ふおんぶんしです。
(*)の補足説明載せました。
「行ってクるゼ。」
『行ってくるのである。』
「『いってらっしゃ~い。』」
リンちゃんと先生(お師匠様って呼んだら被ってややこしいから違う名前で呼べって言われました。)が木から離れて行きます。ご飯の調達ついでに実践訓練してくるそうです。
「オシ!行くゾ。」
『アッ!?待つのである!!こっちから草がずれる音がするのである!!こっちに行くのである!!』
「アッ?コッチ?ナに言ってンダ?アッチにいるに決まってっンダろ?」
『いーや!!こっちである!!』
「チゲーよ!!アッチ!!」
ギャイギャイクケークケ
……言っておきますが、リンちゃんは≪テレパス≫を覚えていません。先生も同じです。鳥の言葉話せないし、ゴブリン語も分からないって言ってました。なんで一人と一匹は会話成立しているのでしょうか…。流石異世界です…。それで片付けましょ…、うん。
「さてと、お師匠様、例のモノは大丈夫ですか?」
『勿論。完璧ですわ。』
ここ数日、リンちゃんには申し訳ありませんが修行を交換してもらっていたのには訳があります。
「それでは早速、
リンちゃんの下着作りますよーーーー!!」
そう。修行交換の理由はリンちゃんの下着作りの為です!とりあえずリンちゃんにはチェニックを作り上半身すっぽんぽんを封印しました。が、その下、その、つまり、え~と…それ以外は今だ何も履いてない状態なんです。
あっ!そこっ!変な想像しないでください!!サイズが分からなかったんです!!それだけなんです!!変な意味は何も無いですからね!!
……こほん。え~、と言うわけで、リンちゃんがマイヤーおばさんに会いに行っている間に(*)お師匠様に頼んでちょっと代えてもらいました。ほら、男より女同士の方がいいでしょ?そういうことは?
まあそういうわけで、さりげな~くリンちゃんの腰周りや肩周り、あと(一応念のため)胸囲も調べてもらい、先生にリンちゃんを外で実践練習させてみてはどうですか?と囁き、居なくなっている隙にお師匠様と一緒に下着作りです!!
『おー!!ですわ!!
けどその前に。』
ひょいっ
「へっ?」
お師匠様は僕の頭と胴体の間、細い首(で、いいんですかね?)を蔓で掴み、スススーと何処かに移動します。僕も一緒です。
そして、1本の突き出た枝の先。そこに僕を吊るします。……あの~お師匠様?ここ、凄く見晴らしがいいのですが、下にも上にも左右にも他の枝がなくて凄く怖いのですが。
『さて、ニコさん。ここはとても景色が素晴らしいと思いませんか?』
吊るされた僕の目線に合わせるように、態々枝の下から生えたお師匠様が大変穏やかな笑みを浮かべ問います。
……うん。先程もいった通り、ここはとても見晴らしがいいです。下に広がる木々も遠くにそびえるお山も雲1つない蒼穹の空もよ~く見えます。……あ、先生見っけ。もうあんな遠くにいるんですね…。
『ええ。そうでしょう。豊かな土と清らかな水、吹き抜ける風と暖かな気候に育てられた木々達の元で鳥達が謳い草花が咲き乱れる美しい森。ここは私達、樹にとってまさに天地。楽園とも云うべき場所です。……知っていましたか?実は数万年前、ここが荒野だったことを?昔、清らかな水が穢れていた事を。昔、豊かな土が何も生まぬ乾き果てた地であったことを。風も陽も容赦なく吹き荒れ照りつける命が削られ、誰もを拒絶する不毛の大地だったことを……。』
突然始まったこの森の昔話。……へ~。ここ昔は荒野だったんですか~。どこもかしこも木と草に覆われた今しか知らない僕にとって中々興味深い話です。……けど、それと吊るされてるのは関係あるのですか?
『そして、ある時。1本の木が生えました。木が育ち、実が生り、落ち、新たな命が産まれました。』
『それは小さな命でした。時に枯れ、時に倒れ、時に焼けました。中には芽生えぬモノもありました…。』
『けど、少しずつ。少しずつ木は広まっていきました。そしてその下に草が生え、それを食べる虫が集まり、鳥が、動物が、生き物達が次々と集まってきました。』
『いつしか風は穏やかになり、陽も柔らかく、水は透き通る道が出来ていました。木々に関しては…語らなくても判りますわね?』
朗々と語られる昔むかしのもっと昔のとおーい話。お師匠様の、いえ、カトレアさんの口から語られるこの森の誕生の話。悠久と言っても過言ではないでしょうね。この森の広大さは、荘厳たる様は、言葉を幾ら重ねても収まらない…いえ、収めるなんて烏滸がましいとさえ想わせる美しさです。
いつしか目を閉じ、高らかに、まるで戯曲の詩人のように吟うカトレアさん。彼女は、その歴史を何時から見てきたのでしょうか…。
『そして、その原初1本のこそがラオヤークなのですわ!!彼がいたからこそこの森が生まれました!!この美しい景色が出来たのも、土が豊かになったのも、水が清らかになったのも、風が穏やかになったのも、生き物達が次の命を育む事が出来るようになったのも、全て彼が、主の樹たる彼がいたからこそ出来た偉業なのですわ!!私はこの森を愛しております。この森の土も水も風も陽の光も生きる全ての生き物は私の子も同然!!子を愛せぬ親がどこにおりましょう!!
だからこそ問います。ニコ、貴方はなに?』
そう言って、再び目を開いたカトレアさんの目の中には、剣呑な、どこか懐かしい鋭い光が宿っていました。……なるほど、そう言う事でしたか…。
「えっ?えっと、なに言っているのですかお師匠様~。僕は只のスパイダーですよ~?」
僕は少しとぼけた風に答えます。けれどカトレアさんは笑みを崩さぬまま。これは信じてもらえてないですね。
『嘘おっしゃい。普通のスパイダーはそんな馬鹿げた魔力なんて所持しておりませんわ。そもそもにして、貴方は今まで少しも隠そうとせずにいたくせに、今から隠しおおせるなんて思わないでくださいませ。』
……おうふ。僕、そんなに目立ってましたか?
『貴方が普通ではない理由は3つあります。まずはその馬鹿げた魔力。貴方は魔力をとても上手く隠しておりますわ。この私ですら感じる事が難しい程に。けど、それをバンバンバンバン使っては意味がありません。知ってます?貴方が使っていた≪フレイムブレイク≫。あれ、元々の所有者であるリンですら10発撃てないのですよ?』
『その2に、≪スキル≫。貴方は≪スキル≫が多すぎるのですよ。普通ならば≪スキル≫を覚えるのはかなり骨が折れる大仕事。それを貴方はこの短期間にドンドン覚えて…。今、何個新しい≪スキル≫があるか覚えてます?』
『3、それは“知識”ですわ。まず、私は木々を通して大体の獣達魔物達を知っています。その中で、≪制作系スキル≫を持つ者はおりませんわ。あとは貴方が先日口にした≪ステータス≫という≪スキル≫。これは長年生きた私にも、最も永くを生きてきたラオヤークでも聴いたことのない≪スキル≫でしたわ。』
すっすっ。まるで火曜○スペンスの主人公のように僕に迫るカトレアさん。既にその顔からは表情が消え、鋭い光のみが残っています。
『ですから答えなさいニコ。貴方はなにで、なんなのかを。何故産まれながらにして強大な魔力を持ち、多数の≪スキル≫を覚え、私達を遥かに上回る知識を持っているのかを。勿論、混合変異種では説明つきませんわよ?……答えなければ、私は貴方を――』
この森の不穏分子として処理します。
するりと、僕の首(仮)に手を伸ばし、ギュッと掴む彼女の言葉に、嘘はないのでしょう。さっきから掴まれた首(仮)がギリギリと音をたて苦しいです。
さて、どうやってきりぬけましようか…。
実は(ある意味?)主の樹大好きっ木だったんです彼女。
誤字・脱字を見つけましたらご報告ください。
(*)マイヤーおばさんに会う。
ドイツの隠語で御手洗いに行く事。




