密猟団アジト ㊥
「……ありがとう」
心のどこかで、“今はここでこんなのと戦ってる場合じゃない”と思った。
「戦いに、優劣なんてないのにな、そうだろ?相棒」
カッと物凄い光がトゥルムの氷と相まって乱反射し、目も眩むような光が地下通路を照らす。
「さぁ、片付けよう」
黒いモヤが、、その光に当てられただけで消えていく…
その場にいるオークやハイオークは、もう通常種へと姿をかえていた
背後でカッと物凄い光
そして、ヒュドラは怯んで後退りした。
「やはり、あれは“聖なる力を卸す剣”か」
いつどこでどうやって?
しかし、ヘラクレスもそんな事を考えている場合ではない。
首を一つもいでみたが、再生したので“あの話”は本当らしい。
「さて、どうやって倒した?」
どうやって倒した?
いや、こうやって倒すのははじめてのはずだ。
「真ん中の頭は不死の頭、だったか」
頭を3つ、叩き潰したが…、真ん中の頭はすぐさま元に戻った。
しかもかなり皮膚が硬い。これも混沌化の影響か…?
「アァ、ニクラシイ、、」
「……器用に言葉を発するもんだな」
体から毒霧を出す。
少し吸ってしまったがすぐに布で口許を隠したのでなんとかなったが…。
「少し、吸ッタ、貴様ハ、モウオシマイダ」
“ヒュドラの毒霧は、一息吸えば生き物はたちまち絶命する”
「……知らないだろうが、俺は生まれてからずっと…毒と蛇の脅威と戦ってきた。これくらいは大したことない」
生まれ落ちてすぐに、毒蛇がベッドへ忍び込んだ
そして、その蛇を握り潰した
“嫉妬に狂った皇后からの刺客”だなんて言われているが、その目で見たわけではないので信じてはいない。
「…さて。使えそうな武器は棍棒と義母上から頂いた短剣くらいか。布に解毒の加護が付いていたのはありがたい」
アーサー達に格好付けた手前、苦戦して手を借りますは何だかプライドが許さない。
のだが……。そうは言っても、倒す算段が思い付かない…。
「…うーむ。頭も相当硬いな」
物理特化型だろう。全身がそうでなかっただけマシと思うしかない。
「……」
毒が効いているのか、ヘラクレスの動きが鈍る。
『ヒュドラは真ん中の蛇は猛毒で、ヘラ様と同様の毒だそうですよ』
「今そんな話を思い出したところでどうにもならんが、まぁ参考までに注意するか」
しかし、パターンはわかってきた。
真ん中の本体の攻撃のみ、大きな口を開けて襲って来る。
他の蛇に噛みつかれ、そのままぐいっと綱引きをするかのように引き寄せ、棍棒で首の根元を叩き潰す。
「(少し貰いすぎたか……)」
本体の下顎を棍棒で叩き上げて回避するも、その攻撃で棍棒が砕け散る。
毒のせいか。少し視界が揺れ、足取りが僅かに重くなる。
ふっと、どこか、、いや、遥か昔の記憶脳裏を掠めた…
『そなたの名前はヘラクレス』
後光差し込む花畑の中、美しい女性が笑っている
『意味は…、“女神の栄光”』
なんと不遜な、そんな声がした。
が、その女性は陽だまりのような笑顔を見せ、赤子を抱き上げた。
『子に罪はない。強いていうなら、浮気者に惚れた妾の敗けじゃ』
ああ、そうだ
義母上は…そういう人だった
「義母上が俺に本当に刺客を送る程憎んでいたなら、俺の名前はゼウスから取られていただろう」
そうなると、ゼクレス?ゼーウークレス?
いや、さすがにダサいな……。
「ナニヲ、ブツブツ、死ニカケメ!」
大きく開かれた口をすっと交わし、反射的に腰から短剣を引き抜いていた。
「……やれやれ、相変わらず回りくどい」
それはまるで、この体を流れている毒のようだ。
そんな事を考えながら、開かれた口へ手を突っ込み上顎を思い切り刺した。
「ギャァァァァ!!」
途端にヒュドラはのたうち回り、、黒い霧がしゅうしゅうと蒸発するように立ち上った。
「マタシテモ……」
そう恨み節を吐き捨て……
そして……、しばらくの後に大量の血を吐き絶命した。
「…申し訳ないが、お前の事など知らん」
オーク達を片付けて駆け付けたアーサー達が合流すると、サラサラと消えたヒュドラの後には短剣と光り輝く巨大な魔石が残った。
「気をつけろ。毒が塗られている」
短剣を拾おうとしたネメアに声をかける。
「……毒が?」
「危なかった。あの短剣で昨日りんごを剥いて皆に出すところだった」
「…………えっ?」
ヘラクレスの足取りが明らかに重い。呼吸も僅かに荒い。
「ヘラクレス様はここで休んでから来て下さい」
いくらヘラクレスといえど、毒をかなり貰ったあとだ。
「……すまないが、そうさせて貰うか」
解毒の加護のついた布を顔に被せて、少し休息を。
「あとは、任せて下さい」
その間にアーサー達は線路を走り出す。
「あれが、LGクラスの……モンスター」
アーサー達だけでは絶対に倒せなかっただろう。
そのヒュドラをヘラクレスは一人で倒した。
しかし、その代償は大きかった。




