vsおやだまうるふです!!①
視点:リン
「!?」
声が聞こえた(気がしただけだが)瞬間、オレはニコを抱え横に跳んだ。
ゴギャギャギャギャギャギャギゴン!!
跳んだ途端、ナニカを削ったような音が響く。
振り向いてみたら、そこには一直線に抉られた地面と大穴が開いた家があった。
(なに、が…おこった……?)
訳が、分からねえ。
「いっ…たたたた。ちょっともー、逃げないでよ!痛いじゃないか!!」
「!?」
穴からあの黒いウルフが、ガオロが現れる。あの穴から出てきたっつー事は、コレやったのアイツかよ!?全く見えなかったぞ!!
「(ぱくぱくぱく)。」
ニコにも見えなかったのか、顔を青くしてぱくぱく口を動かしている。……なんと言うか、ほんとにいつものニコだ。オイ、さっきまでの威勢何処やった?
「(ブルブルブルブル。)ふー。痛かったぁ…。にしても、さっきは勢い強すぎだね。ちょっと反省。さて…と、そんじゃ改めまして今度こそ~……いっただっきま~~す!!」
「なっ!?」
身体をブルブルさせ、付いていた土や家の残骸を落とした奴が再び攻めてくる!今度は目に見える速度だったが、それでも疾い!!
「うォーーー!?」
「Achーーーー!?」
なんとか避ける。ジジイとの特訓の成果か、奴の攻撃を掠りながりも避ける事が出来た。幸いな事に今の奴の攻撃はジジイが≪ライトニング≫使った時より遅かったからなんとか避けられた。……よかった。ライズフゥルコと特訓してて。
どうやら奴は急には止まれねぇらしい。その証拠に「へぶぅ!?」っつって、また家の残骸に頭を突っ込ませていた。……なんだ?この違和感?まるで奴が自分のスピードに馴れていないような…。とにかく、今がチャンスだ!!
「ウオオオオォォオ!!コレでもクらっとけ!!≪フレイムスピア≫!!」
「えっ!?リンちゃん!!」
オレは使える≪魔法スキル≫の中で一番速い≪フレイムスピア≫を奴のケツ目掛け撃つ!!
ドーーン!!
「ッシャ!!当たった!!」
今だ頭が抜けなかった奴に見事命中した。…っへ!!オレだって、やりゃー出来んだよ!!どんなもんだ!!
「り、リンちゃん容赦ないです…。」
「ねーチャん、こえぇー…。」
ニコとゴブザザがなんか言ってる気がするが無視する。ケツ押さえながらなんか言ってっけど無視だ。無視。とりあえずニコ、テメーにだけは言われたくねーよ。
モクモク煙が立ち昇る。……ヤったか?
「けほけほ…。君、容赦無いね~。けほっ…流石に、今のは痛かったよ…。」
「なっ!?」
奴が煙の中から出てくる。所々毛がチリチリになってるが、ダメージはあんま無さそーだ。アレ?アレ一応ジジイにも『一撃喰らったら危なかったのである。』って言わせたヤツだぞ!?嘘だろ…冗談じゃねぇ!
「「…に、逃げろーーーーーーー!!」」
「へっ?」
「んっ?」
オレはニコとゴブザザを抱えて逃走した。「あれ?何々?逃げるの?そーいえばこうゆー遊び在ったよね?十数えればいいんだっけ?二十だったっけ?んじゃ二十数えるね♪」ってなんか聴こえたがとにかく無視!!いーちっ!にーぃ!とか聴こえっけどとにかく今は逃げる!!
ニコとゴブザザを抱え、オレ等は森に逃げた。
「ハア、ハア、ハア…」
オレはニコを抱え、夜の森を走る。目指すはバー様のとこだ。ゴブザザ?ああ、アイツは重いから途中で「自分で走レ!!」っつって蹴飛ばしといた。「ねーチャん、ひどい…。蜘蛛ヒイキ…。」って言ってたけどしゃーねーだろ。ニコ、走るの遅いし。
月が隠れてっから全然周りが見えねぇ。はっきしいって、勘で走ってる。何回か木の根に足を捕られ、転んだ。この暗闇だ。見つけられっこねぇ。あのガオロっつーウルフ、オレ達をなめすぎだろ…。
「……あ、あの、リンちゃん。少し、いいですか?」
脇に抱えてたニコが正気に戻った。このオドオドしてる感じ、うん。いつものニコだな。
「あ、あのですね、その…。狼さんって、目が悪いらしいんですよ。」
オドオドとしたニコの口から出たのはそんな言葉だった。へ~、そーなのか。初めて知ったわ。
「で、でもですね。そのかわり、スッゴクお鼻がいいんです。」
「へ~。」「ぞーなのカ?」
ニコの豆知識が続く。そーいやウルフって、背後にいてもオレ等の事気付く事あったな。もしかしてソレは“目”じゃなくて“それ以外を使っていた”からか?なるほど、納得だ。けど、ソレが今とどー関係あるんだ?
「そ、それでですね、あの、今僕達って、集落出てきたばかりですよね。」
「そーダナ。」
「アソコ、凄く臭くなってましたよね。」
「ニコのせいデな。」
「僕達にも、少し、匂い着いちゃってますよね。」
「(スンスン)……ほんとダ。糞くせぇ…。」
「だから、その…。
彼、追いかけてこれると思うんです。
……“ウルフ”だから。」
「「……。」」
オレはゴブザザと顔を見合わせた。んと、つまり、ニコが言うことが本当なら、オレ等……逃げられなくねえか?
走っていた足が止まる。バー様のとこまで、まだかなり距離がある。ウルフは速い。ただ走るだけじゃ逃げきれねぇ。逃げきるには巻くしかねぇ。けど、今のオレ達はかなり匂う。近くにいるゴブザザの匂いが届くって事はそういう事だ。んでもってウルフは鼻が利く。
((どうしよう……。))
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
視点:ガオロ
(ああ、そうだ。たしかコレって“オニゴッコ”って言うんだっけか?)
数を数えながら思い出した。そうだ。たしか“オニゴッコ”って名前だった。オニゴッコ。オニゴッコ…。へへへ♪オニゴッコかぁ…♪
僕は3匹が消えた方向を見つめながら、暗闇にふと思い出す。僕が変われたあの日の事を…。
◆◆◆
(オナカ…スイタ…。)
オレは群の弱者だった。気が付けば父も母もいなかった。独りぼっちだった。群では常に最後尾を歩き、飯も一番最後。腹はいつも空いていた。
ウルフは力が強い者が絶対だ。だから弱いオレは誰からも見られる事なく、ひっそりと、誰の邪魔にならないように生きていた。
そんなある日だった。
(……あれ?)
いつも下を向いていた。だから顔を上げた時、誰もいなくなっている事に気がつけなかった。
(おいて、いかれた。)
ウルフは強者こそが全て。だから、弱者の事なんて誰も気にしなかった。きっと今だって、オレがいなくなった事に気づいてるヤツはいないだろう。
(つか…れた。)
歩くのを辞め、倒れる。
ドサリと、軽い音が響く。
(しぬ…のかな?)
空腹で何も考えられない。
重くなった目蓋に従い、オレは目を閉じた。
……スン
不意に、オレの鼻がナニカの匂いを嗅いだ。それはどこか脂の載った肉のように甘くて、香ばしくて、なのに朝の蕾についた露のような爽やかな香り。
(……。)
オレは力の入らない脚を起こし、香りの方へフラフラと歩いていった。
(なに?これ?)
香りの元は地面に埋った石だった。
薄い紫に針が何本も入っているような鋭い光を乱射する綺麗な石だった。夜明けの陽を映す空のような美しい紫。
(……ゴクッ。)
“たべたい”
そう思った。
(きっとあの石は匂いのように甘いのだろう。歯で砕いたら粉々になって消えてしまいそうだから丸呑みしよう。少し大きめだから喉を通る時大変そうだ。けど美味しそう。あんなに美味しそうな匂いなんだからおいしいんだろうな~。おいしいにきまってる。そうだおいしいんだ。あれはおいしいんだ。そう、あれはおいしいに、おいしいに、おいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいにおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしい――。)
キラキラ光る。まるでオレに『食べて。』って言ってるみたいだった。目が離せない。鼻に絡みつく甘ったるい匂い。逆らえない。
オレは誘われるように、ソレを食べた。
ぱくん。
あの時、感じた興奮をオレは忘れない。
ソレを食べた時の幸福感を。全てが満たされ、癒され、まるで王様になったかのような全能。絶対的な至福。何者にも穢す事の出来ぬ天上の栄光!
そして、全てが崩されたかのような、身体全てを叩き壊し、磨り潰し、破壊尽くし!かき集め、練り直し、焼き尽くし、新たに造り直されたの如く出来た僕という新しい僕!!
目が覚めた気持ちだった。
目は澄み渡り、鼻はどんなに遠くのモノさえもかぎ分け、身体は軽く、1日どころかずーっと走れるんじゃないか思う程漲る力!!あの甘い香りは僕に溶け込んだのか、僕自身があの甘い香りの持ち主になっていた。
まさにそう。僕はあの時生まれ変わったのだ!!
◆◆◆
それからは不思議な程全てが上手くいった。力を持った僕は近くにいた別のウルフの群を襲い、ソイツ等の新しいボスになった。その時いたのがグオルだ。アイツはおっきくて強かったけど、僕の敵ではなかった。新しい僕には、たくさんの敵が出来たけど、皆みんな僕より弱かった。みんなみんな食べてあげた。
そんなある日、僕は僕と同じ匂いの奴に逢った。ソイツは珍しく強かったけど、なんとか勝てた。ソイツはあの石のように甘かった。
僕は感激した!!
また、あの味が味わえるのだと!!
僕は下僕達に命令した!!「オレと同じ匂いのヤツを連れてこい」って!!そして命令した奴等が帰ってこなかったこの“ゴールの森”。ナニカがあるって勘がいった。黄色い蝶やゴブリンとかを食べながら探した。そして見つけた!!ソイツはグオルを殺したヤツだった!!やっとみつけた。やっと見つけた僕のご飯!!なぜかオニゴッコを始めたけど、遊んだ後のご飯って美味しいから僕大好き!!
「じゅーきゅー♪にじゅー♪」
数を数え終え、僕は3匹が消えた方向に足を向ける。この集落の匂いは強烈だ。この匂いはあの3匹にもどっぷり着いている。目に見えない道が森に続いている。
(へへへ♪スタートォー!)
地を蹴り、森に入る。
さぁ、楽しい愉しいオニゴッコの始まりだ!!
あれ?そういえば僕、こんなアソビ誰から教わったんだっけ?
クイーンバタフライやゴブゴ喰ったのはコイツです。
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