気まぐれ
救急車の音が遠くで鳴っている。
中校舎の屋上。
今日は生徒会の俺の仕事はない。いつもはここで『風』を操り、いろいろな声を聴いているのだが、今日はいつもと違う。
「ちっ、騒がしい。」
『風』の能力者の癖になんで空気を読まないのと真緒ちゃんに言われたことがある俺だが、今日はそんな俺でも胸騒ぎがする。嫌な空気だ。
救急車の音が高くて鬱陶しい。
それと、
「いつまでそこにいるつもりだ?」
屋上の扉に隠れているだろう人物に声をかける。
「俺にどいてほしいってか?」
先生ならすぐに注意するはず。いるのは生徒だ。俺にラブレターを届けに来た女の子ならいいんだが。
見知らぬ男子生徒がゆっくりと歩いてくる。
「はーい、どうも。私は能力者でーす。ま、何かは言わないけど。とりあえず、君には死んでもらおう。なんてね嘘嘘、大丈夫。せっかく救急車ここに来るみたいだからさ。・・・・・・まあどっちでもいいか。」
いきなりテンション高めに声を出す。
じっと隠れていた奴の台詞とは思えない。
能力を知っている。ならば、相手が能力者であろうがなかろうが、能力を使っても問題はない。
「うるせえやつだな。そこで止まれ。」
風を操り風圧を与える。
ぴょんと、軽快に横に飛びそれをかわす。
風を読まれたのか?
俺の能力を知っている?
『風』は読まれやすい。
音が、周りの草木が、風のベクトルを教えてくれるものだ。
台風の時に傘をさして登下校するときに誰でも体験することだ。集中すれば、風を読むことが出来る。
『風』の能力というが、俺にとってこいつは空気の押し合いだと想像している。
さっきの風圧は相手から離れた空気を押して作ったものだ。
だから読まれた可能性がある。
ならば、威力が落ちてしまうが、相手のすぐ前ので風を作る。
またしてもぴょんと横に飛ぶ。やつは風を食らっていない。
風が読まれているのか?
思考が読まれているのか?
単純な攻撃ではだめだ。
後ろにさがり、臨戦態勢をとる。
「マジでいくぜ!!」
周囲からの空気を集める。
奴の歩く前に空気を集める。
空気が吸い込まれていく。
一筋の線が、曲がりつつもうねうねする線が空中に出現する。
その線が天にまで伸びていく。
空にまで続く竜巻。
発生させた数本の竜巻は、俺の制御を離れ、自動で動き出す。
竜巻は天気だ。こいつは誰にも分からない。
また、制御を離れたそいつは俺の単純思考も関与していない。
そいつはまさに、
「神だけが知る世界―――混沌だ。」
天気予報のお姉さんはどうして外してしまうのか?
明日の天気が晴れか雨か。百パーセント当てることができる精密な機械は、未だに作られていないらしい。なぜなら――――――
竜巻がだんだん収まる。
歪んだ向こう側が見え始めた。
――――――奴は立っていた。何事もなかったかのように。
「それは、全ての粒子を観測することが不可能だから。」
言い終わると、こっちに近づいてくるとともに携帯を耳にあてる。
「混沌? 違うね。世界は美しい物理法則で創られている。」
俺は近づいてくる奴にどうすることもなく、固まっていた。
何が起こって・・・・・・。何の能力で・・・・・・。
「もしもし、あと六秒ね。」




