桜
コンコンと戸をノックの音がする。
「どうぞ。」
生徒会室にノックをして戸を引いたのは、豊崎優希。小野と煌の幼馴染だ。
「これはまた珍しいお客さんだね。」
にっこりと彼女が微笑む。
「どうぞ入って。」
椅子から立ち上がり、彼女に席を指す。
「・・・・・・ここで大丈夫。」
彼女の何か分からない返答に戸惑っていると、ガシャンという音が聞こえた。
ガラスが割れたのか……?
中校舎の方を見てみる。
ゾク。
背後に寒気を感じた。
振り向くと、とがった刃が目の前まで迫っていた。
とっさに『炎』の能力で刃を溶かす。
刃が一瞬で消えた。
入り口を見る。
豊崎優希がそこで微笑えんでいた。
彼女が刃を?
「寺島会長。どうして日本人は桜が好きなのか考えたことある?」
彼女が笑う。
その目はとても落ち着いている。
人に刃を向けておいて、彼女は平常だった・・・・・・と思う。
「理由は簡単さ。みんな好きだからだ。もし、梅の花が好きな人が多数いたら、日本人は梅の花が好きだというぞ。」
彼女の落ち着きぶりに冷や汗をかく。
やれやれ、どうしてあいつの幼馴染は厄介な奴らなんだ。
「桜はすぐに散るから美しい。その一瞬の輝きが、限定が、日本人は好きなの。」
キラキラと彼女の周りが煌めいた。
「先輩には言っておきます。私は決して永遠を求めてはいない。でも、一瞬の輝きのためなら――――――」
ピロピロピロと彼女の携帯電話が鳴り出した。
「努力は惜しまない、よ。」
彼女の前に無数の刃が出来るや否や、俺に向けて投げる。
先ほどと同じように炎で焼き払う。
「お前も能力者か。」
下をちらっと見ると、そこには透明の液体が。
水か。
だとしたら、豊崎優希の能力は――――――
キン。
音が聞こえたわけでもないが、そんな音が聞こえる気がする。
生徒会室が一瞬にして銀色の世界になった。
氷。
俺自身の体にも氷がまとわりついた。
「××しい世界。」
彼女が呟く。
ジュワッ。
まとわりついた氷を一瞬で溶かす。
「氷もすぐにとけちゃうから、美しいのか?」
嫌味のために口を開く。
「・・・・・・そうだね。」
空中に氷の結晶を作り、眺めて彼女はうなずいた。
「相手が俺だったのが運が悪かったな。氷じゃ炎には勝てないさ。」
悪役のようなセリフを吐く。
「・・・・・・。」
彼女が首をひねる。
「氷は何もしなくても解けてしまう。コーヒーに入れたミルクは拡散する。・・・・・・この宇宙には一つの方向がある。」
氷対策に生徒会室の室温を上昇させる。
「力が等しくても、この宇宙の法則は、君の敵。だから君は勝て――――――」
会長が「え」の口をしたまま動かない。
十五分待つまでもない。十秒動かなけりゃ、もう十分だ。
「形あるものは全て壊れる。が、その宇宙の方向に抗う。それが生きるってこと――――――」
ニッと笑う。
「なんじゃないかなー?」




