one time, two shootings. (表裏一体)
「どうしましょう」
ジャンが不安そうに尋ねてくる。早く追っ手をどうにかしなければ、時期にまた目標が友軍に移り止めを刺されかねない。だとしたらオーバーハリケーン隊の初陣は味方を見殺しにした失態に終わり、折角抜擢してくれた将軍の顔に泥を塗るようなことになってしまうだろう。そんな無様な真似は出来ない。
「どうする……」
かといってうまい案が思い浮かばない。五番機と六番機とが続けざまに接近して牽制射を行うと、追ってはその初めて遭遇する攻撃に驚いて速度を落とす。それを見たアルヴィネン大尉は、すぐに策を思いつき味方に指示を出す。
〈私と二番機で敵に牽制射を行う。敵が驚いて味方から離れたすきに攻撃に入れ。我こそはというものは!〉
それに対し、何人もが声を上げたが一番に名乗りを挙げたのはヒューであった。彼は自分がやるしかないという使命を感じていた。それは自分の無力さにより同僚を失ったという後悔からかもしれない。
〈よしわかった。メラーラ准尉、必ず仕留めろ。メラーラが失敗したときはゼイレブ軍曹がやれ〉
「ハイ、ありがとうございます!」
重要な役目に抜擢され操縦桿を握りしめる力は強くなり、目を今まで以上にしっかりと凝らし意識をトリガーに添えた親指に集中させる。
〈しくじんなよ〉
ゼイレブが笑いを含んだ声で茶化す。
「お前は準備する必要はないぜ。俺が仕留めるからな」
牽制を行う二機が動いた。それに合わせて彼も機を翻し最適な角度を考え機体を突入させる。チャンスは短い、その間に二人の敵を仕留めなければいけない、僅かに一斉射で。敵が一人だけ離れるのでは意味がない。牽制によって二人ともに離れてもらわなければならないのだ。
第一小隊の一番機と二番機が抜群のコンビネーションでいい具合にタイミングをずらして敵を引き離す。既にダイブしていた九番機のヒューは祈った。後部座席のジャンも黙って攻撃の成功を祈りつつ手はしっかりと機銃のグリップを握りしめていた。敵とその馬は先ほどよりも長い機銃掃射に調子を狂わし味方から離れていく、二人ともだ。
味方の注意が、飛び込んでいくヒューの機体に注がれる。地上がかなり近い。木がまだまばらで背丈も低いことが幸運だった。鬱蒼と森が茂っていれば、集中して低空飛行することが出来なかったであろう。
照準を合わせ、トリガーを引いた。機首の四十五ミリ機関砲二門と、翼の二十八ミリ機関砲二門が地上に大きな花を大量に咲かせた。土が大きくえぐられ岩は砕け散り草が宙を舞った。生身に当たれば一瞬にして粉微塵に変えてしまう威力を持つ機関砲は、敵を騎乗している馬ごと貫いた。馬は三つに千切れ、人間は下半身の一部と左腕だけを残して地面に転がる。一人を仕留めた。が、何ともう一人を仕留めそこなったのだ。これは単純にヒューが気後れしてしまい、早くに機首を上げてしまったためだ。その瞬間彼はミスを犯したことに気が付いたがもう遅い。今更機首を下げたところで下がるころにはもう真上を飛び越えてしまっているし、この高度でそのような動きをするのは大変危険である。ゼイレブに手柄を半分とられるのは癪だったが、自分が悪いのだ。本当はそう考える暇もなかったのだが、彼は後にそう思い込んでいる。
そんな彼の失敗を取り返したのが、後部座席の機銃手ジャンであった。敵の一人が撃破されずに残って後部座席から遠のいていくのを見た瞬間に彼の腕は動いた。二十ミリ二連装機関銃が瞬く間に取りこぼしを撃ったのだ。後部座席から聞こえてきた銃声に何が起きたのか理解できなかったヒューであったが、通信機から聞こえてきた歓声に、敵が両者ともやられたことを知り、同時に仕留め損ねた自分の尻拭いを、幼いジャンが類稀なる技で片付けてくれていたことを知った。
彼は高度を上げ編隊を組みながら深く息を吐いた。
「すまない、ジャン」
「い、いえ。当然のことをしたまでです」
そう言って笑う彼の顔が見えないのが残念であったが、降りてから十分に誉めてやろうと思ったヒューであった。
十二機のオーバーハリケーンは、救った車両の真上を編隊を組んだまま飛び、車内から手を振る味方に翼をバンクさせて応えた。




