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その時、各地で

お久しぶりです。再開しました。けど、ニコは今回出ません。

一方その頃、アイノンの街より遥か南のゴールの森にて、

~視点:リン~


「ネェちャん、ぼんドうに行ぐのか?」


 ゴブザザがオレを震える目で見つめる。目に涙溜めてんじゃねぇよ。男だろお前…。

 けど、オレを見てるのはゴブザザだけじゃねぇ。他にも集落のジジイやババア達、オレと同い年位の奴等に下のガキ共。そして、カトレアバー様とライゴウジー様。

 皆がオレを見つめ、瞳を揺らす。


 けどオレはその視線に背を向ける。


「アア、そうダ…。」


 オレは纏めた荷物を背負う。

 思えば長かったように感じた数ヶ月だった。アイツと出逢って、一緒に暮らして、拐われて再会して……気がつけば集落の奴等と肩を並べるどころか頭2つ3つ分くらいオレは強くなれていた…。あんま気乗りしねぇが、集落ではもうオレを嫌な目で視るどころか、むしろキラキラとした目で見る奴が多くなるくらい、オレは変わった。

 全ては、アイツが、ニコが居たからだ…。


「だかラ、オレはこの森をデる!!」


 アイツが居なくなってそろそろ1ヶ月。

 アイツが居なくなってから、オレの日々はまたアイツと出逢う前みたいな…ドン底の暗い闇に戻っちまったようになった。

 昔とは違う。昔と違って、今のオレにはカトレアバー様にライゴウジー様、後ついでにゴローのニーチャンにゴブザザだって居る。けど、足りない。足りないんだ。アイツが居なきゃ、オレ駄目みてーなんだ。ニコが一緒に居なきゃ何もつまんねーし、飯も不味く感じる。アイツが隣に居なきゃ寂しくて目から涙がとまんねーし、夜はガキみたく眠れない。何より…寒いんだ。オレは≪炎属性≫だけど、なにやったって暖かくならねーんだ。いくら炎出したって、いくらお前らに温かさを分けて貰ったって、全然暖かくならねえ。むしろ、ドンドン寒くなってくんだ…。こんな事、昔はよくあった。冬の夜、布切れ1枚も被れなかった日なんて数えるのが面倒なくらいたくさんあった。でも耐えられた。オレは我慢できた。けどな?駄目なんだ。アイツが居なくなってから、ドンドン寒くなってくんだ。体の中がマルッと無くなったみてーに、寒いんだ。それはアイツが居なくなってから、ずーーと、なんだ…。多分あの日、アイツがオレの“熱”を全部持ってちまったからだと思うんだ。


 だからオレは、オレの熱を取り戻す。オレの熱を持ってちまったアイツを見つけて取り戻す!アイツを見つけて、またあのあったけー日々にするために、アイツがまたオレの横で笑う日々を取り戻す為に、オレはこの森を出る!!


『リン…。』

「!?バ、バー様…。」


 森を出ようとするオレの前に、カトレアバー様が立つ。……なんだよバー様?アンタには世話になったけど、オレは森を出るからな?いくら止めたって、ゼッテーゼッテー出るからな!!


『リン、私は止めませんわ…。貴女にコレを……。』

チャリッ


 そう言って、バー様がオレに渡したのは暗い紫の石に紐を付けたペンダントだった。…ニコの眼の色のがキラキラしてて綺麗だな…。


『コレはあの日、貴女達が倒したウルフの魔石を加工した物ですわ。コレに私とゴロー、そしてラオヤークから少し呪いを掛けましたの…。貴女に祝福が在るように…と…。どうか着けていってください。』

「バー様…。」


 オレはバー様のペンダントを首にかける。…少し重いけど、コレくらいなら問題ねぇな。……うん。ありがとー…バー様。


「クェー!!エッ!エッ!」

「ジー様?」


 ジー様の奇声が聴こえ、振り向く。

 パサッ…とオレの上に黄色い何かが…コレ、ジー様の羽?


「クケ!!クケケーー!!」


 ジー様は相変わらず何言ってんのかわかんねーけど、多分コレを持っていけ!!きっと役に立つ筈である!!って言ってる気がする…。うん。ジー様もありがとーな…。大事にするぜ…。


「んじャ、行ってクル!!」


 オレは産まれ育った森を出て、一歩進んだ。森の外は見たことも無い、広い広い草だけが生えただけの大地がどこまでも続いていた。


「ネェちゃん、気をつけテ~!!」「りん~!!達者デな~!!」「元気デね~!!」


 見送る奴等の声を背に、オレは走る!!


(待ってろよニコ!!ゼッテー見つけてやるからな!!)


 まだ見ぬ世界。広い大地。高い空。

 そんなどこもかしこも分からない世界を突き進む。そんな世界の何処かに居るニコの為、オレの平和の為、オレはひたすら足を動かし、大地に強く足跡をつけていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 更にもう1つ、アイノンの街よりもっともっと北。世界の果て、レシウス山脈最高峰にて、透き通るような薄氷の女と、1人の男の子がそこにいた…。

~視点:??~


「ほんとうに…それで返してくれるの…?」


 寒い…。寒い…。

 ここは寒い。世界の果てなんて云われてるレシウス山脈の一番上なんだから寒いのは当たり前。知ってる、そんなの。本当だったら僕だって早く街に戻りたい。温かい家は無いけど、風と雪を防げる場所は有る。だから早く帰りたい…。


『ええ、勿論ですわ。』


 でも出来ない。僕は今、この女と約束してしまったから…。このレシウス山脈の皇。氷精霊の王様で冬の支配者、ウィングズ様と“約束”してしまったから…。もう、帰ることなんて出来ない…。


『くすす…。なんて美しい黒なの…。』


 そう言って、ウィングズ様は僕の黒い髪を触った。ウィングズ様は氷の王様だから、僕の髪はすぐに凍った。…冷たい。


『はぁ…本当に、なんて美しい色…。』


 今度は僕の頬を擦り、引き寄せ、僕の目を見る。…僕は瞳も黒だから…禁忌の色だから、あんま見て欲しくない。


『…そして、なんて愚かな子…。』

(……カチン。)


 コレには僕もムカついた。いくらウィングズ様だからって、言って良い事と悪い事がある。僕は愚かな子なんかじゃ無い。

 だけど、それは言わない。言っちゃいけない。それを言って、この女を怒らせてしまったら……あの子(・・・)に何をさせるか分かんないから…。我慢。


『それでは貰うわね――――――――――――――――――貴方の人生を。』


 ウィングズ様の指が僕の口に触れる。指はウィングズ様の青い血が一筋流れていた。唇に触れる。痛い。触れた唇が、血が通った喉が、心が痛い!熱い。一番寒い日に裸で外に出たみたいだ…!?痛い!!

 けど、我慢しなきゃ…。我慢して、ウィングズ様に仕えなきゃ…。じゃないと、あの子を返して貰えない…!!


「……!!ゴクッ!!」

『くす。飲みましたね…。今日から貴方は私のモノ。そうね…“ノエル”の名を与えましょう。』


 僕を見下し、ウィングズ様は名乗る事を促した…。言わなきゃ…。言わなきゃ名前…。痛いよ…。痛いよ…。けど、言わなきゃ…あの子を返して貰えない…。


「はぁ…はぁ…。ぼくの…なまえ…は……“ノエル”…で…す……。」


ゴワッ


 言い終えた途端、僕の胸に、これまでで一番熱いのが走った。見ると、見たこと無いような変な模様が胸に書かれていた。これが…“契約”の証…かな…?


『ええ…。契約は終了ですわ…。』


 ウィングズ様が僕を抱き上げ、ウィングズ様の氷と雪でできた居城に帰る。……僕はもう、“××”じゃなくなっちゃった…。ごめんね…おかあさん…。


 ウィングズ様の腕の中、寒くて寒くて苦しかったから見えないように隠れて涙を1滴流した。


 そして僕は、“ノエル”になった…。

リンと、誰かのお話。


次は少し時間が進みます。


誤字、脱字を見つけましたらご報告ください。

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