新しいせいかつです③
さて、夕御飯を食べた後は体をお湯で拭き(この国にはお風呂の習慣が無いようです)、寝るだけです。
が、それは人間達だけの話です。
僕はソフィちゃんを寝かしつけた後そっと孤児院を出て、静まり返った大通りを抜け、この国の南側の防壁にある場所を目指して抜き足差し足忍び足…。まぁ、こんなに警戒しなくても誰にもバレないし、バレても問題無いんですけどねぇ…。
ガヤガヤガヤガヤ
「こんばんは~。」
「おっ!ニコさん来やしたね♪」
そうして辿り着いた場所。
ここはリリーフィアさんの従魔さん達の待機場所。街外れの長屋の中です。リリーフィアさんは街に長屋を一軒買っていて、そこを従魔さん達の……従魔の虫さん達の家にしてます。周りは誰も住んでない家ばかり(というより誰も住んでいません)なので、いくら騒いでも大丈夫です。それを利用(?)し、長屋の一部を街中の虫達の集会場にさせてもらってます。
「はいこれ。今日の分です。」
「おお!いつもすみませんね。そして今日は凄い量だ!!」
僕はここを取り仕切るゴディさん(僕より小さな百足さんです)にポッケから出した今日の配達物(具体的に云うと黒い油っこい虫さんや鼠さん。それと今日倒した蟷螂さんなどの肉片。)をお渡しします。ここは先程も言った通り、街中の虫さん達が集会場に使う場所です。けど、別に集会とかじゃなくても皆さん集まるんですよね~。ここに集まって、飲めや食えやの大宴会をするなんてザラなんですよね~。この間もしました。だから、集会場っていうより酒場って言った方がいいのかもしれません。
で、街中のでも狩りが上手い(らしい)僕はここの食糧調達&ウェイターとして働かせていただいてます。リリーフィアさんの名前をお借りしているので、これくらいの恩返しはさせていただきます。
「おっ!ニコさん。聞きましたよ!今日あのデスサイズ倒したんですって?」
「「にこさんにこさん~。ほんとほんと~!?」」
「かーー!やっぱニコさんはスゲェなぁ!」
ワイワイガヤガヤ。
ゴディさんに食糧をお渡しした後、ウェイターとして回っていたら色んな方に声をかけられました。……あれぇ?倒したの今日のお昼頃だったのですけど、もう広まったんですか?まぁ、事実ですけど…。
「「「だってオレラは虫だぜ!!」」」
皆さんお耳が速いですね。…って言うとそう返ってきました。虫だぜ!!っていうのは虫の定番ジョークのよようなもので、どこにでも居てどんな情報だって手に入る奴等…って意味らしいです。日本語だと、壁に耳あり障子に目あり。と同じ意味らしいです。
「けど、流石はニコさんだよな~。まさかデスサイズまで倒しちまうとは…。」
「ほんとよね~。ニコさんってば、ほんと凄いわぁ~。」
「にこしゃんにこしゃん!!すごーっす!」
芋虫さんに団子虫さん。他にも羽虫さんやら熊虫さんなど…本当に多種多様な方々が僕に声をかけてきます。彼等はこの街の先住虫さん達で、リリーフィアさんの従魔ではない方々です。どうやらこの方達の中では僕は凄い虫さんになっているみたいで、物凄いよいしょをされます。…僕は全然凄くないのに…。
「ニコ!随分チョーシに乗ってるみてーだな!!」
そんな中、僕に食いかかるような声で呼ぶ声が…。僕は振り向き、声の主を見ます。
「あ、タタ君こんばんはです。」
「こんばんは。………じゃねぇよ!!」
振り向いた先にいたのは、スパイダーの進化系の一種で僕より少し大きい“タランスピネ”と言うモンスターのタタタラン君(略してタタ君です)でした。今年の夏頃にここに来た新入りの子です。
「ふん!聞いたぜ、アンタ、デスサイズ倒したんだってな。どうせアンタの事だから後ろから糸吐いて伽藍締めにしてヤッたんだろ?アハハハ、いい御身分だよな?そんなひきょーなやり方でこんなにチヤホヤされんだからな!けどいいか?俺は違うぜ。アンタのそんな卑怯なやり方、絶対に俺は認めない!!アンタみたいな卑怯な奴が、正々堂々戦えない奴が、フラフラ勝手にしてる奴が、マスターの右腕だなんて…マスターの御気に入りだなんて…認めないからな!!今に見とけ!!俺はアンタを越える。越えてやるからな!!俺が一番なんだってマスターに……リリーフィア様に分からせてやるんだからな!!」
そう言い残し…タタ君は去って行きました。
「………ゴディさん?まだ……あの子勘違いしてますよ?」
「すまん。アイツ聞く耳持たなくて……。」
僕は近くにいたゴディさんに話かけます。
先程の会話でわかる通り、タタ君はリリーフィアさんの従魔さんです。とても真っ直ぐな性格のいい子なのですが、どうやら彼は僕の戦い方が気に入らないらしく、よくこうして突っ掛かってくるのです。
で、勘違いというのが…
「ゴディさん…。どうしたら、僕は従魔じゃないって…分かってくれると思います?」
「すまん…。わからねぇ…。」
そう。他の虫には内緒にしているのですが、僕はリリーフィアさんの従魔じゃないんです。本当にどうゆう訳か…何回試してみても契約出来ない僕は、リリーフィアさんの名前を借りているだけのナンチャッテ従魔です。確かにリリーフィアさんとはギブ&テイクな関係ですけど、だからって従魔じゃないんです。他の従魔さん達は知っている事実なのですけど…。何回も説明してるのに、どうもあの子は分かってくれません…。説明する度に「嘘は見苦しい!!」だの「一匹狼気取りか?馬鹿らしい!」って…取り合ってくれません…。
「ニコさん…もう貴方からガツンッて言ってみたらどうですか?」
ゴディさんが労いでしょうか…僕にゴキ○リモドキの脚を1本渡してきます。
「ん~…それはそれで嫌なんですよね~…。」
僕は渡された脚をムシャムシャムシャ。
なんで嫌かって言うと、僕のガツンッは洒落にならないのです。前に1度凄い悪さをする子がいまして、ついキレてしまった事がありました。…怒ろうとしたその瞬間、僕の≪威圧≫が無意識に発動してしまいまして…気がついた時にはその子だけじゃなく、周りにいる沢山の方がガタガタ震えて……まるで前世の時みたいにバケモノを見る目で僕を見ていました…。以来その悪戯っ子は大人しくなったのですが、僕を見る度に悲鳴を挙げる子に育ってしまいました…。制御出来なかった僕が悪いのですが、それでもあの目はイヤです。大っ嫌いな目なんです。
なので、その日から出来るだけ怒らないようにしているのです。また制御出来なくて、あの子の未来を潰すような事になってしまったらと思うと…怖くて出来ません。
「それに、目標が有るって良いことだと思うんですよ。」
あの子は(勘違いとはいえ)僕を越えると云う目標が有ります。目標が有ると云うことは、それに向かって努力出来るってことです。僕も前世では一ノ瀬さんや月見里さんを目標にしてお裁縫や手品を練習したりしました。届かない目標でしたけど、それでも目に見えて分かる目標が有るというのは良いことです。あれやこれやを学べる良い相手なのです。……え?後藤さん?あの人はライバルです。最下位を争うライバルなのです。
「……ニコさんは器量が広いねぇ~。」
「そうですか?」
ゴディさんが何故かため息と共に溢します。なぜでしょうか?それに僕は我が儘だし、かなり心が狭い蜘蛛だと思いますけど…。
「あ、いたいた~!ニコさ~ん!こっち来て~~!!」
「あ、はーーい!」
呼ばれたのでそちらに向かいます。あ~忙しい忙しい。
だいぶ遅くなりスミマセンでした。
書けたらもう1話投稿します。期待しないで待ってもらえると嬉しいです。
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