ある樹婦人と隼の話。
本日2話更新。
2話目。
~視点:カトレア~
その日の夜
『『Zzzzz~……』』
本日も疲れたのでしょう。
最近私達に弟子入りした特異種の小鬼族と混合変異種の子蜘蛛の2匹は仲良く一緒の寝床でよく寝ていますわ。
その幼い寝顔と仲睦まじい様子に、彼等の中に恐ろしいモノが潜んでいると誰が想像できるのでしょうか…。
バサッバサッ
『どうした。カトレアよ。…そんなにニコの修練が上手くいっていないのか?』
降りてきたのは小鬼の方、リンに戦闘を教え始めたこの子達のもう1人の師匠、ライズファルコのライゴウでした。
『それにしてもリン…であったか?この小鬼は本当に筋が良い。天才である。少し前まで頼りなかったのが嘘のようである。ニコは見ている分には愉快な奴であるが、実際に相手にして楽しいのはリンであるな。』
ムフー。と鼻息を荒くし、胸を膨らませ彼は語りました。
彼がここまで気に入るのはとても珍しい事ですわ。私には分かりませんが、どうやらリンはとても闘いのセンスがよろしいのでしょうね。でなければこの森一番の戦闘狂がここまで気に入る筈ありませんもの。
『とても気に入っていますのね。』
『ウム!!』
まったく…貴方、鳥なのにほんと感情が分かりやすい方ですわね。背景に花が乱舞していますわよ?
でも、彼の気持ちも分からなくはありませんわ。
この子達が私の元で≪スキル≫を習い初めて判ったのですが、ニコは魔法使い型でリンは攻撃特化の戦士型の子達であることがわかりました。私はどちらかと言うと魔法使い型に当てはまります。
リンが≪スキル≫の扱いに慣れてきた頃、私は次のステップに進ませる為になんだかんだでずっと傍観していた彼に頼んだのですが、戦闘至上主義の彼はひたすらバトル。バトルバトルを繰り返し、そのうちリンが根をあげてしまうのではないでしょうか?とおもっていたのですが、あの子は中々に根性があったらしく、弱音吐くどころか寧ろ暴言で対応。彼の癖や攻撃のパターンをよく観察し、今日は彼の左翼に一撃(かすり傷程度でしたが)を入れられる程に成長していましたわ。
私はあまり戦闘をしないのでよく分かりませんが、それでも彼に一撃を入れられたあの子が天才なのだろうという事は何となくわかりましたわ。
『ふふ。それはよかったですわ。』
『ウム!まさかこの期に及んで、このような楽しみが出来るとは思わなかった!!……してカトレアよ、何を思い悩んでいたのである?ニコに何かあったのであるか?申してみよ、力になるぞ?』
折角遠ざけた話を戻されてしまいました。はあ、本当に彼は敏いですわね。仕方ありません、私達だけで悩むよりもう1羽くらい別の視点で考えられる方が増えてもよろしいでしょう。その方が何かしら出るかも知れませんし…。
『……はぁ。バレてしまいましたか。その通り、何か在りましたわ。実は彼、
底が見えませんの。』
『……は?底が見えない?』
頭に?を浮かべ、まるで鳩のような顔をする彼。詳しく説明する為に、再び口を開きます。
『ええ。今日を始め、私達がずっと≪魔法系スキル≫を練習していたのは覚えていますか?』
『当たり前である!確か、≪グロウ≫であったか?ずっと種を花にしていたな。それがどうしたのである?』
『ええ。その通り私達はずっと≪グロウ≫で練習していました。そして、それが問題なのですわ。』
『……は?』
……どうやら、彼は気づかなかったようですわね。どこが問題なのか?と頭を捻っていますもの…。解りやすく説明してあげますか…。
『はぁ、ねぇ?ライゴウ?貴方、≪ショック≫を何回使えますか?』
『は?≪ショック≫であるか?』
『ええ。そうです。貴方が得意な≪ショック≫ですわ。威力を最低にしてもいいので、何回使えます?』
『そうであるな…。大体………20発ぐらいであるか?』
それがどうしたのである?
そう聞く彼に、私は教えます。
『…今日、あの子が≪グロウ≫を使った回数を数えましたの。
彼は今日、≪グロウ≫を297回使いましたわ。』
『……え?』
―――――彼の異常性を。
『ま、待つのである。待つのである!はぁ!?297回!?≪グロウ≫はそんなに小コストの魔法なのであるか!?でなければ、でなければ…』
――夜までピンピン動けている筈が無い!!
ライゴウが声を荒くし、私に問い詰めます。彼の脳内には寝る前、リンと楽しそうに談話しながら糸で何かを編んでいたニコの姿が映っているのでしょうね。
そう。≪スキル≫は魔力を消費し発動するモノ。人それぞれでありますが、魔力には限度があります。
訓練に使った≪グロウ≫は≪地魔法≫の中でも得に魔力を使う≪スキル≫。ニコの種族で考えれば本来、十数回で 魔力が尽きる筈でした。
――だからこそ、異常。
魔力とは生命力。魔力を使えば使う程生命力を減らすということ。一晩寝ればある程度は回復するとはいえ、完全に回復することはありません。食事等でもある程度は回復出来ますが、それでも魔力回復効果を持つ食料以外ではそれは微々たる量。魔力が尽きるのを少し遅らせる程度ですわ。
それ故に、ニコの魔力量は異常なのです。
本来の種族、蟲族の魔力量はそれほど多くはありません。数発から十数発使えればいい方でしょう。
しかし、彼が今日≪グロウ≫を 使ったのは約300回!!これは通常ならば魔力が涸れ果て、死に到っても可笑しくない回数ですわ。
おまけに彼は≪魔法倍増体質≫持ち。通常より多くの魔力を浪費しているのにも関わらずなのです。
本来持つ筈の無い≪魔法≫、制御不能のability、そしてあり得ない量の魔力。
混合変異種であることも含め、あり得ない程の才能。
彼は間違いなく、特異種以上の災厄ですわ。
『……今、ラオヤークと共に色々と調べていますわ。』
『……わかった。我輩もそれとなく奴に目を光らせておこう。』
世界が、変わろうしている。
私達は月夜の下、静かに蠢く嵐の気配を感じました…。
ニコが異常なのは魔法だけじゃなかったよ!!の回でした。
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