表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/40

アーサー王覚醒




翌朝会ったネメアの表情は昨日より機嫌が良さそうだった。


「……顔に出過ぎだ」


「…………」


もちろん、ヘラクレスは“その理由”を察しているが、アーサー達には知られたくないという、そんな気持ちだ。


「??」


そして朝食を取って……再びこの国を訪れた時に感じた、その疑問は吹き出る。


王の間に料理を運んだりしに来るのはみな子供。15とか16とかだろう。


兵士をしていたのも、、アーサーくらいの年齢の青年たち。



「どうして、大人が居ないの?」


明確な、“大人”がクー・フーリン以外見当たらないのだ。



「………この国にいれるのは」



濁された答えは、とても残酷なものだった。



「子供のうちだけだからだ」


「アーサー。この国の大人は商品だ」


ヘラクレスの濁した言葉を遮るように、ネメアがそう言ってのける。


「この国が子供を大切に育てるのは、国益に繋がるから。それ以上でもそれ以下でもない」


淡々と言い放つネメア。


「………そういう事だったんですね」


トゥルムも理解したように頷く。


けれど、アーサーは…アーサーだけはそうは思わなかった。


「アーサー?」


そういう事??

大人になると、、売られるという事??


昨日の彼等の「この国もそうだろ!」という言葉が脳裏を揺らす。



「………」



そもそも、この国に永続的に住んで行く事が不可能なのはわかりきっていたはずだ。


追いやって、、亜人は飢えて死ねば良いと思ったのか?


それほどまで、当時の人々は亜人が憎かったとしよう。


でも今は??

今もただの誰も、それが変だと思わないのだろうか?



「やっぱり、間違ってる」



「ならば、どうする?」


そう言って、少し諦めたように笑うクー・フーリン。


「この国を見ればわかるだろう?自給自足は皆無だ。ならば、どうする?」


ほっとけば、亜人は絶滅するぞ?


その言葉はアーサーの心にずしっとのしかかった。


「呪いを…、、解いたら…」


父上に話して…?

そう自分に言い聞かせて来た……。


━━呪いを解いて正式に皇太子になったら、父に桃源郷のような国を━━



その考えは、その言葉は、一体誰に何の期待を持てというのか。



「150年」


「え?」


「送られて来た種を植え続けたぞ。もう、諦めたら良いだろうに」


ポケットから出した、クー・フーリンの手には何かの種が。


「贖罪はもう良いと、ゼウスとヘラに伝えてくれ」


突き返された種をヘラクレスは驚いたように見つめる。


「この国を出る時、どこか適当にばら蒔いてくれ」


ヘラが何かを頻繁に渡していたのは知っていたが…。


「…花一つ、咲けば喜ぶ子供もいただろうな…」


振り返る先には、アーサーと、在りし日の若き王が重なる……



━私も、もう晩年か…━



最後は、、その言葉を飲み込んだ。


「花を植えてやれるほど、もう…場所はないのだ」


彼の視線の先には…、、他国から取り寄せたという土で作られたビニールハウスが。

しかし、国民が飢えを凌ぐにほどには、全くたりない。



「…アーサー、この国は230年以上前に…一度死んだ」


「!!!」


「どれだけ想うとも、死者は甦らない。救えない国はある」


その言葉を発したクー・フーリンの気持ちを思うと、、ヘラクレスの視線は再び下を向いた。


「……救えない、、“国”」


アーサーから一直線に……


「トゥルム」

「ヘラクレス」

「ネメア」

「クー・フーリン」


その誰もが「だから、仕方ない」という無言の諦めを……。

「これが当たり前の世界」だと諦めている事に。



父に進言するだけの“国”を持たぬ子供が、そもそも彼等と同じ土俵になど立ってはいなかった。



━━子供だな━━



クー・フーリンの言葉の意味が…


今、ようやくわかった。


そして、今のままではダメだと気付いた瞬間だった。



━━ならば、どうする?━━



「……なら、」



その手は自然と腰の剣を握りしめていた


「アーサー・ペンドラゴンがその名にかけて誓う」



なら、挑戦するしかないじゃん



━歪んでると思わない自分以外へ━



「クー・フーリン、俺と約束しろ」



引き抜かれた剣が、透明度を保ったまま光る



「…その、剣を……どこで」


そのまま剣を地面に突き刺してクー・フーリンを見つめる。


「俺が、、」


その言葉の重さに、少しだけ声が出ない。


生唾をゆっくりと飲み込み、再度声をはりあげる。


「人と亜人が平和に暮らせる国を、俺は作る」


クー・フーリンは少しだけ、悲しげにアーサーを見つめた。


「アーサー王が誕生した暁には、奴隷契約はアーサー王の国とだけしろ」


「(その言葉を……、配給に並ぶ歳の子供が発っさねばならないのか……)」



すっと一度だけクー・フーリンは目線を落とした。


しかし、再び目が合うとき


その瞳には、偉大なるルンビニ王が戻っていた



「亜人に国が持てるなら、勿論最大のお得意様にしてやる」



ヘラクレスの手にあった種は、再びクー・フーリンの手の中へと戻っていた。


「…オイフェ、いるな?」


「…………ずっと居たわ」


真っ白な大鷲亜人が舞い降りる。真っ赤な瞳がアーサー達をちらりと一瞥した。


翼亜人は貴重なのに、恐らくアルビノという更に貴重な色だ。


そして、大人の亜人だった。


「未来のお得意様が、ヒーラーなしで全滅したとあっては笑い話にもならん。力を貸してやれ」


実際死にかけたようだしな、と、ヘラクレスを鼻で笑う。


「…………嫌よ」


思ってもない言葉にクー・フーリンがオイフェと呼ばれた鷲亜人を二度見する。


「…………」


「どうしてこんなムサッ苦しいのと旅しなきゃならないの」


トゥルムを見つめ、“まぁ、その子は顔は良いけどね”と呟く。


「報酬は弾む。これで文句はないな」


「ダメに決まってるでしょう?」


「…………」


「国庫が厳しいのに、そんな贅沢出来ないでしょ?」


そもそもそれ、国庫に逆戻りするだけじゃない、と。


「…………」


「貴方では話にならないわ。アーサー王」


「えっ?」


あのクー・フーリンにずけずけと物を言いまくる彼女に呆気に取られるアーサーの背を、ヘラクレスは呼ばれてるぞとトンと押す。


「あ、はい!」


ヒーラーが専門、ただし、斥候・上空戦、なんでも出来るわと自己紹介される。


「一緒に行く場合。後払いで良いわ。弾んでくれるわよね?」


「…………もちろん」


「なら行きましょう」


くるっと背後で眉間に手を当てているクー・フーリンを笑顔で見つめる。


「交渉ってこうやるのよ、クー・フーリン。子供だからって私は容赦しないわよ」



その日は、明日に備えて解散となった。


バルコニーから吹く風はまだ冷たい。


しかし、アーサーの心は、少しだけ晴れていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ