ぶたいのうらがわ、です。②
シリアルだよ。
~視点:カトレア~
(見くびって、いましたわ…。)
目の前に居るこの子蜘蛛に、もはや畏怖とも呼べるソレを抱く。だってそうでございましょ?この子蜘蛛は、そういった諸々を全てその分かりにくい顔に隠して、私は勿論、リンもライゴウも全ての者達を相手に演技いたのですから…。
『ねぇねぇカトレア姐さんwwなんかおもろいスパイダー産まれたんスけどww
自分で親喰っといてビビるとかwマwwジwwワwwロwwスwwwwww』
そう言って、初めてこの子を見つけたのは“ゴロー”というあの辺りの新しい守護者でしたでしょうか?彼はこのゴールの森の変わり者の一人で時折変な言動をする若木なので適当に流してましたが…ゴロー、あの時の貴方の話を詳しく聞いておけばよかったですわ…。まさか、私達の事がバレるとは。
そう。この子の言う通り、“守護者”は私やラオヤークを含め他にもいるのですわ。私や先程のゴローを始め、主の樹のラオヤークを頂点としたこの守護者達。この森のいたるところに居る守護者達はこのゴールの森の最高秘密。今まで守護者達以外、それこそライゴウでさえ知らない事をたったアレだけの情報で辿り着くとは…。
やはり、この蜘蛛は只の変異種なんかじゃありませんわね。
『カトレアさん、貴女は―――』
そして、気づかれてしまった私の本当の目的。フフフ、いいでしょう。そこまで気づいてしまったのなら隠しようがありません。
さあ、言いなさい!貴方が辿り着いた真実を!
その小さな身体で、頭で、考え、推測し、導きだした答えを!
こうして私を誘い込み、危険を冒してまで対峙すると決めた覚悟を!
さあ言え!言いなさい!!貴方はきっと、
―――――この答えに賛同してくれるのですから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~視点:ニコ~
ずっとずっと、不思議だった。
首を絞められた時、僕は貴女が僕達を監視するために呼んだのだと思ってた。けど、それにしては貴女は優しすぎた。僕達に知識を与え、力を扱う術をくれた。放おっておけば、勝手に自爆していたであろう存在達に。
解らなかった。
貴女が居場所を、雨風の防げる木という場所を貸してくれた事が。この辺りで、一番安全な場所。どうして受け容れたのかが。
けど、一番は、貴女が時々僕達を見るその目。それが一番解らなかった。
ずっとずっと気掛かりで、何を企んでいるのか?何を思っているのか解らなかった。どうして僕達をそんな目で、そんな優しそうな目で、見るのか。
初めて会った筈なのに、その慈愛に満ちた温かい目。どうしてそんな目が出来るのか、僕は、理解出来なかった。
けど、漸く解った。あの時、聴こえた声で、漸く理解出来た。
貴女が見ていたのは僕達じゃなかった。貴女が見ていたのは、本当にその目を向けていたのは――――
「カトレアさん、貴女は―――――
―――ずっと、リンちゃんを見ていたのですね。
貴女は見ていたのは、僕達を呼び、自分の下に来させたのは、全てリンちゃんがいたから、だったのですね。」
『フフフ…大正解、ですわ。』
口に笑いを含み、愉しそうに笑う。
やはり、これが答えでしたか。
「思い返してみれば、そもそも貴女が特異種を知らないわけが無かったんですよ。先程の通り、貴女にはこの森の全てを知る力が在ります。その中で“特異種が炎の力の力を持っている。”なんて情報がこの数年間伝わらなかった、なんて事は不可能なんですよ。なんせ、見た目で判りますし。
そこから推測するに、貴女は初めから、それもリンちゃんを産まれた頃から知っていた。その中で、観察していく過程の中で、貴女はリンちゃんに同情を抱いてしまった。違いますか?」
『あら、そこまで推測出来ましたの?』
最早隠す気がない満面の笑みでパラパラと変わった声で彼女は笑う。……なんか、嵌められた気分です。実際そうなんですけど。
「更に推測しますと、貴女はリンちゃんを助ける事が出来なかった。何故そう思うのかというと、前に僕が蝶に監禁されたって言いましたよね?その時、その監禁場所が主の樹様、つまりラオヤークさんの所だったのですが、彼は蝶達に住処にされたまま何もしませんでした。けど、僕が脱走する時、彼は僕が張った罠の魔力を循環させ、彼女等を全滅させてくれたんでしたよね?
ソレってつまり、“貴女達守護の者は森の生き物達干渉することを禁じられているのではないか?”って思ったんです。だってそうじゃないと、彼が僕の味方をする理由が無いんですよね。現に彼はこの森の主なのですし、貴女が≪魔法≫使えるのだから彼も使えない訳ないでしょ。けど、彼は僕が動くまで何もやらなかった。ソレは“貴女達守護の者は自分からは干渉出来ない。”って考えると納得出来るんですよね~。」
『まぁ、そこまで当てるのですね♪すごいすごい♪』
本当に嬉しそうな顔で笑う。……ぐぬぬ~、なんか、本当に、悔しくなってきますね…。
「まぁ兎に角、ソレは貴女にとってチャンスだった。なにせ、僕はリンちゃんに直接接触出来て、彼女に影響を与える事が出来、尚且魔力の制御が不安なこの森の不穏分子になる存在だった。初めから危険な存在として、排除するしか干渉出来ないリンちゃんと違い、僕はまだ改善と名目で接触出来る存在だった。だから僕達と接触した。接触して、訓練という名目を使って、僕ごとリンちゃんを保護した。そういうことですよね。」
そう。ずっと彼女の目的はリンちゃんだった。ずっとあの優しい目を向けていたのも、優しくしてくれたのも、魔法を教えてくれたのも全て、全て……
『その通り♪リンちゃんを保護したかったらからですわ!!つまり、私の計画通りって事ですわね♪』
そう、全てこの木の掌の上で踊らさせていたって事ですよ!?枝と葉だけなのに!!
うわーー嵌められた!!嵌められました!!こんなこと、後藤さんに変な駒の進め方してるも思ったら実は穴熊囲い(*1)決められた時以上に悔しいです!!
『ハッハッハ!!若、まだまだ甘いですぜぇ♪』
アーー!なんか脳内再生入ってきました!!あの人、所謂携帯ゲームやコンピューター使ったゲームは弱いのに、何故か囲碁とか将棋とかリバーシとか異様に強かったんですよね!!……ハッ!?もしかして、後藤さんプロ!?だったら納得の強さです!何せ後藤さん、ソレまで院内最強だった竜森 宗一郎先生(宙ちゃんのお父さんです。脳外科の先生です。)たったの10分で負かしてましたもん!!
「ウググググ~!!」
『クフフフフ♪まだまだ若いですわね♪流石にあのウルフが来たのは予想外でしたけど、成果はソレ以上でしたわ♪』
「そうでしょうね!!」
やはり、彼女にとってもあのウルフ達の速度は予想外だったみたいですね。あの時、『逃げて!!』って叫んだのも、リンちゃんの様子を見に来ていたから咄嗟の出来事でしたし…。アレのお陰で、漸く解ったのでしたし…。
「アイツ等のお陰で、集落のリンちゃんの評価はウナギ登り。もう、変異種や特異種を虐める奴なんて居ませんしね。」
『本当に大収穫でしたわ♪』
なんかもう踊りそうなカトレアさん。ルンルンル~ン♪って歌い始めてますし…。
「けど、どうしてそんなにリンちゃんに構うのです?今までだって、変異種や特異種はいまさたでしょ?」
『そんなの、決まってますわ!!貴方は知りませんでしょうけど、この森には可愛いのが少ないのですわ!!リンちゃんはこの森の希少な可愛いなのですのよ!!』
うっわハッキリ言った!!ハッキリ言いましたよこの木!?しかもいつの間にかリン“ちゃん”って呼んでますし!?開き直った!!そしてそんな理由ですか!?
「ええ~……。」
『とまあそんな事で、コレからもリンの事はよろしくお願いいたしますね♪まだあの子に疎む馬鹿は多いでしょうから。』
「そんなの、当たり前の助ですよ。」
カトレアさんがすぐに帰らなかった理由は僕にソレを伝える為だったのでしょうね。そんなの、言われなくてもやりますのに…。そんなことより、わざと初めは僕が上位にいるような錯覚を作り出し、段々真相を紐解く内に喜劇にしていくその才能…。間違いない。主の樹様の件といいリンちゃんの件といい……この木、腹黒です!これまでの事全て計算に入れてこの結果に導いてる辺り、絶対お腹真っ黒です!!
『ソレでは、リンちゃんがここにまた住むとしても時々は私の所へ来るようにしてくださいね♪』
そう言って、師匠はズブズブと生えてた木に潜り……ハッ!?
「お師匠様まーーーーった!?」
『はえっ?』
僕は急いで待ったをかけます!!幸いなんとか阻止出来ました。危ない危ない…、忘れる所でした。
「お師匠様、2つ質問が在ります。」
『な、なんですの?』
驚いた顔で僕を見る。あっ、なんか少しスッキリした。
「1つ目はお師匠様にも大切な事です。」
『私でも大切な事?』
?を浮かべ、僕を見ます。……やっぱり、忘れてますね。
「1つ目、ソレは…」
『ソレは?』
ゴクリ。喉がなった。
「ソレは
リンちゃんの3サイズ教えてください。」
『ああ。ソレ…。』
今日って、ソレが本題でしたよね。
穴熊囲い(*1)
将棋のメジャーな技の1つ。後藤さんが好きな戦法。
臆病vs腹黒は腹黒の勝利でした。リンは知らないけど、割と愛され体質。もーちょい続きます。
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