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凪は胸いっぱい息を吸った。
程よい湿度と暑さが心地よい。
凪は悲しげにネックレスを見つめる。
どん!
背中を叩かれた。
「おはよう! 凪」
「美咲!? 部活は?」
「今日は朝練なし。なーんか凪に会うの久しぶりだなぁ」
「そうだね。でも美咲って変わらないね」
「それが私の取り柄だよ」
自慢げに胸を叩く。
凪はネックレスを素早くカバンにしまった。
「凪、調子はどう?」
「べつに…」
凪はカバンの持ち手をぎゅっと握った。
「ははーん。悩みごとがあるな。ほれ、白状しちゃえ」
凪は空を見上げてた。
雲がゆっくり流れていく。
「うまくいえないけど。よく知らない人に感情が揺れることってあるのかな?」
「は?」
美咲はポカンと口を開けた。
風が音をたてて吹き付ける。
「私には管轄外だったかもしれぬ…。たぶん凪、その人のこと、好きなんじゃない?」
「へ?」
「は? じゃ、じゃあさ、相手はどんな人なの?」
凪は目をつむる。
暗黒の空に浮かぶ白銀の満月。
静寂な泉にたった一人佇む青年。
「…静かな人、かな?」
美咲が腕を組んで唸った。
好き。
凪は首を横に振った。
「ううん。違う。好きとは違う」
美咲は露骨に安堵した。
「そ、そういえば、悠真君の話。私のクラスにも届いてるよ〜。マジでファンクラブできそう」
「優奈にも言ったけど、悠がモテるのは、自然現象。夏が暑くて、冬が寒いのと同じ。里奈はどう? 元気にしてる?」
「うん! バスケ部でバリバリ活躍してるよ!」
凪は下駄箱に靴をしまった。
美咲も上履きに履き替える。
「またみんなでファミレス行こう!」
「うん。またみんなで集まろうね」
美咲は軽い足取りでクラスに行った。




