かくしへいき!です。
~リンを救出する少し前~
「う~~~ん…どうしましょ?」
ニコは悩んでいた。というのも、実は肥やし爆弾を作ったはいいがその運搬方法までは考えていなかったからである。
土と排泄物を混ぜて作った肥やし爆弾はとても良い出来だった。少しの衝撃でも四方八方に破裂するくらい出来が良かった。ニコの理想通りの出来だったが、それ故に運搬方法が思い浮かばなかった。簡単に破裂するからである。
更についでに言うと、数が多かった。
リンを捕らえたあの集落の規模からして1つ2つでは確実に足らない。最低でも20くらいは欲しかったが、ニコの体では1度に運ぶのは不可能である。そもそも肥やし爆弾自体がニコの頭より少し小さいくらいの大きさなのだ。蜘蛛の体には脚は沢山有るが腕と手、ついでに指も無い。脚は腕の代わりにはなるが、手の代わりには成らない。持てても1個が限界なのであった。
ニコは考える。袋を作ったり容器を作ってみたり襲撃待機場まで丁寧に一個一個持っていったり…。
結果、全て駄目だった。
袋に入れたモノは運ぶ最中に全て破裂。容器の中に入れたモノも同様だった。
それ以前に臭いが駄目だった。ゴブリン達のトイレにいる時ならまだしも、移動すると当然肥やし爆弾が発する強烈な臭いで何度かゴブリンやウルフに気付かれかけたのである。
ニコは悩む。
いっそのこと、別の方法に切り替えた方がよいのではないか?とまで悩んだ。が、それを考えるには時間が無い。
ニコはリン等のゴブリンやウルフ等より遥かに(筋力等が)弱い蟲なのだ。だから真っ正面からの肉弾戦なんてもっての他。リンを無事且つ確実に取り返すには奇襲しか無い。だからこそ肥やし爆弾による襲撃を考えたのだが、ここからリンが捕らえられている所まではかなりの距離が在る。バレないからといって、一々ここまで肥やし爆弾を持っていって落として持っていって落としてなんてしたら奇襲に成らない。
ニコは考える。考えに考えて、そして……
ボンッ!!
頭がオーバーヒートし、へなへなとその場に崩れた。
「ううう…いい案が浮かびません……。」
悩んでも悩んでも、臭いを解決する案が浮かばなかった。まぁ、その臭いで攻撃するのだから無理もない事なのだが…。
(あぁ、誰か助けてください…。)
ニコは思った。
こんな時、誰かが助けに来てくれればいいのに…。と。
今、ニコが頼れそうな相手と言えばカトレアとライゴウだけである。だが、カトレアは木なので移動が出来ずライゴウは現在治療中だ。とてもではないが助けに来る事は不可能である。
不意に思い出すはTVや絵本のヒーロー達。愛犬と共に活躍する某探偵や蝙蝠のような夜の暗躍者とか青いコスチュームに赤いマントの超人ではなく、どちらかといえばあんパン顔の優しい友達や賢過ぎるビーグル犬のほうである。
その中でもニコが一番好きだったのは青い体の未来ロボットだった。あの少しおっちょこちょいな彼が出す未来の道具。時を渡れる乗り物やどこでも移動できる扉、動物と仲良くなれるお団子にどんな言葉も翻訳出来る蒟蒻等々…。そんな道具の中でもニコが一番欲しいと思ったのは、彼の腹についているポケットだった。あんな小さなポケットから出てくる夢と希望を具現化した道具達。ニコは、その道具達が彼のポケットから出てくるシーンが一番好きだった。だからこそ思った。
(あぁ、○次元ポケットが有ればいいのに…。)
小さいけれど、用量無限の夢のポケット。
開け口が小さいのに、どんな大きいモノでも入る素敵なポケット。
リンゴでもどら焼きでも、どんな生物が入っていても腐らない臭わない魔法のポケット。
「…………。
ソ レ だ ーーーーー!!」
天恵だった。
そう、ココは異世界。魔法の世界なのだ。科学が作った魔法のような代物なのだから実際に魔法で作っても誰にも文句は言われないだろう。今の状況からして、あの秘密の道具は正に適材。いや、むしろそれ以外方法が無い。
ニコはすぐに作り始めた。ニコには確信があった。それは≪魔法スキル≫を習得する為には自分に合った属性である事とその≪魔法スキル≫の相性、そしてイメージが重要だという事を知っていたのである。
実はニコ、リンやカトレアが寝静まっている早朝などにひっそりと起き出し、魔法の練習をしていたのである。その際、ホンの少しの遊び心を出して一ノ瀬から(服作りの参考用に)借りた漫画やアニメ等で出てきた技や魔法を試しでやってみていたのである。そして、それらの中には実現出来たものもあり、ニコの≪魔法スキル≫として新しく習得出来たモノも有った。
更に幸運な事に、≪闇魔法≫が時間や空間に関係する事をニコは知っていた。上記の遊びから派生した知識である。
元々ニコは手先が器用な上に≪精密作業≫≪道具制作≫のスキルがあった。素材は自分の糸を使う事により魔力の伝導率を上げ、≪闇魔法≫のイメージを頭に思い浮かべながら糸に魔力を伝え編み上げる。
“魔道具 ポッケ”
成功したソレにそう名付けた。
“ポッケ”の名前の通り、見た目は白い小さなポケットだが、その内容量は登山用のリュックサックとほぼ同等、臭い漏れも無かった。ニコの持つ規格外の魔力の大半と≪精密作業≫≪道具制作≫の本気を注ぎ込んで作った最高傑作だった。
その後、ポッケを作っている最中に思い浮かんで作った≪闇魔法 アイテムボックス≫(アイテムを別空間に入れる魔法。)に肥やし爆弾を、身に付けたポッケの方に自分と同じくらい大きい特大肥やし爆弾を入れ、夜が来るのを待ち、襲撃した。
ガオロの事は完全に想定外だったが、例の作戦と少しの小細工でなんとか撃退出来たのであった。ちなみに、その時身代りとしてガオロの口に入れたのが特大肥やし爆弾である。奇襲係のゴブザザから臭いが付いたポンチョを予め返してもらい、特大肥やし爆弾をソレで覆う事で(一瞬の)臭い漏れと(ニコでないことを)バレる事を防いだのである。夜目が利くニコにとって、ガオロの口に入れるのはとても容易だった。
こうして、リン誘拐事件及びウルフによる集落襲撃事件の幕は閉じた。
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~視点:リン~
ドンチャカチャッチャ♪ドンチャカチャン♪
ドンチャカチャッチャ♪ドンチャカチャン♪
あれから、気を失ったガオロの奴にニコが≪ブレイクフレイム≫をかまして奴を殺した。(また鼻に脚突っ込んでだ。ほんと容赦無え…。)
そんでもって奴の遺体をオレとゴブザザが抱えて集落に戻った。オレ等が戻ってきた事にも驚いてたが、それ以上にアイツ等のボスがオレ等に殺られた事に気付いた奴等は情けねぇ声出しながら尻尾丸めて逃げていった。
ドンチャチャッチャ♪ドンチャチャッチャ♪
ドンドンドン♪
んで、集落の奴等はオレ等を囲って宴会を始めやがった。よっぽどあのウルフ共かが怖かったのか、さっきっから「リン様スゲー!!」だの「この集落一のエーユーだ!!」だのウルセェ。今まで散々オレを貶してたクセに調子よさ過ぎだろ。気色ワリィ。
「ネェーチャん…よがっダ。よがっダよぅ…。」
隣でゴブザザがボロボロ泣きながら酒を呑む。つーのも実はコイツ、オレが集落の奴等に弾かれてるのを見るのが嫌だったらしい。けど、オレを助けたら何されっか分からないし、自分もそんな目に逢うのが怖くて遠目から見ることしか出来なかったんだとよ。オレを逃がそうとしたのはコレ以上見てるだけしか出来ないのが嫌だったからだと。言われてみれば確かにコイツは何もしなかったけど、その目は優しかったよーな…。まあ過去のことだし、確かめよーがねぇか。そーゆう事にしとくか。
「ひんひゃま。おひゅきをどーひょ。(リン様。お次をどうぞ。)」
「お、オウ。」
そう言ってオレに酒を注ぐのはあのジー様だった。手を擦り合わせてニヤニヤしてる。この人が一番掌返しが酷い。前は態々オレの前に来て他のゴブリン達に知識を与え、オレには「勝手に聴くのデはナイ!!この穀潰しめ!!」って言って手に持った木の棒でひたすら撲ってきたクセに…。
「とんとんおによゎみくだひゃい。ひんひゃまはこのちゅーひゃくにょへはみゅひゃまへふひゃら。(ドンドンお呑みください。リン様この集落の女神様ですから。)」
手を擦ってジー様が言ってくる。…女神って、持ち上げ過ぎだろ…。
なんでこんなにコイツ等がオレを持ち上げてるのかと言うと、原因はニコにある。
あの時、あー、えーと…名前忘れたや。とにかくデケェ方のウルフを殺しただろ?んでもってゴブザザも殺しかけた奴をオレが宥めて落ち着かせたよな?アレ、見られてたんだよ…。自分等じゃ手も脚も出なかったウルフをほぼ一撃で倒したニコを二三言で修めさせたオレ。アイツ等はソレでオレのがニコより強ぇって思ったらしい(もしくはニコがオレの下僕)。
ウルフの襲撃された事から今まで遠ざけていた“力”を手っ取り早く手に入れる為、強者を従えてるオレをこの集落に戻したいらしい。だから(コイツ等から見て)ボスのオレのご機嫌取りしてる。て、さっきニコがこっそり教えてくれた。断定してたけど、オマエはその情報どっから取ってきたんだ?
グイッと一気に酒を呑む。初めて呑んだけど、うめぇな。口から鼻を通る花みてーな匂いがいい。そーいやニコ、酒呑めんのかな?
「オイ、に……ニコ?」
酒呑めんのか聞こうと思い、隣を見たらさっきまで居たニコが居なくなっていた。あれ?アイツ、どこ行ったんだ?
何処かに消えたニコ。一体何処へ…。
それはそうと、秘○道具はロマンだよね☆
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