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神の賽子  作者: 小工枝 攻臣
最終決戦
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23/24

運命操作

豊崎優希が屋上への扉を閉めた。外の光が閉ざされ、校舎側の屋上入り口は暗くなっていた。

いつか裏切る手駒だ。やはり煌との接触で思考が変わったか。・・・・・・まあいい。

しかし、長期戦はこちらに有利だ。もっとも、近くで観察しながらの長期戦は、だが。

どうやら、私たちを倒す相談をしているらしい。この距離なら、解析が出来る。

ここは慎重に様子を見よう。

神山煌を遠くに逃がすことだけはさけなくてはいけない。

今は情報が欲しい。

神山煌。

何者かは知らないが、私の理論が追いついていない。

予想外の行動をとる者は、始末しなければならない。



私は『神』だ。

私の能力は『粒子の位置と運動を観測できる』能力。観測範囲は手で触れたものだ。しかし、経験則により大体は解析できるので、人間の五感からも予想が可能だ。

全ての粒子の位置と運動が分かれば、あとは演算によって未来を知ることが出来る。

完全に、だ。ただ、神山煌。彼の行動は予測を外してしまう。そういう不確定な要素など、この世界には必要ない。神はサイコロなどふらない。

排除しなければ。


私がこの能力――――――『未来予知』を使うとき、もうすでに勝負というものは終わっている。負ける未来が見えたのなら、未来を変えればいいのだからな。


藤原朧。

彼の能力は『運命操作』。

自分の思う未来を決めると、その未来になるように世界が動き出す。彼は世界に愛されている。そして、彼の敵は世界の敵だ。世界が彼の敵を排除する。

彼の能力によって、演算がしやすくなるため、私の未来予知は完全となる。絶対となる。

私のような存在はもはや人ではない。


『神』である。


「藤原朧と私に勝てるものだといない。」

隣の不安そうな藤原朧に話しかける。こいつが勝手に世界を変えてしまうと、演算を少し修正しなくてはならない。


ドアが開く。


瞬間、藤原朧が屋上へと勢いよく吸い込まれた。

「藤原朧を狙ったのか? こいつの防衛反応での運命操作の誤作動を? 残念だが、運命は『お前らが死に藤原朧が生きる』未来! すでに組み込んでいる!」

「ああ、そう予知されるのは予想済みだ。」

豊崎優希がドアの近くで佇んでいる。その横には冨上閑子。

「私が出来るのは、不確定要素にかけることだけだよ、『ラプラスの悪魔』。」

自身に満ちた声でそう言った。これは、予知にはない。

「『ラプラスの悪魔』君は知っているはずだ。『運命操作』にも弱点がある。」

この台詞も私は知らない。

そして演算をして気づく。

マクスウェルの悪魔、こいつは死ぬ。『神』に殺されて死ぬ。

そして神山煌。こいつも死ぬ。そういう未来だ。

だが、なぜだ?

そいつは今じゃない・・・・・・だと?







「えっと、君は神山煌君だね。悪いけど、ここで死んでもらうよ。」

淡々と言葉を並べる。

「確認だ、藤原朧。俺を殺して本当にいいんだな?」

「どういう命乞いだい?」

笑いだしそうになりながら問いかける。

「命乞いなんかじゃないさ。・・・・・・ただの確認だ。お前は『ラプラスの悪魔』の予知できない不確定要素を殺すことにためらいはないんだな?」

「なおさら。不確定要素は排除することに越したことはないよ。」

「『排除』とは『殺す』ことか?」

「なに・・・・・・?」

思わず顔をしかめる。

「『殺す』ことで、俺を『排除』したって言えるのか? 今の状況を考えても?」

「・・・・・・。」

「俺という不確定要素によって、俺にかかわったものは全て予知できなくなる。それは俺が死んだとしても変わらないものだとは思わないか?」

「だからなんだ? どっちにしろ、動かない方がましだ!」

藤原朧が手を前に突き出し、突っ込む。

煌にあと2歩というところで、目の前に急に拳が現れ、顔面を殴られた。

「お前は俺を殺せない。――――――そういう未来だ。」

神山煌がそう言い放った。


なぜ?


もう一度立ち上がり、神山煌に拳を突きつける。

しかし、またしても返り討ちにあう。


なぜ?


三度繰り返す。

しかし、結果は変わらない。



「何度やっても結果が変わらなくちゃ、焦るよなあ。」

まるで自分が経験してきたことのように呟いた。

「くっ、なぜ? まさか矛盾が起きているのか!?」

『運命操作』で未来の矛盾することを設定してしまうと、その未来にはならない。故に、二つ以上の未来は注意しなければならない。

今回は『神山煌とマクスウェルの悪魔が死に、藤原朧とラプラスの悪魔が生きる』未来。

一見、矛盾しているように思えない未来だが・・・・・・。

変更をした方がいいのか?!

「未来を変更する・・・・・・!! 『神山煌が死ぬ未来』だ。・・・・・・ははは、あはっははっはは! これでお前は死ぬ! そういう未来に行けばいいだけの話だ。あぁ神様お願いしますだなんて、僕には必要ない!!」


しかし、振りかざした拳は神山煌には届かない。


「なぜ・・・・・・! なぜなんだ!!」

「どうやら、俺は・・・・・・運命に勝つ――――――運命を変えることが出来たらしいな。」

「運命を変える・・・・・・だと? 運命なんて自分で決めるものだ!! たとえ、他人を犠牲にしたとしてもなあ!!!!!」

ふたたび、煌に立ち向かう。

「未来は、僕のためにある!!」

最後の猛進も煌に届くことはなかった。

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