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赤ちゃんのゆくえです。

「ハァ、ハァ、ハァ…クソ!何処に消えたあのクソ蜘蛛!!」


 ホーンスパイダーを追いかけ、俺は森の中を走る。途中何回か妨害(≪グロウ≫使って(あしば)急成長させるなくすって反則だろ!!)に遭い、奴を見失っちまったが大丈夫。闇雲に走っているわけではない。。元々万が一を考え、指輪には予め≪(マーキング)≫と言う盗賊職御用達の追跡スキル。分かりやすく言えば、俺が魔力で付けた特殊な印が消されてない限り何処にいても居場所が判るっつー≪(アーツ)≫を付けといた。戦闘で無くしちまった事を想定して付けたんだが…、ほんと、付けといてよかったぜ…。

 つか、ほんと何なんだよあのホーンスパイダー!!

 追跡で俺を撒く為、魔法や糸を使うのはいい。だがな、お前引き出し(・・・・)が可笑しいだろ!?なんで3属性も使えるんだよ!!まず俺に使った≪雷魔法≫、次に車輪を沈めたり木を飛び移りながら追いかけてくる俺に使った≪地魔法≫、そして…追ってくる俺に放った≪炎魔法≫!!おかしいだろ!?なんで虫系モンスターが≪炎≫使えんだよ!?確かに使えるモンスターはいるけどさ、そいつらって火山とか南の奴等だけの筈だろ!?(ここ)で、しかも虫系モンスターで、なんで使えんだよ!!おかしすぎだろ!!つか燃えねぇのかよ!!……ハッ!?ま、まさか、アイツ実は≪変異種(レア)≫じゃなくて≪特異種(ユニーク)≫なのか?だとしたらあの規格外の強さもなっとく…。もしかしなくても、俺、とんでもねぇの追いかけてたりする?


(だが、追うっきゃねぇ…。)


 幸い…かどうかは判らんが、奴は先程から移動してないらしい。動かない≪印≫が証拠だ。スパイダーの奴等は元々待ち伏せ型。あそこが巣なのかもしれん…。

 自分でも馬鹿だって事は分かってる。たかが指輪、されど指輪なんだ…。レラの母親は、まだアイツが俺と出会うよりもっと前に、アイツがまだ物心つく前に死んだらしい…。父親は居らず、アイツはずっとずっと孤児院で暮らしてきた。俺も何回か行ったことがあるんだが、雰囲気は明るいしみんな笑いあってるいいトコ、なんだがとにかくボロい。所々に素人くせぇ補修跡が有った。万年金欠な貧乏孤児院で、日々食っていくのがやっとな、そんな所だった。そんな所…って言ったら悪いが、とにかく常に金が無いそこで、レラは指輪(かねめのもの)を売らなかった。居ない両親の、大切な形見だからって言って。アイツは孤児院の奴等が大好きだ。アイツ等の為なら何でもするって言ってた。そんなアイツが唯一、どんな事が遭っても手離さなかった指輪。ソレをこんな所で、モンスターごときに奪われちゃああの世にいるアイツの親御さんに俺は顔を向けられねぇ!!絶対に取り返す。それが喩え、≪変異種≫だろうが≪特異種≫だろうが変わらねぇ。絶対にだ!!


 そして俺は背の高い叢に辿り着いた。≪印≫の反応はこの叢の中からだ。間違いなくこれは罠だろう。もしかしたら、アイツの所に戻れないかも知れない…。


(だが、男にゃそれでもヤらねぇといけねぇ時があんだよ!!)


 俺は≪隠密≫も使わずズンズン叢の中を走っていく。どうせ待ち伏せてるんだ。罠の中に行くんだから≪隠密≫なんざ使っても意味がねぇ!!


(残り6m。……3…2‥1。)


 ≪印≫を頼りに突き進む。思いの外密集してる叢で視界が悪い。どんな罠を張っているのか分からねぇが、それでも俺はそこに行く!!


(……すぅー。)


 ≪印≫の目の前。そこで俺は一旦立ち止まり、深く息を吸う。……オシ。逝くぞ!!

 俺は草の根を掻き分け、突撃する。


「ウオォォオ!!クソ蜘蛛!!俺等のゆび…わ……?」


 草の根を掻き分けた先。そこには無傷な俺等の指輪と冒険者証。そして―――――


「………だぉ!?」

パチンッ


 ……鼻提灯を破裂させ、驚いた顔を俺を見る…赤ん坊(ガキ)が、そこに居た……。


「………どう、なってんだ?」


 困惑する俺。…いや、普通に困惑するだろ…この状況…。


「……ひぐっ。びぇぇぇぇえええええええええ!!」

「オワッ!?」


 そして、突然赤ん坊が泣き出した。…まぁあんな大声出して現れたんだ。当然っちゃ当然…って、


「お、オイ泣くな!泣かないでくれ!!」

「びぇぇぇぇえええええ!!」


 泣く赤ん坊を()(かか)え、何とかあやそうとする。けど、俺は今まで赤ん坊なんざ相手にした事なんてねぇ!!近所の乳母やってるおばさんの真似であやしてみるが、この先どうすればいい!?どうやったら泣き止むの!?コレ!!


「びぇぇぇぇえええええ!!えええええ!!」

「た、たのむ!頼むから泣かないでくれ!!」


 響く赤ん坊の泣き声。懸命にあやす俺。

 ……ほんとに、どうすればいいんだよーーー!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

~視点:ニコ~


「びぇぇぇぇえええええ!!ごわ゛がっだよ゛~~~~!!」

「あ~~…ヨシヨシ…。頑張っダっすネ~。」


 現在、追ってきた男性の後を付け、再び1㎞先の襲撃場から荷馬車の監視なうです(勿論≪隠密≫使用中)。それにしても…ひぐっ…こわかった…怖かったですーーー!!女の人はあの円錐みたいな槍で突撃してきたり土からなんかトゲ(?)みたいなの出してくるし男の人は背後から何の気配も無くナイフで刺して来ようとするし(声で何とか気づけましたけど)、……ひぐっ、ごわ゛がっだよ゛~~。


「まァまァ…。落ち着くッスよニコさん。無事“作戦”成功しタンすから、ヨカったじゃナイっすか。」


 そう言って僕の背中をポンポンしてくれているのは、先週出会ったゴブリンのゴブブン君です…。

 先週のあの時、草の根を掻き分け、出てきたのは彼でした。赤ちゃんの泣き声に引き付けられた彼は僕達を獲物とし、襲って来ました。≪威圧(おはなしあい)≫でなんとか和解し、それから1週間赤ちゃんのお母さんを探しましたが何の手がかり…いえ、それどころか人影すら見つけられず、とうとう孤児確定してしまった今日この頃…。

 とりあえず(ゴブブン)が暮らす集落にお邪魔し、赤ちゃんのお世話をさせて頂く事にしました(平和的に≪威圧(おはなしあい)≫で脅した(はなしあった)結果、みなさん快くOKしてくれました)。どうやらこの赤ちゃんは離乳が終わっており、歯が少し生え始めていたのでゴブリン集落でも暮らす事ができました。離乳が終わってて良かったのですが、流石に人間の赤ちゃんを何時までも集落(ここ)に置いておけないという事で時々来るという人間に託す事に決めました。…と言いますか、赤ちゃんを食べようとするゴブリン達(かたがた)が多すぎて安心できないのでそうする事にしました。


 そして、先程来ました荷馬車の地面に≪クローシェン≫をかけ泥沼化し、荷馬車を押そうと出てきた人の荷物を強奪。取り返そうと追ってくるだろう人に赤ちゃんを保護してもらおう。と思い行動したのですが…。……ひぐっ。あんなに、あんなに怖い方々が出てくるなんて予想外でしたよ!ゴブブン君曰く、この森を通る人間は冒険者と呼ばれる職業の方に護衛されているって聞きましたけど、なんでソレを早くに言ってくれなかったんですか!?なんでさっきなんですか!!(教えてくれたのが襲撃後でした。)


「ヒッ!!ススススミマセンでしたッス!!あ、ホラ!!アノ人間が仲間と合流するッスよ!!」


 ゴブブン君が指差す先。そこには予定通り赤ちゃんを保護してくれた男の人が、荷馬車で待っていた女の人と商人みたいな格好のおじさんと犬(?)みたいな顔の少年に赤ちゃんをみせていました。赤ちゃんは男の人が叫びながら現れたせいで、ずっと号泣しています。あああああもう!へたっぴ!赤ちゃんはもっと優しく、包むように抱いてください!!ちゃんと腰支えて、もっと体密着させて!あああ!今すぐ泣き止ませに行きたい!!


 そう思っていると、女の人が赤ちゃんを男の人から取り上げ、あやし始めました。…どうやら女の人は得意みたいですね。赤ちゃんがすぐに泣き止み、うとうとと舟を漕ぎ始めたのが見えます。…よかった。赤ちゃんの世話が出来る人がいて…。

 ホッとした僕をゴブブン君が見つめます。ん?どうか、しましたか?


「ア、アノ…ニコさんは、コレでヨカったんでスか?」


 そう聞くのはきっと、僕があの子の面倒をみるのをずっと見ていたからでしょう。よかったか?ですって?そんなの…


「よかったに、決まっているじゃないですか…。」


 僕は蜘蛛。ホーンスパイダー(モンスター)。人よりもゴブリン(きみ)よりも遥かに短い命を持つモノ。喩え寿命が長かったとしても、あの子に離乳食(ごはん)は作れないし、言葉も常識も、なんにも与える事が出来ないちっぽけな只の虫。

 極めて人に近いゴブリン達(きみたち)でさえ手を(こまね)くあの子の面倒を、僕が、あやす事とオムツを替える事ぐらいしか出来ない短命な僕がずっと看るなんて、出来ない、不可能なんですよ…。だったら早く、愛着が湧き、手放せなくなる前に、同じ種族である人間(かれら)に託した方がいい。…きっと、それがあの子の幸せになる筈です…。


「さあ、集落に帰りますよ。このあとはゴリリンさん所にミニオーク(小さい二足歩行する猪みたいなモンスターです)を5匹でしたっけ?」

「え!?エエ。そうッス。」


 僕は踵を返し、集落に戻ります。集落に置かせて貰う代わりに、食糧の調達の手伝いをする約束しているんです。あの子が居なくなった今、もう集落(あそこ)に居る必要は無いのですが、ゴールの森に帰る準備が出来るまで置かせてもらいましょ。

 ゴブブン君を連れ、集落に戻る。…最後に一目だけ、一目だけあの子を見よう…。

 振り向き、荷馬車の方を見る。そこには、











商人のおじさんと赤ちゃんを保護した男の人が、犬顔の少年を蹴り倒してボコボコにしているところでした…。あれ?


 そこで僕は気づきました。

 犬顔の少年の首に鉄っぽい金属で出来た、首輪が着けられている事を…。

 思いだすは前世、偶々観た某歴史番組で首輪を着けられて強制労働させられている人達…。そして、一ノ瀬さんが暇潰しにと貸してくれたライトノベル…。


(商人・首輪・異世界・ライトノベル…)


 目の前の状況と前世の記憶。そこから導き出させた答えは――――


(……もしかして、おじさん、“奴隷商”?)

「……………Boaaaaaaaaaaaaaaaaaaah!?」

「グギャッ!?」


 や、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイのですーーーー!!ま、ままままままさかの奴隷商ーーーーー!!なんで今!?なんでこのタイミング!?どうして今出てきたんですかーーーーーーーーー!!


 ………ハッ!!


―――――――

(以下、ニコの妄想)


なんか小汚ない太っちょのオジサン「ゲハハハ~。汚ならしい小娘よ~。我輩の体をぺ~ろぺろするのだ~。」

成長した赤ちゃん、もとい少女「いや!!なんでそんなことを!!」

オジサン「黙れぇ!!小汚ない奴隷が~!!」

ベシン(鞭で叩かれた音)

少女「キャッ!?」

オジサン「オラオラオラオラオラオラ~!」

ベシンベシンベシンッ!!

少女「いや~~~~!!」

オジサン「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ~!!」

ベシンベシンベシンベシンベシンッ!!


(以下省略)


少女「がっは……。(ガクッ)」


少女死亡。


end(妄想終了)

―――


(み・た・い・な・事されるって事ですかーーー!!)


 僕は前世で一ノ瀬さんが貸してくれた本。その中にあった或る本の内容が一部の人物を代え、頭の中で再生されます。ここは異世界。あのような事がさせてもおかしく無い世界です!あああ!僕の馬鹿!!なんでそんな人達を選んだんですかーーーーーーーーー!!


 そうこうしている内に荷馬車の準備が終わり、発車していきます。


「!?ま、ままままって、待ってその荷馬車!!Warten(その) Sie auf einen(にばしゃ) Wagen da drüben(まって)!」

ダッ

「!?に、ニコさん!?」


 僕は荷馬車目指し、走ります。待ってその荷馬車!!赤ちゃん置いてってーーーーーーーーー!!

 次回、赤ちゃん追跡調査線~ニコは赤ちゃんを奪還出来るか!?~


誤字・脱字を見つけましたらご報告ください。


↓オマケ


――――――――

ワンズバー(以下ワ)「あ~~、なんか、赤ん坊拾った…。」

レラ(以下レ)「えっ!どうしたの!?その赤ちゃん!!」

パパロ(以下パ)「ハッ!!ワンズバーさん!!誰かに孕ませたんですか!!」

レ「えええええ!!そうなの!?ワンズバー!!」

ワ「そんな訳在るかぁ!!」

ボカ(パパロが殴られる音)

商人(以下し)「何言ってるんですか!!こんな短時間に出来る訳無いでしょうが!!(困惑中)」

ゴッ(パパロが蹴られる音)

ワ「そうだ!!俺はレラ一筋だーーー!!」

ドカドカドカ

し「パパロ!!今は緊急時だったのに、なんて事を言うんですかー!(若干混乱中)」

ドカドカドカドカッ

パ「………あぁん♡もっと~♡」

レ「………赤ちゃん。離れましょ…。」


――――――――

こんな舞台裏がありました。流石に1㎞先の声なんて聴こえません。

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