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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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Sejihe(セジエ)

 野宿の夜が明けた。まだ目覚めた時にライマとエマーヘルがいるのに慣れず、目が覚めた瞬間二人が視界に入ると少したじろいでしまう。

 三人とも目覚め、汲んできたばかりの水で顔を洗う。エリアも洗おうと桶を覗き込むと何やら葉が一枚浮いていることに気づいた。

「ああ、トミネンコの葉だ。それを入れておくとべたつきにくくなるんだ」

 と、エマーヘルが小さな袋から同じ葉を何枚か掴んで見せてくれた。ほのかに柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐり、朝から気持ちの良い気分となった。

「もうすぐ温まりますよ」

 一番に起きていたライマは、既に火を起こして昨晩の残りのスープをかき混ぜていた。


「まず村に着いたら俺が先に話を付けてくる。エリアはライマと一緒に村の外で見つからないように隠れていろ」

 カップを片手に険しい表情でエマーヘルが忠告する。

「何故?」

「お前は闇竜族、迂闊に村人たちの目に触れればどうなるか知れたものではない」

 そうだった、自分は忌むべき種族である。もしうっかり村に入れば瞬く間に村人が殺到し叩き殺されても不思議ではない。

 すみません、とライマが謝る。

「私たちは予知のことを知っていましたし、闇竜族と会う覚悟がありました。そもそも闇竜族と会うことを目的として旅をしていましたから貴女と会っても動揺もしませんでした。ですが未だ多くのドラクラットは予知のことも知りませんし、闇竜族を目にする覚悟すらありません。ですから可能な限り貴女を他のドラクラット達の目に触れさせたくはないのです」

 そう申し訳なさげに伝える彼女を見て少しいたずら心が湧いたのか、エリアはここで少し皮肉を口にする。

「そうだよね、私がうっかりここで殺されでもしたら私の代わりの闇竜族を探さなきゃいけないもんね」

 その言葉に二人は目を見張り、唇を噛み締め気まずい表情を浮かべる。怒られるかと思っていたが、予想外の反応をされたために、エリアは少しショックを受け目を伏せた。

(そうか、やっぱりなんだかんだ私はドラクラットの復興の生贄みたいなものか……)

 どうせ、故郷も家族も失った身だ。今更

「なんてね、冗談だよハハッ」

 そう笑って見せる。しかし二人の表情はあまり変わらず暗いままである。

「それで、私は村で何をするの?」

 話題を変える。

「……ああ、そうだな。とりあえず村長と話をつけて他の者の目に触れない部屋を貸してもらう。そのあと数日滞在してお前は引き続き我々の文化に触れてもらう。そして我々は予知についての話を長達に伝え理解してもらう」

 部屋に閉じ込められてどうやって学ぶのかと、まるで犯罪者か奴隷のような扱いに苛立ちを覚えたが抑える。そこにライマが一つ付け加える。

「あと同時に貴女の服を仕立てましょう。我々の服はセジエといいます。こういうふうに」

 と、彼女は着ている服の裾を摘まんでひらつかせる。そういえばドラクラットには独自の布の技術があってそれならば変身しても衣服は破れずにそれどころかともに変化し鎧となる、とエマーヘルが言っていた気がする。今自分が来ているのはどこかの軍人から奪った少し大きい軍服である。これでも十分に丈夫だが、変身には耐えられまい。それどころかその丈夫さが仇となって体を傷つけるやもしれぬ。

「スキエントがいいですか?パルパスがいいですか?パルパスでも色々型がありますし。緩めが?」

 目を輝かせてやけに早口になってまくし立てるように話すライマを抑えるように宥める。

「スキエント?パルパス?何それ」

「あ、ごめんなさい。スキエントというのはこのように足の分かれていない服でパルパスがエマーヘルが着ているもののような両足で分かれているものです」

「ああ、スカートとパンツね」

 なるほど、スキエントとスカート、パルパスとパンツ。両者は互いにどことなく似通っている節がある。もしかすると人間の言葉から竜に伝わったのかもしれない。そう言った言葉が他にもあるのかもしれないと思うと少し興味深い。

「えーっとじゃあ……パルパスで。あんまりぶかぶかしてないほうがいいけどぴっちりするのも気持ち悪いかなあ」

「なるほど……それだけでも十分にありがたいですね。後は寸法さえ調べればすぐに取り掛かれますし。細かな仕様は向こうに着いてからでも構いませんよ」

 なんだかうきうきしている彼女を見ると、ドラクラットと言えども人間のように裁縫が好きなものもいるのだなと異なる種族の共通点を見た。マリアは裁縫が好きだったな、と去年家を出た姉を思い出す。家では皆血はつながっていなくとも、肌の色も性別も関係なく兄弟であった。だから自分には兄もいれば弟だっていた。もっといえば甥っ子だっていたのだ。そう、多分甥っ子たちも皆もう、いない。

「じゃあ、片付けたら行きましょうか」

 いつの間にか空になっていた鍋に食器を入れると、ライマは川へと向かう。

「あ、私も手伝う!」

 急いでライマの後を追うエリア。

 キニエイテンテスの村はもうすぐである。村で彼女を待ち受ける運命とは、一体……



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