には焦りも驚きもない。 

 まるで俺たちがここへ辿り着くことを、最初から全部知っていたみたいな口ぶりだった。

 ぞわり、と嫌なものが背中を這い上がる。

 この場所に入った瞬間から、ずっと見られていた――。

 そんな感覚が、急に現実味を帯びて胸へ沈んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ