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新しいせいかつです。②

 3年前のあの日、僕はリリーフィアさんと契約することに決めました。

 理由は簡単。ソフィちゃんの成長を見守る為です。野良の魔獣だと、街から追い出されてしまうからです。それに、言葉とかも僕教えられないですしね…。

 リリーフィアさん曰く、契約は一生ではなく、解約出来るモノだそうなので契約することを決めました。


 契約の手順。


①まず契約主となる人が契約するために必要な呪文を唱えます。

②唱え終えたら契約主さんは体の何処でもいいので傷を作り、血を契約させる魔獣(または魔物)に飲ませます。

③最後に、血を飲ませた魔獣に新しい名前を付けます。魔獣が了承し、名前を復唱したら契約成立なんだそうです。


で、僕達もやってみたのですが…。


『――――――――――――れ、このモノと契約することを望む…。と、それじゃコレ飲んで。』

『はーーい。です。』


 詠唱を終えたリリーフィアさんが手の甲に傷を作り、そこから血が出てきます。僕は血を飲もうと思い、口を傷口に近づけると…


バチィッ

『『Boha!?/えっ?』』


 口を近づけた瞬間、バチッと音が鳴り、弾かれました…。その後何回か試したのですが、何回やってもバチッって音がして弾かれ、結局契約は出来ませんでした…。

 リリーフィアさん曰く、契約が出来ないのはもしかしたら僕の前のご主人様(存在しませんけど)のせいかもしれないとのこと。


 曰く、契約が出来ないのは次の次項に当てはまる場合だそうです。


①既に他の人と契約している場合。

 これは…特に説明しなくても大丈夫ですね。そのままの意味です。契約とは常に1つだけという決まりがあり、1人以上の人と契約は出来ない。ってルールだそうです。二君に仕えずってやつですね。


②誰か(若しくはナニか)の契約主である場合。

 これも大体①と同じだそうです。しいて違いを言うなら、①は契約する相手が、既に誰かの使い魔である場合。②は契約する相手が、誰かを使い魔にしている場合だそうです。

 滅多にない場合だそうです。なんでも昔、手下がいっぱいいる魔王を使い魔にしようとした勇者様によって初めて発見されたケースだとか…。取り敢えず、勇者として魔王を使い魔にするとか…アリなんですか?


『まさか…契約を解いてないなんて…。なんて奴なの!アンタの前の主人のジークフリートってガキンチョは!!』


 プンプンと、顔文字にすると本当にこんな感じ(`Δ´)でリリーフィアさんは怒っていました。なんでも契約を解約せず契約獣を放す行為は使役者(テイマー)のルール違反。軽くて罰金、重くて打ち首御免!!っ的なモノだそうです。


 …え?“ジークフリート”って誰?突然新キャラ出すな。…ですか?

 申し遅れました。Siegfriedジークフリートってのは僕のドイツ国籍の名前です。平和島(ヘイワジマ) 笑音(ミオン)は日本国籍の名前です。僕は僕のモノなので使わせていただきました。

 取り敢えず作った設定は以下の通りです。


―――――――


 とある南の小さな農村に住む虫使いの下で産まれた僕。暫く育てられたあと、見習い虫使いの少年ジークフリート君の下に贈られる。

 少年は強くて格好いい魔物と契約したかったが、師である虫使いさんはまずは手始めに…と言って渡したのが僕だった。少年は日々僕を強い魔物にしようと毎日戦闘訓練を強いた。

 珍しく魔法が使えるスパイダーで始めの内は少年期待するが、僕は戦闘が苦手。嫌々と戦いを拒否る僕に少年は早々に愛想を尽かし、似ている別のスパイダーを師に内緒に契約してそっちを育て始める。僕は少年の妹、産まれたばかりの赤ちゃんのお世話に回される。

 然して暫く、すっかり赤ちゃんのお世話に慣れた頃。師に僕を育ててない事がバレ、少年は大目玉をくらう。


『要は一匹育てりゃいいんだろ!!』


っと言って、八つ当たりに僕を蹴飛ばし、そのまま風に乗って空を飛ぶ僕。

 幾つか夜を越して漸く着いた土地がグレートクリスの森。


 そうして、暫く散策して見つけたのがソフィちゃんだった。


――――――――――


……っていう設定です。魔法が使える理由も知能が高い理由も子守りが得意な理由も全部説明のつく(我ながら)咄嗟にしてはよく出来た設定だと思います!!


「帰ってきました~~。」


 門をくぐってソフィちゃんが待つナトゥリムさん宅に戻ってきます。カァ~カァ~と烏が啼くので帰りますよ~。


『お帰りなさい。どうだった?』


 窓から入ると、リリーフィアさんが一人だけ…。あれ?うちの(ソフィちゃん)は?


『ソフィちゃん?ソフィちゃんだったら、リア(アリアリアさんの略称です)と一緒に(みせ)よ。』


 ポッケから蟷螂さんを倒した証である両手の鎌を渡しながらリリーフィアさんに聞きました。…あ、このポッケは偽前御主人(ジークフリート)君の家にの物置の奥に転がっていた物だって誤魔化(いっとき)しときましたので、出所を聞かれても大丈夫なようにしています。


 リリーフィアさんの御使いを終えたので、帰る為にソフィちゃんを迎えに行きます。


「ソフィちゃ~~~ん、帰る……リアちゃん?何しているんですか?」


 店に行くと、リリーフィアさんの旦那様のナトゥリムさんと小間使いのパパロ君(奴隷から卒業しました。)、そして従業員の逞しい筋肉ムッキンムッキンのお兄さんやおじさん達と……休憩中のこれまたすんごく筋肉ムッチンムッチン!!な汗だくなお兄さんに体を擦り付けるリアちゃんとその背中に乗る愛娘(ソフィちゃん)………。うん。取り敢えず、リアちゃんちょっとそこのお兄さんから離れてね?ソフィちゃんに汗が飛んじゃいますから。


「ハァ…ハァ…ハァ………はあ~~~♡筋肉サイコー…ッス♡」


 ……あ、これダメなヤツです。

 リアちゃんはその柴犬程もある体躯を、猫みたいにスリスリとお兄さんに擦り付け、ため息と共にそっと呟きます。

 先程のセリフから分かる通り、リアちゃんは筋肉が大好きな(かた)です。大きいのと筋肉はロマン!!……と、僕には解らない世界を語る方です。ちょっと、ソフィちゃんに悪影響です。ソフィちゃんと一緒にいる時は止めてくださいって行ったじゃないですか!!


「な、何を言うッスか!!聞き捨てならねーッス!!筋肉はロマン!!大きいのもロマン!!それがわからねーッスとは…相変わらずニコさんはダメダメッスね…。」


 はあ~…と、もし人だったら肩を竦めるような動作でリアちゃんはため息を吐きます。……元高身長人間だった僕から云わせてもらえば、大きくったって特に良いことは無いですよ?むしろ大き過ぎるとドアとか椅子とか…色んな物を特注しないといけないので不便ですよ?色んな所に頭ぶつけますし…。それに上から見下げるような視線になるので怖がられますし……良いことなんてありませんでしたよ?

 筋肉は素晴らしいという意見だけ賛同しますけどね。でも3歳児には必要ありません。ましてや女の子にそれを語らないでください。


 リアちゃんとあーだこーだ蟲語(覚えました)で言いながら帰路につきます。ナトゥリムさん家に行く時はこうしてリアちゃんに送ってもらうまでがセットです。……悔しい事に、この時間帯で僕とソフィちゃんだけだと人に拐われかけた前歴が在りますので……(まだ日が高ければ大丈夫なのですけど…)。ギリィ!


 冬は日が落ちるのが異様に早いです。あっ…と言う間に日が沈み、茜色の透明感ある空が瞬く間に紫紺に色が変わっていきます。


「んじゃ…ッス。ソフィちゃん、またね~。」

「り**!ばいばい!!」


 孤児院につく頃にはすっかり色は黒に塗り潰されました。リアちゃんにばいばいと、めいいっぱいブンブンと手を振る僕の娘マジカワユス!!ってやつです。


「に***、そふぃ*。****。」


 帰ってくると、ここの経営者であるシスタールルエルさんがお出迎え。僕はリリーフィアさんから頂いたお手伝い賃(と云う名の報酬)を渡します。ルルエルさんはそれを懐にしまうと、ソフィちゃんの手を引き食堂に移動します。どうやら僕達が最後だったみたいです。皆席に着いて待っていました。


「「*******」」

「いただきます。」


 ご飯の前に御祈り。僕も日本式の御祈りをしたあと、一緒にご飯を食べます。

 僕達の今住むこのアローロ孤児院は教会の附属施設です。ソフィちゃんに着いてきた魔物(ぼく)を始めの内は忌避していましたが、今では皆さんすっかり慣れて、こうしてご飯を一緒に食べる仲です(僕は机の下ですけど)。


 あの日、契約出来ないとわかった僕はリリーフィアさんに泣きつきました。ソフィちゃんの側に居たい!!あの子の成長を見届けたい!!と言って。

 暫し難色を示すリリーフィアさんでしたが、僕の熱意に負け、契約の代わりに“誓約”という別の手段を考えてくれました。


 “誓約”とは、文字通り“誓う”事。

 自分に枷をかける事です。僕は“人を傷つけない”事を誓約し、リリーフィアさんの仮初めの従魔になりました。これを破ると二度と人が住む街に入れなくなるらしいです。ソフィちゃんが無事成長するのを見届るのが目的なので、特に支障は無さそうですね。

 その後はテイマーさんが集まる“ギルド”って所で登録。特に審査は無かったので大丈夫でした。

 それからリリーフィアさん達にここに案内され、教会の警備やら備品修理やらを条件に住まわしてもらっています。

 こうして僕は街に滞在出来るようになったのです。



 モグモグと今日のご飯を食べながら…今日も1日平和であったことに感謝です。

遅くなりました。

そしてもう1話はもしかしたら明日になるかも…。鈍筆ですみません。

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