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vsC級ぼうけんしゃ!!です。

~視点:C級冒険者 ワンズバー~


「きゅぴーーー!!」

バシュン!!

「キャッ!?」


 俺が叫んだ直後、背後から白い塊がレラを襲った。


「な、ナニコレ…。ベタベタするぅ…。それにネバネバぁ…。」


 幸いレラに怪我は無かった。どうやら白い塊はベタベタのネバネバするだけのようだ…。

 俺は塊が発射された先を≪遠視≫のスキルを使って探る。≪探査≫で察知出来なかったっつー事は、相手は相当≪隠密≫のスキルが高いのだろう…。クソッ!!油断してたぜ…。

 ≪遠視≫を使いながら辺りを探る。すると、木々の間から黄色いナニカが見えた。…あれは、スパイダーか?確かアイツラは夏にしか居ない筈なのだが…。それにあの色。アイツラの色は茶色かった筈…!?まさか、アイツ≪変異種(レア)≫なのか!?

 10歳の時から冒険者をしてきた。相手にするのは精々≪普通種≫や≪亜種≫くらいで、今まで≪変異種≫なんて見た事すら無かった。噂で『≪変異種≫以上の魔物は色が違う』とか、『≪亜種≫以上の奴は天と地程強さが違う』とか聞いた事は有ったが、俺等にとって≪変異種≫やそれ以上なんて夢のまた夢。遭う確率なんて、それこそ河の中から金剛石を見つけるような話だと思っていた…。

 だが、目の前のアイツはスパイダー。それもかなり小さい。スパイダーのRankは確かF、子供でも倒せる弱さだ。いくら≪変異種≫でも、それくらいなら俺でも倒せるはずだ。≪亜種≫ですら≪普通種≫の素材より5倍は高く売れる。≪変異種≫なら、何倍になるのだろうか?小さいとはいえ、少なくともこの依頼の3倍以上にはなるだろう。…これから金が要るし、レラの仇(※死んでません)もある。…よし。ヤるか…。


「オイ、レラ、動けるか?」

「ええ、大丈夫だわ。」

「よし。相手はスパイダーだった。それも≪変異種≫のスパイダーだった。」

「!?レ、≪変異種≫!?ほんとにいたの!?≪変異種≫が!?」

「ああ、そうだ。だが、産まれたばかりなのかかなり小さい。レラ、これはチャンスだ。アイツを仕留めて、資金にするぞ!」

「!そ、そうね。産まれたばかりなら、まだ弱い筈よね。…うん。わかったわ。…やり方は?」


 レラは驚いていたが、承諾してくれた。得物を構え、既に戦闘体勢に入っている。…ほんと、いい女だぜ…。


「作戦はいつもの、だ。だが、相手は≪変異種≫。どんな戦い方をするか解らねぇ。慎重に行け。」

「分かったわ。」


 俺も腰から大振りのナイフを抜き、構える。


「……3……2……1……行くぞ!」

「オウ!!」


 俺達はスパイダー目指し、飛び出した。


「ハアァァァ!!≪ランスチャージ≫!!」


 レラが≪ランスマスタリー≫の≪(アーツ)≫、≪ランスチャージ≫で突進する。≪ランスチャージ≫は一定時間の間、突撃攻撃の威力を上げる≪技≫だ。

 レラが周りの木々を削り、吹き飛ばしながらスパイダー目掛け突撃する。


「キュピッ!?」


 スパイダーは爆進してくるレラに驚き、慌てて口から糸を発射。足場にしていた枝から飛び降り、糸を伝ってレラの攻撃範囲から外れた。


(だが、それが狙いだよ。)


 移動中で無防備になったスパイダー。俺はその後ろに飛び上がり、ナイフを振り上げる。俺は≪追跡者≫。盗賊系職業で、跡を付けたり気配を消すのに特化した職業だ。奇襲・暗殺なんてお手の物だ。

 レラが注意を引いて、俺が仕留める。いつもやってきた必勝法。


「アバヨ。チビ蜘蛛。」


 俺はナイフを振り下ろした。


チ、チチチチ…………

「キュピーー!!」

バチィッ!!

「ガ…ハ……!?」

「!?ワンズバー!?」


 仕留めた。そう思った。

 だが振り下ろし始めた直後、スパイダーからチチチチと高い音が鳴り、気がつけば、俺は真っ逆さまに落ちていた。


ドガッ

「カハッ。」


 幸いスパイダーがいたのはあまり高くない木の枝だったので、俺に大した怪我は無かった。


(な、にが…?)


 俺は起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。全身が痺れ、所々で鈍い痛み。あのスパイダー、何をしやがった…?


「キュピィ…。」

バチバチバチチチ…


 声の方を見れば、バチバチと電気を纏わせた奴が居た。…まさか≪雷魔法≫か?バカな、スパイダーが≪魔法≫を使えるはず……!?

 そこで俺は、気づいた。遠目からだったんで気づかなかったが、小さくて赤い…()がある!奴は“スパイダー”なんかじゃない。奴は、進化系の“ホーンスパイダー”だ!!


(ヤバイ。ヤバイぞこれは!)


 俺は事のヤバさに気づき、全身が凍る。

 通常の虫系モンスターは体を強化するくらいの、所謂≪強化魔法≫しか使えない。元々虫系モンスターはバカみたいに殻が固かったり動きが素早かったり暴力的な数による集団行動が強みのモンスターだ。そして、≪魔法≫攻撃が弱点で知られている。

 それでも“例外”が存在し、その数少ないモノの中にコイツが、“ホーンスパイダー”がいる。

 ホーンスパイダーのRankは“D”。それは、俺より下のE級冒険者がFPフルパーティー(1P(パーティー)は最高6名までと決められている。FPとは6名集まっているPの事だ)で漸く安全に狩れると言われている強さだ。

 だが、それはあくまでも≪普通種≫ならの話だ。奴は≪変異種≫。≪普通種≫より遥かに強い。C級の俺でさえRank Eの魔物の≪亜種≫相手にゃFPに入れてもらってやっと倒せる強さだ。そんな相手なのに、アイツは“Rank D”でしかも≪変異種≫!!間違っても、二人だけで敵う相手なんかじゃない!!クソッ!!見誤った!!あんまりにも小せぇからスパイダーだと思っちまったじゃねえか!!


「キュ~ビ~。」

「ヒィッ!?」


 そうこう考えてる内に、奴が俺に近づいてくる。そういやアイツ等は肉食。……ま、まさか、俺を喰う気か?や、やめろ。くるな、くるんじゃねぇ!!


「きゅぴ。」


 じりじり迫り来るホーンスパイダー。奴の長い脚が俺の首に当たった。


(ここで、おわりなのか…。)


 俺は死を覚悟し、目を瞑った。










「ハーーナーーレーーーローーーーーー!!」

ドドドドドドドドド!!

「キュキュピィ!?」


 激しい地鳴り。

 もう駄目だと思ったその時、轟音と砂煙をあげ、土の牙が奴を突き飛ばした。


「ワンズバー!!大丈夫!?」

「レラ…。」


 俺の横にレラが走ってくる。…そうか、今のはレラの≪アースファング≫か。レラは槍使いで“地魔法使い”だったっけ。いつもいつも槍ばっか使ってたから忘れてた…。何はともあれ、助かったぜ。


「きを…つけろ…。やつ…は…“ホーンスパイダー”…だ…。」

「“ホーンスパイダー”ですって!?あ、ほんとだ。小さいけど角がある。なるほど、だから雷纏ってるのね。」


 俺は奴の正体を伝えた。

 どうやらレラも気づいていなかったらしく、一瞬驚きはしたがすぐに分析を始めた。


「…くっ!ああ、そうだろうな。それと馬車のアレもある。恐らくだが、お前と同じ≪地魔法≫を持っている可能性も高い。見ろ、アイツ、お前のアレ食らってもピンピンしてやがる…。」

「…本当ね。けっこう威力が高いの撃ったのに…。≪地魔法≫のlevelが高いのかしら?」


 痺れがとれてきたので立ち上がる。若干まだ痺れが残るが、レラ一人で戦わせるなんざ男が廃るからな。

 ホーンスパイダーは≪アースファング≫の直撃を受けてもピンピンしていた。ただひっくり返っちまったから、脚をジタバタしてなんとか起き上がろうとしてる。…クソ。どうなってんだよ、アイツのMndは!?レラはそんじょそこいらの魔法使いより腕がいいってのに、なんであんな無傷なんだぁ!?いくら地魔法に耐性が在るからって、ピンピンしすぎだろぉ…。

 俺は後方の馬車を見る。…まだ泥沼から出られていないようだ。旦那とパパロが頑張っているが、ビクともしてねぇ…。逃げるのは、無理か…。


「……やるっきゃ、無いようだな…。」

「そうね。アイツも、あたし達を逃がす気は無いみたい…。」


 正面を向く。アイツはなんとか起き上がれたみたいだ…。体から雷をバチバチ出して興奮状態になっちまってる…。どうやって逃げようか…。


「……どーする?」

「…そうだな。レラ、アイツにまた≪ランスチャージ≫してくれねぇか?アイツがお前に気を反らした隙に、俺は旦那達の所行って馬車を沼から出す。合図するから、そしたらまた≪ランスチャージ≫でスピード上げてこっちに逃げ込め。いくら素早さが売りの虫系モンスターでも、馬にゃ勝てないだろ。」


 俺がそう言うと、レラが不満を前面に出した顔をした。おいおい…。どーする?って聞いたのお前だろ。なんでそんな顔をするんだよ…。


「…別にぃ。」

「おいおい…。聞いてきたのはお前だろ…。やりたくねぇなら俺がやるけど、お前より俺の方が力が強いからそう言ってるんだ。お前、馬車動かせるのか?」

「…厳しい。」

「だろ?それに、地魔法使い(おまえ)ならアイツの≪地魔法≫も≪雷魔法≫耐えられるだろ?俺はどっちもねぇから無理だが、お前ならやれる。…それとも、怖くて出来ねぇのか?」


 おどけたように言ってやる。レラはそれにカチンッ!ときたのか、今にも襲いかかってきそうなぐらい獰猛な笑顔を浮かべた。


「……嘗めんじゃないわよ。いいわ。やってやろうじゃない…!!」

「決まりだな。」


 すでに目線を俺からホーンスパイダーに移し、構える。目には殺気が籠められ、何時でも行けそうだ。

 けど、ほんとなんて目をするんだよ…。レラの青い目に黄色が映る。青と混ざった黄色。アンバランスな程混ざりきらない色の煌めき。ギラギラと輝くその獰猛さも相まって、なんと美しい事やら…。流石、俺の嫁さんだぜ…。


「またさっきので行くぞ!…3…2…1!!














ヘブゥッ!?」

「ッ!?ワンズバー!?」


 飛び出した直後だった。

 レラの反対方向に走り出した途端、俺の足が何かに引っ掛かり、俺は情けねぇ声をあげ、転んだ。


「~~~っ!?な、なん…!!」


 俺は引っ掛かった左足を見る。左足の靴に白い糸。…!?ま、まさか、これホーンスパイダーの糸か!?いつの間に…!?


「レラ!アブねぇ!!」

「えっ?」


 俺の声に驚いたのか、レラは少し先を走っただけで、≪ランスチャージ≫もせず突っ立っていた。その目の前に、ホーンスパイダーが迫る!!


「きゅぴーーーー!!」

「なっ、きゃ!?」


 ホーンスパイダーが糸を発射。さっきのとは比べ物にならないその量に、レラは押し倒され、拘束された。


「きゅ~~~ぴ~~~~。」

「レラ!!」


 奴がレラに迫る!!

 俺は駆けつけようとするが、靴に付けられた糸が邪魔をし、動く事が出来ない!!


「や、こ、こないで。こないでーーー!!」

「レラァ!!」


 1歩1歩。奴がレラに近づく。レラの顔が青ざめたのが見えた。やめろ。たのむ。俺はどうなってもいい。だけどレラだけは、レラだけは殺さないでくれーーー!!


「きゅぴーーーー!!」

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「レラーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 奴が前脚を降り下ろす。俺は、この先が見たくなくて、目を閉じた。



















































(…………………………ん?)


 待てども待てども、レラの断末魔が聴こえない。俺はそっ…と目を開け、レラが居た方を見る。


「いや、いや、いや…。」


 するとそこには、ガタガタと震えながらも、傷1つ無いレラの姿が。


「れ、レラ!!無事なのか!!」

「……え?わんずばー?あれ?あたし、生きてるの?それとも…ワンズバーも死んじゃったの?」


 俺の声に反応し、ノロノロと顔を上げるレラ。涙の跡と瞼が赤くなっているが、無事なようだ…。


「きゅっぴきゅっぴきゅ~~♪」

「「!!!?」」


 そう思った矢先、奴の声が!

 俺等は声の方向に向き、奴を見つけた。

 奴は器用に後ろ脚4本で立ち、残る前脚4本をブンブン回して踊っているようだった。


 ……そして、その前脚には何処かで見たような1枚のプレートと黄色い石が埋まった指輪が通されたネックレスが2本。………て、


「「(俺/あたし)の冒険者証と指輪ーーーー!?」」

「きゅびっ!!」


 奴が持っていたのは、俺達の冒険者証と結婚指輪だった!!俺達の声に驚いたのか、慌てて逃げていく!!


「ま、待ちやがれこのクソ蜘蛛ーーーー!!」

「わ、ワンズバー!?」


 逃げようとするアイツを俺は追いかける!!えっ?『糸はどうしたのか?』って?んなもん靴脱いだんだよ!!それで終わりだ!!


「ワンズバー待って!!危険よ!!」


 レラの止める声が聞こえる。だが、アレは駄目だ!!冒険者証は再発行出来るが、あの指輪は、お前の亡くなった母さんの形見だろ!あんなクソ蜘蛛に、奪われてたまるか!!


「ワンズバー。…ワンズバァァァァーーーーー!!」


 レラの声を振り切り、俺は走る。


「待ちやがれ!!この△◆〇*&◎(ぴーーー)蜘蛛ーーーー!!」

 戦闘回。

 因みに、一般的なスパイダーは平均で40㎝くらいあります。ホーンスパイダーの平均はちょっと大きい50㎝くらい。ニコは欠食な為、かなり小さい(35㎝くらい)のでスパイダーと間違われました。(ハーバウも大きさからニコをスパイダーと勘違いしてました。)


 次回、何故ニコが彼等を襲ったのか明らかに…!?


 誤字・脱字を見つけましたらご報告ください。

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