第十四話 おもちゃ作り
エチカの隣でスクラップの仕分けをしているうちに、俺も少しずつ金属の違いが分かるようになってきていた。
軽い鉄、脆い鉄、まだ使えそうな部品。触った感触だけで、なんとなく判別できる。
「それアルミ。こっちはまだ使える鉄板ね」
エチカは次々と指差していく。
「いや、見分けつくの早すぎだろ……」
「えへへ、エチカ先生ですから!」
そんな調子で手を動かしていたせいか、気づけばかなり時間が経っていた。
ふと横を見ると、エチカがスクラップの山の端でしゃがみ込み、何やら夢中でカチャカチャやっている。
「おい、今度は何してんだ?」
声をかけると、エチカはぱっと顔を上げた。
「ロボ太郎を作ってるの!」
「……ロボ太郎?」
なんだその勢いだけで決めたみたいな名前は。
呆れながら覗き込むと、地面には角張った胴体に短い腕だけが付いた奇妙な人形が転がっていた。まだ足がないせいで、途中で力尽きた玩具みたいな見た目だ。
「あと足を付ければ完成なの!」
エチカは小さな工具を器用に動かし、金属片を胴体へ固定していく。
カチッ。
乾いた音と共に、ロボ太郎がぐらりと立ち上がった。
「おぉ……」
思わず声が漏れる。
しかもエチカは、どこから出したのか掌サイズのリモコンまで取り出した。
「いっけー! ロボ太郎ー!」
ピッ。
スイッチが押された瞬間、ロボ太郎はぎこちなく脚を動かし始めた。
カチャ、カチャ、と妙に必死な音を立てながら、そいつは俺の足元まで来ると、そのまま金属の爪で登り始める。
「うおっ、なんだこいつ!?」
「お友達だよ!」
「勝手に人の身体よじ登る友達があるか!」
「ロボ太郎はジーノを守るの!」
「守れてる感じ全然しねぇけど」
そう言ってる間にも、ロボ太郎は腰、背中、肩と軽快によじ登っていく。
最後には俺の首へちょこんと跨り、まるで肩車されているみたいな格好で落ち着いた。
「……こいつ、妙に軽いな」
「でしょ!」
エチカは胸を張った。
「軽量化、いっぱい頑張ったの!」
「そこ無駄に本格的なんだよな……」
苦笑した、そのときだった。
近くの瓦礫の陰から、隠れていた住人たちがそろそろと顔を覗かせ始めた。
最初に駆け寄ってきたのは、お団子頭の小柄な少女だ。
「ジーノ、その子、お友達?」
「あー……いや、その――」
言葉に詰まった瞬間、エチカが勢いよく割って入る。
「そうだよ! エチカとジーノはお友達なの!」
少女は一瞬きょとんとしたあと、ぱっと顔を明るくした。
「じゃあ、私ともお友達だね!」
「うん!」
満面の笑みで頷くエチカ。
……完全に訂正のタイミングを失った。
すると今度は、さらに奥から子どもや大人たちが次々と出てくる。
「ジーノ兄ちゃん! そのロボ、動くの!?」
「僕も欲しい!」
「まぁまぁ、可愛い人形ねぇ。どこで拾ったの?」
「拾ってねぇよ!」
気づけば周囲はちょっとした騒ぎになっていた。
ロボ太郎はなぜか得意げに俺の肩の上で直立しているし、エチカは子どもたちに囲まれて楽しそうに笑っている。
このままじゃ収拾がつかない。
「ほら、お前ら、一回移動するぞ!」
俺は半ば強引に全員を促し、近くで一番広い穴蔵へ案内した。
どうにか全員押し込めてから、大きく息を吐く。
「はぁ……疲れた……」
改めて中を見渡す。
子ども、老人、怪我人。
服装も装備もばらばらだが、どいつの顔にも共通して、この惑星で必死に生き延びてきた痕跡が刻まれていた。
その光景を見回しながら、エチカがぽつりと呟く。
「ジーノ、こんなに人いたんだね」
驚いたように目を丸くしている。
「ぜんぜん気配がしなかったから、びっくりした」
「あぁ。みんな普段は身を潜めて暮らしてるからな」
俺は壁にもたれながら続けた。
「ここにいるのが全員じゃねぇ。でも、こいつらはみんな……スラグで生きてる連中だ」
口にした瞬間、胸の奥がわずかに熱を帯びた気がした。
ここは、ただの廃棄惑星じゃない。
錆びた鉄屑の下で、それでも生きようとしてる奴らの居場所なんだ。




