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密猟団アジト ㊤




地下通路は深く空気は重く。

そして先は暗く淀んでいて、どこか生臭く先が見えない。



「私が聞いた音はこれか…」


ガタガタの線路のようなレールと、簡易のレバーなど。


「トロッコ。なるほど、これで移動していたのか……」


微かにまだ音はしていて、恐らく先ほどの子供ちはトロッコに乗って移動中なのだろう。


「頻繁に使っている形跡がある…」


その線路の先は暗闇に吸い込まれるように延びている。


「探す手間は…省けそうですね」


「しかし、地下通路にしては随分と広……」


その言葉を遮るように、足音が地響きのようにこだまする。


まぁそう簡単に進ませてくれる気はないようだ。


暗がりからは、わらわらとオークの集団が出て来て……。



「…あれがそうか」



ヘラクレスがそう言った先には、数体のハイオーク。


通常は緑の体が、、真っ黒に染まり謎の黒い霧のようなものまで体からゆらゆらと出ていた。


「混沌化個体!」


「……しかも、かなり時間が経ってる」


あの支配型の混沌化ゴブリンよりも……更にだ。


「オークも数体、混沌化してます」



しかし、ヘラクレスはそれらをちらりと見ただけ。

彼の視線は既に…その更に奥に鎮座する、“何か”に視線を移動させていた。


「………」


暗闇の奥で、その“何か”が蠢いた。


「“アレ”もか。骨が折れるな」


真っ赤に光る18つの目が揺れる。


雑魚は任せた、と、ヘラクレスが言うと、腕を軽くぐるぐる回す。


「…戦闘は100年ぶりか……。まぁ、テスカトリポカに向けて、鈍った体を起こすには丁度よかろう」


ヘラクレスが歩き出すと、オーク軍団はさっと道をあける。


「貴様とは幾星霜(いくせいそう)ぶり、そんな気がするな」


奥に鎮座している“何か”はヘラクレスを見た瞬間、唸り声を上げて体を持ち上げた。



「……LG級のモンスターが、どうしてこんなところに!?」



黒い湯気を上げながら、9の頭が暗闇から姿を現す。


2メートルはあるヘラクレスが見上げる程の大蛇。

この地下通路が何故こんなにも広いのか、その答えはこれだった。


「ヒュドラがいるとは…。無償は割に合わんぞ」


LG級。

その個体は数百年規模の災害と言われ、守護者が討伐に行かねばならない程の脅威。



「…しかも混沌化してる、最悪だ」


「…はじめまして、のはずなんだがなぁ。どうやら、お互いに見覚えがあるようだ」


そう言ったヘラクレスへの道はいつの間にかオーク達が塞ぎ、その姿は闇の中へ。


「…我々もさっさと片付けて加勢しましょう」


「異論なし」


三人が武器を構えるのと同時、一斉にオーク達が襲いかかって来た。


「ブリザード」


トゥルムの詠唱破棄の上級魔法は、この地下通路では相性が良すぎる。


足元から天井から、いくら広くとも閉ざされた空間。

一気に全体が真っ白に凍りついた。


「……やはり、こないだのは連戦の影響で威力が落ちていたか」


魔法耐性のないオークは凍りつき、ネメアは容赦なく動きを止めたオークを切り伏せていく。


「混沌化のオーク・ハイオークは魔法特化形か」


剣を抜いたアーサーだったが、、


「…?」


「どうした?」


「反応しない……」


「危ない!アイスウォール」


カキィッと音が鳴る。

アーサー達の前には透明の氷の壁が出現し、ハイオークが振り下ろしたこん棒を弾き返した。


「…新魔法?」


「ええ、アーサーの魔法を参考にしました」


「…氷結系の魔法使いは数見てきたが、このクラスはお目にかかった事はないな」


ネメアの褒め言葉に、やや嬉しそうなトゥルム。

これ、俺が誉めても「当たり前です」とか流されるやつ。


「……で、反応しない、とは?」


「こう、今までみたいに…」


そう言ってから、アーサーは固まった。

そもそもこの剣を手にしてから、あの光の斬撃をどうやって出していたのか良くわかってないからだ。


「…………」


武器は扱い方を知っていれば使える


魔法なら呪文を唱えれば良い



━━が、この剣は?━━



「……まだ、聖の力が上手く使いこなせないのだろう」


いままで無意識にやれていたのが奇跡だったのだ、と。


「くそ、何で…」


ぶんと何度か素振りするも、ガラスのような透明の剣は無反応。


「アーサー、少し落ち着いて」


幸い、彼等がアイスウォールを破れる気配はない。


「力を使いこなす良い実験台がいると思えば、気も紛れるさ」


そう言ったネメアの視線は、既にその奥へと向いていた。


地響きが伝わる。向こうもはじまっている。


「……混沌化は、聖じゃないと」


その焦りからか…、手からじわりと汗がにじむ。



「トゥルム。この“魔法壁の硬度”は?」


再びハイオーク達がこん棒をアイスウォールに叩き付けはじめる。


「180程です」


「詠唱破棄でそこまで込めれるのか。ならしばらくは大丈夫だろう」


一体なんの話をしているのかさっぱりだが、一旦聖属性を出す事に集中する。


「ちなみに、先ほどのブリザードは……」


「あ、あれはですね…」



………だめだ、集中できない。

この二人、緊張感は一体どこに行ったんだ…。



「………まず、力を無意識から意識して使う上で大切なことがある」


「え?」


「…無意識で使っていた場面を思い出すことだ」


まぁ、ヘラクレス様の受け売りだが、と言ったネメア。

奥では再び地響きが…。そうだ、こんなところで足止めされている場合じゃない…。


「……使っていた、場面」


最初の混沌を払った時

砂漠での戦い

マーリンと対峙した時


そして、検問所


「俺は…亜人の子供を、助けたい」


その瞬間


剣の奥から淡い光が滲むように広がり


アーサーの剣は再び、、光を取り戻した




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