おはなしあいです
「あはははぁ。何言ってるんですか~お師匠様~♪僕はどこをどうとってもちょっぴり世間ずれした只の子蜘蛛ですよ~♪」
『うふふふふ、どこのどの口がそんな頭の沸いた事を言いますの~?誰から見ても少し世間ずれ…どころか完璧に色々可笑しな子の癖に~♪』
「え~?そうですか~?少しずれたくらいじゃないですか~?」
ウフフフ~アハハハ~
かれこれ30分は経ちましたかね?
ギリギリと首モドキを絞められながら表面上穏やかなO☆HA☆NA☆SI☆A☆Iが続いてます。ちなみに首モドキは絞められてても苦しくないので問題ありません。何故ならカトレアさんが首モドキに手をかけた時からこう、グッと首モドキのあたりの殻(?)に魔力を入れて硬くしてます。なので蔓の食い込みも手の絞めつけも殻が防いでくれているので無問題です。
『……少し、疲れましたわ。』
カトレアさんが首モドキから手を離し、ぷらぷらさせます。ふっ、どうやらこの勝負は僕の勝ちみたいですね。
全く仕事をしない表情筋ですが、僕がドヤ顔をしたのを感じとったのでしょう。物凄いジト目で僕を睨むカトレアさん。
…残念ですが今までリンちゃんや女王さん、あと狼さん達に色々な目にあわされてきた僕には屁のカッパです。ちっとも怖くありません。
『……えいっ!』
くるん
「ふぇ?」
睨むのが効かないと知ったカトレアさんは、今度は首モドキを絞めてなかった方の手で僕を横に回し始めました。
グオン。と、世界が回り、勢いがなくなったら反動で反対回りに回ります。
『えいっ!えいっ!えいっ!!』
くるんくるんくるん
もうヤケになったのか、若干涙目になった彼女はくるんぐるんくるんぐるん僕を回します。
「えっ?ちょっ!?これ駄目!!駄目です!!や、止めてくださーーい!!」
くるんぐるんくるんぐるん回る廻る。DVDの流れ星をひたすら早送りしたり再生しているような世界に目が回ります。……うぷ。……ヤバいです。はく。吐くです。首モドキの奥から臭いのが来るです…。きてるです…。
『えいっ!えいっ!!え~~い!!』
グオングオングオンッ
絶体ヤケおこしてます。カトレアさんは僕の言葉に耳を貸さず力の限り、くるんぐるんからグオングオンに効果音が代わるくらい思いッ切り回します。
……ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!はく。吐きます吐きます!!本当に吐きますーーーー!!
廻る廻る。グルグル廻る。
昇る激臭。だだ下がりする気分。
ミンチのお肉って、こんな感じなのですかね?……知りたく、ありませんでした。
全てが混ざり、ゴチャゴチャのグチャグチャになり、そして、
プツン
流石に、切れました。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…』
ガタガタガタガタ
思いっきり後ろに下がり、ガタガタガタガタとどこかのR-18映画の虐待を受けた幼児のように怯えた表情で僕を見るカトレアさん。もし、彼女が生身の生物なら腰が笑い、お漏らししていたのではないか?と思うくらいガタガタ震えています。
けど、はっきり言ってそんな彼女に構う暇は僕にはありません。何故なら…
『おえ。……おえぇぇ。』
現在、気持ち悪さ最大。他人気にする余裕0。逆流してきた中のモノを飲み込む作業で精一杯だからです…。
…特に知りたく無かったのですが、どうやら蜘蛛体は“吐く”事が出来ないみたいです…。口に入っているモノは兎も角、食道を流れていったモノは吐く事が出来ないみたいです…。前世で一度、拒食症寸前まで弱り食べても食べてもすぐに吐き出すという経験をした僕が断言します。間違いありません。……うえぇぇぇしたいです。飲み込む事しか出来ないなんて、どんな鬼畜使用なんですか?
「うっ!!……ぷぅ。」
『ヒィッ!?』
ガタァッ
……何故、彼女がこんなに怯えているかというと、使っちゃったからです。≪威圧≫を…。
……うん。そうです。あの≪威圧≫です。あのリンちゃんから“使うな!!”って念を推されてた≪威圧≫さんです…。
回すのを辞めてもらいたい一心で兎に角魔力を込めて発動させちゃいました…。その結果がこれです…。
「……みず。」
『ヒィィ!?は、はい。はいですわぁ!!』
ヒゥンとカトレアさんが消えます。そんなに怯えなくてもいいのに…と、思わないでもないですが、気分が悪くなったせいか今の僕はこの世界に転生からずっと使っていた少し甲高い声ではなく、まるで前世の時のようなとても低い声になっています…。この声がまたけっこう低くて怖い声で、前に宙ちゃんが鼻血出した話を覚えてますか?あれ、この声が原因だったんです。どれくらい怖いかというとそうですねえ…、R-20G映画の敵役のヤバそうな組織でトップを演じる50代男性役者のがまだ可愛く聞こえる声。と、前に後藤さんに言われました。……そんなに僕の声は老けているのですかねぇ?とにかく低いです…。
『あ、あの、ももも持ってきましたわ…。』
再び現れたカトレアさんの手には何処かで見たような…あ、あれ、前に鳥さん達が魔法やら魔力を注いでいた木の実です。
『こ、これ、ほほほほんとうは、年始めのお祝いで振る舞うお酒にすすすするのですが、まだ、中の魔力が足らないので、お酒にななならないのですわ。おおお水は、用意出来ませんが、ここれも、飲む事が、ででででできますわ…。』
ガタガタと震える手に葉を生やし、木の実を切断します。中には水がたぽんたぽん。ああ、あれ、お酒にするための儀式だったのですね…。
蔓で運ばれてきた木の実を受け取り、くいっとがぶ飲みします。
ぶぅーーーーー!!
そして、今度こそ吐きました。
(あっっっっま!?あん………ま!?うぇ!!ペッ…ペッ…!!)
あまりの甘さに声が出ません。
飲んだ木の実の水は兎に角甘く、甘露煮に使った汁に更に砂糖や蜂蜜、あとオクラ?なんか口の中で粘つくようなドロドロネッチョリしたモノを“これ以上は溶かせない”ってくらい限界まで入れて混ぜたような味です!!…うぇ、なんか、苦いのもきた…。
「あっっっっま!!あんま!!」
『あ、甘い?(ぺろっ)……ま、まだ、そそそんなに甘くはありませんわよ?』
僕が投げ捨てた木の実の中に僅かに残っていた水を嘗め、困惑するカトレアさん。
やっぱり、この体になって味覚がかわったんですかね?兎に角まずい。木の実水が不味いです。
宙で脚をバタつかせのたうち廻る僕、そんな僕の一挙一動に怯えるカトレアさん。
なんとも言えないカオスな空間になったここの空気を切り裂いたのは、リンちゃんと共に修行に出掛けた筈のライゴウ先生でした。
『た、大変である!一大事である!!リンが、リンが
リンがゴブリンどもに拐われた!!』
最悪の、報せと共に…。
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