きっとあのこもこんなきぶん☆です。
数日経ちました。
「ンじゃ行くか。」
「はい!です。」
支度を終えたリンちゃんと共に家を出る。
「「行ってきまーす!」」
『気をつけて行ってくるのである。』
今だ傷の癒えない先生を家に残し、僕達は森に向かう。天候は晴れ。夏らしいカンカンのお日様と森を抜ける爽やかな風。今日は、最っ高の採集日和です!!
アレから、僕達は集落を離れ、カトレアさんの木の下で暮らすことを決めました。正確には決めたのはリンちゃんですけど。僕はただ着いてきただけです。
リンちゃん曰く、『突然馴れ馴れしくなったアイツ等と一緒に暮らすのは無理。』とのことでした。……気持ちは、何となく分かります。
正直、僕もあそこで暮らすのはキツいです。と言うのも、あの宴会の日、どうやら御酒に弱かった僕は酒癖が酷かったようで、(どうやったのか分かりませんが)宴会を血の海状態にしてしまったようです…。その時の記憶が無いので、何とも言えません…。
それだけなら別によかったのですが(よくないですけど)、不思議な事に『もう酒を呑むな!』と言った方々の中に、何故かまた僕に御酒を呑ませようとする集団が現れたんです。その人達は目がイっちゃってます。まるで“新刊”を手に入れた一ノ瀬さんのような目です。
『に、ニコ様…。モウ1度、もウ1度だけ…。』
そう言って、ハアハア言いながら御酒を片手に迫る彼等は凄く怖いです。何気に“様”になってます…。ゴブザザ君もいて、手が出せません。反対派にリンちゃんが居てくれるお陰で何とか御酒を呑まない生活が続けられています。……しかし、本当に僕は何をしたのでしょうか?そう言えば前世でも病院で集団鼻血大量出血事件が有ったような…、無かったような…。
あ、そうそう。弟君と言えば実はリンちゃん、6人兄弟だったんです!!お兄さん2人にお姉さん1人。あと弟君と妹1人という多兄弟の4番目だったんです!!流石ゴブリン。繁殖能力が高いです。既に2番目のお兄さんとお姉さんは他のゴブリン集落に嫁いでいるそうです。他にもゴブリン集落が有ったんですねぇ~。
『あら、2人共お出かけですの?』
『おっ♪ニコ君にリンちゃん♪チーッス。』
「「チーッス(!/です。)」」
次に会ったのはカトレアさんと遊びに来ていたらしいゴローさんです。
皆さん聞いてください!!なんと、ゴローさんは僕と同じ“転生者”でした!
本名“田中 吾朗”。享年は僕と同じ17歳。3年前、彼も気が付いたら異世界に来ていたらしいです!!……因みに、思い当たる死亡原因は“文化祭で使うコンニャクに足を滑らせ、頭を机に強打したこと”らしいです…。コンニャク、怖いです。
いや~、それにしても驚きました。血の海事件から翌日。急にカトレアさんから呼び出されたかと思ったら、ハイテンション☆なお兄さんを紹介されたんですもん。あまりのテンションの上がりっぷりに、腰が退けてしまいました。で、話を聞いたらまさかの同郷。本当に驚きました…。
その時、カトレアさんに“転生者”であることがバレました。
彼女は僕等の話を聞いて、頭を抱えてウンウン唸ってました。『あり得ない…あり得ませんわ…。』って言いながら。そんなこと言われても、事実なので認めてください。
そんな訳で、カトレアさんは僕とゴローさんが“転生者”だって知ってます。リンちゃんと先生にはまだ話してません。曰く、『私ですら困惑する内容をベラベラ周りに話すな!!』とのことです。……まぁ、一理あります。もっとも、そもそもの話本当は“転生者”は墓まで持ってくつもりだったんですよ?勝手に聞き耳立ててたカトレアさんが悪いです。
「オウ!きのー“リオの実”が旨そうニなってタからな!取ってクル!!」
“リオの実”とは、前に僕が食べようとしてみたあの赤い木の実です。(※1)
なんでもあのリオと言う木の実は今の暑い時期が旬らしいです。あと、リンちゃんの大好物だそうです。……これは、一杯取らないといけませんね!!
『そうでしたの。気をつけて行ってきなさい。』
『お土産ヨソスク~♪』
「「オウ!/は~いです。」」
カトレアさん達に見送られ、僕達は森に消えていった。
「ねぇリンちゃん。本当にこれでよかったんですか?」
「ン?何がだ?」
正直なところ、今でも迷っている。それは“リンちゃんが僕達と一緒にいること”。
もうあの集落に、彼女を虐める者は居ません。むしろ彼女は英雄。邪険にする者さえ居ないでしょう。
けれど彼女は、集落に居ない。
本来なら、ゴブリンは同族で暮らす生き物です。そうして仲間で暮らしていく生き物です。こうして他種族といる方が異質なのです。今はまだいいかも知れませんがこの先、1年後、2年後、3年後…蜘蛛が、一緒に居られるかなんて分からないのです…。
僕は蜘蛛です。蟲なのです。当然ながら、リンちゃんより小さくて、恐らくリンちゃんより、寿命が短いでしょう。
だから思うのです。本当にこのままでいいのか?今からでも集落の方に住んで、同族達と一緒に暮らした方がいいのではないか……。
じゃないと、彼女はまた、“一人ぼっち”になってしまう。そんなの、悲しすぎます…。
そう僕が言うと、彼女はキョトンとした後、こう言いました。
「……?何言ってンだ?一緒にいりゃー問題ねーダロ?」
「……リンちゃん?僕の話、聞いてました?」
当たり前のように言うリンちゃんに、少々目眩が…。大丈夫かな、この子…?
「別に考えてネェー訳じゃネェーよ。オメェはオレより先に死んじまって、オレが一人にナンのが嫌なんだろ?“オメェはオレが一人ぼっちになる”って言ってケド、ここニャーオレより長生きのバー様が居る。その時点でオレが一人ぼっちになることハネェーだろガ。」
……成程、確かに。
カトレアさん(推定余命不明)が居る時点でリンちゃん一人ぼっちになる可能性は0に近かった事、忘れてました。あの木、リンちゃんがこっちで暮らすって決めてからダダ甘でしたからねぇ…。うん。心配無かったです。
「それによ、今はジジイにゴローも居る。集落には……会いたくネェ奴も居るが、ゴブザザだって居る。ホラな、オレ、“一人”じゃねぇゾ。」
ウシシ。と、嬉しそうにこの子は笑った。ソレはまるで、昔写真で見たSonnenblumeのような、光の中で咲く華のような笑顔。
……そっか。そうですよね。もうこの子は、独りじゃない。思い思われ、愛してくれるヒト達が居る。僕なんか居なくなっても、もう大丈夫なんですよね…。あれ?なんか、目から鼻水が……。
「ソレによ、ソンナに心配するんだッタら、
オレとオメェで、ガキでも造るカ?」
「ブーーーーー!?」
それならオメェも安心ダロ?って、何て言う事突然言うんですか!?が、ガキ?ガキ!?つまり子ども!?ハァァ!?ちょっ、リ、リンちゃん!?なに言ってるんですか貴女!?
「イヤよ、オメェとオレでガキ造れば、少なくトもオメェのガキはオレと居られるダロ?オメェ、心配性だけど、自分のガキなら安心ダロ?」
ななななな、なんと言う事を…。
あ、あれですか?ゴブリンのならでわの思考かナンカですよね…ソレ。確かにそれは安心出来そうですが、それは辞めてください…。ソレ以前に、蜘蛛とゴブリンで子ども出来る訳無いでしょ…。無い、ですよね…?
そういうのは、本当に好きな方としてください…。僕には、任が重いです…。
「?オレ、ニコ好きダゾ?」
「そう言う事じゃないです…。」
ダメだ。このゴブリン…。話が通じない…。おかしいなぁ…僕、ゴブリン語で話してる筈なのに…。僕のゴブリン語力、足りてないのかなぁ…?
天然の爆弾発言により、引っ込んだ水はそのまま何処かに逝きました。 あ~…なんだか、なんでそんなこと言ったのか馬鹿馬鹿しくなってきました。リンちゃんはもう大丈夫。ソレが真実でFAでこの世の確定事項です。
「リンちゃん、リオの実取りに行きましょ…。」
「オウ!!」
疲れたので、リンちゃんの頭の上に乗っかって移動します。えっ?ぐうたらするな?いいんです。疲れたんです僕は。それに、こっちの移動方法のが効率がいいのです。適材適所です。
「リオの実、一杯取りますよ~。」
「オー!!」
頭に乗っかりズンズン進む。
目指すはリオの実まっしぐら。
今日も明日も明後日も、コレから続く未来目指してドンドン進む。
どうして僕は蜘蛛になったのか、どうして彼が前世の事を知っていたのか、なんで転生したヒトが居るのか…そんなこと、分からない。
僕達に分かるのは、今日も明日も明後日も、コレからズーーと生きると事。この世界で、この場所で、生まれ変わった生を謳歌すると言う事。
怖い事も辛い事も、楽しい事やワクワクする事に変えちゃって、コレからを生きていこう。
「リンちゃん。楽しみだね。」
「オウ!!リオの実、イッパイあるといいナ!!」
そう言って、赤いゴブリンと奇妙な蜘蛛は森の中に消えてった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「コレで終ればよかったんですけどね!!(怒)」
後に、とある強面男性が遺した言葉である。
「リンちゃん、落とすよー。」
その日、一匹のホーンスパイダーと一人の赤いゴブリンがリオの実を採取していた。
「オウ。……とと、アブねぇ。アブねぇ。」
採取方法は、スパイダーがリオを取り、下に居るゴブリンに取ったリオを落とす。というやり方だった。
一匹と一人はその方法で、山のようにリオを採取した。満足したのか、スパイダーは御機嫌だ。
「ふ~。取りました取りました。リンちゃ~ん!僕も落ちるから、捕まえてくださいね~。」
「オー!!いいぞー!!」
スパイダーは降りるのが面倒だったのか、糸を命綱に今いた枝から落ちた。下には仲間のゴブリンもいたので、安心していたのだろう。
だが、ここで悲劇が起こった。
要因:1
『ネェ、ミテミテ。アソコニスパイダーガイルヨ♪』
『アー♪ホントーダー♪』
スパイダー達から少し離れた場所。そこに、イタズラ好きで有名な風の精霊が居た。
『ネェ、ドッチガアノスパイダートバセルカ、キョウソウシヨ?』
『!ソレ、タノシソウ!!』
キャッキャッと精霊達が笑う。どうやら、本日の悪戯は蜘蛛飛ばしのようだ…。
『ソレジャーイクヨー♪』
『ウン♪』
『『3・2・1……』』
要因:2
みしっ
スパイダーが糸を繋いでいた枝。
実はこの枝、少し他の枝と比べ、あまり頑丈では無かった。
要因:3
要因:3……ソレは、スパイダーにあった。
実はこのスパイダー、あまり知られてなかったがトンでもないレベルの“食事嫌い”だった。
このスパイダーには前世の記憶が在り、その前の生でも、このスパイダーは“食べる”行為が苦手だった。今世、つまり今の蜘蛛の体になり、ソレは顕著に表れた。理由は蜘蛛の構造にある。
スパイダーは元々待ち伏せで狩りをする。その為他の生き物と比べ、ジッとしている事が多い。なのであまり“腹が減る”という感覚を感じ無い生き物なのである。
このスパイダーは待ち伏せをしないタイプだったが、長年により造られた体は燃費が凄く良い、つまり“あまり腹が減らない体”だったのである。
このスパイダーはコレ幸いと言わんばかりに食事をしなくなった。一応仲間が居る時、あのゴブリンと一緒に居る時はゴブリンに合わせ食事をしたが、それでも普通のスパイダーの半分、いや、下手すると五分の一程度の量だった。
当然そうすると、栄養が無いため体は小さくなる。このスパイダーを含め誰も知らない事であったが、実はこのスパイダーは平均的な標準よりかなり小さかった。小さいという事は、それだけ軽いと言う事である。
要因:4
ソレはこの森に他のスパイダーがあまり居ない理由でもあった。
スパイダーの種族には、“バルーニング”と言う移動方法がある。コレは糸で風を掴み、風に乗って長距離を移動する方法だ。一説には、海のど真ん中に出来た新しい島に一番乗りした蜘蛛がいる。と言う実話が存在するほど長距離を移動できる。
結果、
『『トバセーー!!』』
ゴゥォオオオーーー
―――悪戯好きな妖精により豪風がスパイダーを襲い、
ミシッ…バキャッ!!
―――それに堪えきれなかった枝が折れ、
ブワッ
「「……へ?」」
―――軽いスパイダーが空を飛んで、
ヒュルルルルルブワァァァァァアアア
―――そのまま気流に流され、飛んでいった…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
視点:ニコ
ヒュルルルルル…
当然豪風がきて、気がついたらお空を飛んでいた件…。わぁ、お空が青いなぁ~…って、
「Boaaaaaaah!?」
な、なにこれ、ナニコレ!?なんでお空飛んでるんですか僕!?えっ、ちょ、高い。高い高い高い高い高いいいぃぃぃぃぃ!?
「……こ。ニコーーーーー!?」
っウギャァーーーー!?り、リンちゃんが、リンちゃんがちいさいーーー!?そして消えていくぅぅぅうーー!?
僕は慌てて糸を出し、近くの枝に発射します。けれど、糸が辿り着く前に豪風に煽られ失敗。何回か試みますが、全てを豪風が遮り、むしろ離れるスピードが更に上がっていきます。
「り、リンちゃーーーーーーーーーーーーん!?」
「ニコーーーーーーーー!」
伸ばしても伸ばしても届かぬ糸。空を掻き、泳ぐ体。
この時、彼は思ったという。
(オズの魔法○いのド○シーちゃんって、こんな感じに飛ばされたのかな?)
こうして、一匹の小さいホーンスパイダーは、空の彼方に消えていった。
「ニコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
森編~完~
(※1)ライゴウ(前)記載
誤字・脱字を見つけましたらご報告ください。
次は閑話+用語・人物紹介です。




