いへんです。
『ど、…どうなってんだよ………コレ?!』
『さぁ…?何かいけないんですか?』
森の中、辺り一面の黄色の世界で、リンちゃんが震えながら呟いた一言。
何故彼は顔を紫にしているのでしょう?僕には凄い感動的な場面にしか思えませんけど…?
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数十分前
アレから、僕とリンちゃんは森に散策に出ました。雨粒で濡れた木々や草は青々しく輝き、時折吹く風が葉を揺らすとまるで宝石が降ってくるかのように雨粒を落とします。風は森の青臭さを拭うかのように、優しく、されど弱すぎ無い強さで木々の間をすり抜けて行きます。日差しもポカポカと暖か。あぁ。今はもう初夏ですかねぇ?
そんな緑の宝石箱のような森の中、僕達はアルモノを探していました。何かって?クリ芋さん探しです。
いや~、実は今日ストックが無くなっちゃったんですよ。ホントにギリギリです。神様、晴れにしてくれてありがとうございます。
『ナアナア。ホントにホントに、アレ“キャタスト”なんだよな?』
『はい。ホントにホント。大真面目にアレは“キャタスト”さんです。も~何回言ったら信じてくれるんですか~?』
さっきからリンちゃんが何回も確認にきます。というのも、リンちゃんはあそこまで美味しい物を食べたことが無いそうです。だから、今まで食べていたアレがよく食べていた“キャタスト”だと信じられないのだそうです(ゴブリンに限らず、色んな動物の主食らしいです)。
あ、そうそう。“キャタスト”とはクリ芋さんの正式な名前だそうです。僕的にはクリ芋さんのが呼びやすいので、このまま“ご飯”って呼びますけどね。
『それにしても、見つかりませんね~?ご飯?』
『なんか読みが変な気がするが…。だが、確かに居ねぇな。どなってンダ?』
リンちゃんとお喋りしながらとはいえ、かれこれ20分くらい歩いてます。あれ程居た筈のクリ芋さんがまだ一匹も見つかりません。何故でしょうか?
『もしかして…全滅ですか……?』
『いや、ソレはネーだろ。もし、全滅でも死骸とか喰い残しとかあるはずだろガ。』
うーん。確かに。
リンちゃんの言う通りです。絶滅でも全滅でも、死骸とか食べ残しとかの何らかの痕跡が在る筈です。
雨上がりとはいえ、あれ程居たクリ芋さんの痕跡全て流し消す事は出来ないと思いますし…、う~む、謎が深まるばかりです……。
『とりあえず、もう少し探しましょう。もしかしたら、偶々見つからなかっただけかも知れませんし。』
『ダナ。』
そう言って、再び移動を始めます。
あ、因みにリンちゃんから貰った角は下半身の上にくっつけました。流石に持ったまま歩くのは蜘蛛の体だと無理でした。いや~、粘着糸使えてよかったです。しっかり固定出来ました。
暫く歩いて行くと、とても大きい木が見えました。
『わぁ。リンちゃんリンちゃん!あの木、すっっっごくおっきぃです!なんの木なんですか!!』
『あ~。アレか?ありゃ“主ノ樹”様ダナ。』
おお~、主ノ樹様と言うのですね~。
その樹は他の木よりも頭3~4つ分高く、遠くからでもその太い枝や大きい葉っぱ、堂々とした幹が見えます。近くに行ったらどれ程大きいのでしょうか?
まあ簡単に言うと、前世の時に視た某世界の謎を探検する番組に出てきた気になる木にそっくりです。
『集落のジジィのジーさんのまたジーさんがまだ産まれる前から有ったらしいゼ。』
ナント!ゴブリンの平均寿命は知りませんが、お爺さんのその又お爺さん云々ということは凄く昔から在るって事ですね!!
うわぁ~凄いです!前世じゃ約17年しか生きられなかった僕じゃ想像出来ません!!今世は長生きしたいので、近くに行ったらその生命力を分けて貰えますかね?
……て、アレ?今、リンちゃんなんて言いました?しゅうらく?
『ねぇリンちゃん?今なんt『!! オ、オイニコ!!アレ!!アレ見ロ!?』えっ?アレ?』
僕の言葉を遮り、リンちゃんは主の樹様の方向を指します。その指の先には…
『えっ?アレ!?クリ芋さん!!』
探していたクリ芋さんがいました!
しかもただのクリ芋さんではありません!僕が今まで見たどのクリ芋さんよりも大きいのです!下手したら僕より大きいかも…。
更に驚くのはその数です。
今まで、彼等は最大で5~6匹程度で群ている所は見た事がました。しかし、基本的に彼等は単独行動が主流なので大体1匹が普通です。
それなのに今、僕達の目の前には数えきれない程のクリ芋さん達が主の樹様の方へ移動しています…。明らかにおかしいです…。
『り、リンちゃん…コレ……。』
『おいニコ。わりィガ、付き合ってクレ。嫌なカンジがする……。』
こうして、僕達はクリ芋さんを追い、主の樹様の麓で先程の光景に出逢いました。
後に、僕の今世を大きく変える事になるとも知らずに……




