土
あいつか。
授業が終わるとともに、一学年下の25HR前の廊下にやってきて、今出てきた生徒に目をつける。どうやら間に合ったらしい。
「藤原朧。」
近くに歩み寄り、声をかける。
「・・・・・・はい。」
小さく低い声で藤原が答える。藤原の目を見る。そこには声とは違い、堂々とした意志を感じた。
「ちょっといいか、話したいことがあるんだ。」
藤原が何かを言いかける。
「あの、あなたは・・・・・・?」
しかし、すぐに言葉を紡ぐ。
「俺は三年の三ケ田一正。」
じろっと顔を見られる。
「・・・・・・。」
バリン。
隣で大きな音が耳を突き刺す。
ガラスが散らばる音だ。
スポーツ用バックにいつも入れている土を使って、ガラスが周りの生徒を傷つけないように守るとともに、自分に向かってきた物質をガードする。
野球ボールがたまたま飛んできたのか。
「おっと、びっくりしました。」
本当に驚いているのか分からない声で藤原が言う。
「先輩、今日はちょっと運が悪いようですね。気をつけませんと。」
「お前は最近、運が良いようだがな……。」
「大丈夫ですか!?」
25HRの教室から小野が出てこようとしているのが見えた。
「おっと、こうしちゃいられない」
ダッと藤原が走り出す。
「待て!」
藤原を追う。『土』の能力を使えばすぐに捕まえられるだろう。
しかし、あいつが能力者かどうかはまだわかっていない。一般人に手を出すわけにはいかない。また、藤原よりも速いので距離を詰めることができていた。階段を降りたところで追いつくだろう。
藤原が階段を降りるために廊下を曲がった。
それを追って曲がる。
目の前に人が現れる。
ぶつかって倒れる。その人に覆いかぶさるように倒れてしまったが、倒れる際に能力を使って土のクッションを敷くことは出来た。
「すまない、大丈夫か?」
倒れたのは女の子だった。すぐに女の子に怪我がないか確認する。
赤い。血が見えた。
「あ・・・・・・ごめんな……」
女の子が今にも泣きそうになって、恐怖した顔をしていた。
女の子の視線は俺の腹を見ている。
赤い。
腹が赤い。
女の子が持っていたハサミが俺の腹に突き刺さっている。
「う・・・・・・」
痛みを自覚する。
「大変だ、早く救急車を呼びませんと。」
いつの間にかそばにいた藤原の声が聞こえる。目を向けると、携帯電話を操作している。
「なんて不幸な事故なのでしょう・・・・・・ね。」
「三ケ田先輩!」
「あなた、何をしたの?」
救急車が先輩を運んで行ったあと、藤原に問い詰める。隣には煌もいた。
「なにって……、廊下を走ったら先輩が追いかけてきて、先輩が事故に遭った。・・・・・・僕は廊下を走ったぐらい。」
藤原朧。前は気弱い男子だったのに、今は態度がおどおどしなくなっていた。
「神山先輩。」
冨上閑子がやってきて煌に声をかける。そして煌に耳打ちをすると、
「悪い小野、そっちは任せる。」
と言ってその場を去った。




