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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第三章 KJK編

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KJK.魔法少女にあこがれない 2

3ヶ月半のご無沙汰。

皆様いかがお過ごしでしょうか。



 颯爽と私を助けに現れた弱男怪人とTS怪人は最初こそ善戦していたが、現れた敵の増援が多すぎた。

 5対3はなんとかなっても10対3という数の差はどうにも……いや、実は5対3という構図だって、TS怪人が2人無効化していたから実質的には3対3で、数の差なんてない状態だったのだ。

 幸いにもというべきか、もうこのあたりには星野達に餌食にされそうな怪人たちはいない。だからもう撤退してしまってもいいのだけど、嬉しそうに踏まれている弱男怪人と、魔法少女をTSさせて喜んでいたところを増援に不意打ちされて気絶したTS怪人を置いて帰るわけには――いや、弱男は嬉しそうだし放っておいてもいいのか?


「さあ!もっと踏め!踏めええええ!!」


 やっぱり放っておこうかな。

 弱男怪人は放って置くとして、TS怪人だけ回収して――


「――っとおおおおおっ!?」

 

 私の顔のすぐ横を、星野の放った魔法が通り過ぎていく。


「あ、ああああ、あっぶねえだろうが!!」

「チッ、外した」


 魔法少女にあるまじき表情で舌打ちをする星野。いや、魔法少女にあるべき顔とか知らんけど、とにかく今の星野は違うだろうという表情だ。

 

「まあいいや。10対1だしもう時間の問題でしょ。ほら、あんたらそんな変態踏んでないで、みんなで敵幹部潰すよ」


 星野がそう言うと、弱男怪人を踏んでいた3人は足を止めて、他の6人と共に距離を取りながらジリジリと私を取り囲むように移動する。

 一点突破をして1人で逃げるなら多分できなくはない。まがりなりにも魔法少女にあこがれている連中なら弱男とTSを殺してしまうようなことはないだろう。

 だから、見捨てて逃げてしまってもいい、はず、だ。

 私が助けを呼んだわけじゃない。

 勝手に助けに来て勝手にやられただけ。

 私が黒浦さんの両親を助けようとしたのと同じで、勝手にそうしただけだ。

 

「なんで勝手に来るかな、ほんと……」


 よりにもよって、初見殺しでしかないTS怪人と、弱点以外が打たれ強いだけでとくに何ができるわけでもない弱男怪人。

 助けに来るならせめて、田中先輩だろうがよ。田中先輩なら勝手に星野あたりを背中に乗っけて暴れまわってくれただろうに、なんで弱いくせに勝手に来て勝手にやられて、勝手に私に葛藤を押し付けてるんだよ。

 私がお前ら見捨てて逃げて、その見せしめとか八つ当たりのためにさっきの星野の魔法を撃ち込まれたらどうすんだよ。


「……ああ、本当に腹が立つ」

「あ?何がだよ」

「自分の力だけで部下を守れない自分にだよ」

「はぁ……?」


 私の力は、エリカ先輩がくれたこの力だけでいい。

 それでよかった。

 

「よかったんだけどなぁ」


 『そう言えば、なぜ舞雪は魔法少女にならんのじゃ?』


 華蓮の質問をはぐらかしたのは、エリカ先輩がくれた力だけでいいと思っていたから。


 『悪の怪人が友達のために正義に目覚めるとか、なんかこう、いいシチュエーションだと思うのよ』


 別にこいつらは友達じゃないけれど。

 

「――星野キララぁっ!」

「な、なんであんたが私のフルネーム知ってんのよ!」

「わ、私は白縫舞雪!あんたにいじめられた白縫舞雪だ!!」


 私が変身を解いて見せると、星野の口元がニイっといやらしく釣り上がる。


「あはははははは!だったらやっぱり楽勝だ!負け犬敵幹部とかあんたらしいお似合いの役回りだよ、白縫ぃ――!?」


 星野が言い終わらないうちに私は再び変身し、思い切り握りしめた右手を叩きつけるように全体重を乗せた一撃を星野にお見舞いする。

 油断していた星野は二回ほどバウンドして、それから数メートル転がって止まって起き上がるが、立ち上がることはできないらしく、座ったまま私を睨みつけている。


「戦闘中にべらべらくっちゃべってんじゃねえよ三下共ぉっ!! まさか自分が魔法少女になれたから必ず勝つなんて思ってたんじゃねえだろうなぁっ!?」


 戦技研の判定は”魔法少女”。

 ただ、今の私の姿は魔法少女にしては黒すぎる。

 メア様に負けず劣らず腹も胸も太ももも露出が多いし蝙蝠のような羽根も生えていて、とても魔法少女などと言えるような姿ではない。

 

 「こっからは魔法少女対魔法少女だ!てめえら全員ぶっ倒してやるから覚悟しやがれ!」

 「ふ、ふざけんじゃないわよ!あんたのどこが魔法少女だってのよ!」


 星野の横にいた魔法少女がそう言いながら目配せをすると、最大限の警戒をしながら残りの九人が私を取り囲む。


「どっからどう見ても魔法少女だろうが!こちとらてめえら三下野良魔法少女と違って戦技研お墨付きの魔法少女様だぞ!」


 私が大見得を切って見せると、私を囲んでいた九人が少したじろいだように数歩下がり、包囲網が少し広がる。

 そして9人が口々に「ヤバくない?」だとか「公式魔法少女だとか聞いてないって」とか「星野のせいで」とかヒソヒソやりだす。

 ハッ!これだから人間強度の低い一般女子様はよぉ。


「嘘に決まってんでしょ!そんなのが魔法少女なわけない!そんな禍々しい魔法少女がいてたまるか!」


 立ち上がった星野がそう一喝すると、9人も口々にそれに同意しながら構えを取る。

 禍々しい、ね。わかっているよ。

 そんなの私が一番わかっている。


「だいたい、本当に魔法少女だったとしても、喋れないようにしてやればいいのよ。それで私らの将来は安泰よ!」

「しゃ、喋れないようにって……?」

「こんな奴、最悪殺したって誰も悲しみゃしないんだから、殺してそのへんに埋めてやりゃいい!」

「さ、流石にそれはやり過――」


 言いかけた魔法少女を星野が殴りつけ、よろめいたところを髪の毛を掴んで無理やり立たせる。


「うるせえよ。お前から埋めてやろうか?」

「ひぃ……」

「わかったら口ごたえするんじゃねえよ」


 そう言って突き飛ばすように掴んでいた髪の毛を離すと、星野はこっちを睨みつけながら口を開く。


「てめえが――てめえみたいな脇役が、私の上を行こうとするんじゃねえよ!!私の邪魔をするんじゃねえよ!! お前は殺す、絶対に殺してやるからなぁ白縫! すぐには殺さねえよ、みんなでボコって、お前の尊厳という尊厳を破壊し尽くしてから殺してやる。お前みたいな怪人もどきの偽物が本物の魔法少女に楯突いた報いだ!後悔しながら死んでいけやぁ!」

 

 公式だとか野良だとか、そういう違いはあっても、渾身の一撃で倒しきれなかった以上、星野達と私の間にそれほどの差はない。

 正直、不意打ちで星野を倒して残りの9人の戦意を削ぐつもりだったのだけど、星野の復活で削ぎかけた戦意が戻ってきてしまった。


「さあ、全員で――」

「待つのじゃ!!」


 星野の号令を打ち消すように甲高い声が響く。


「十の凶刃で一の剣を囲む……人、それを『卑怯』と呼ぶのじゃ! 数の力に頼るしか能のない魔法少女の風上にもおけぬ者共に明日などない!」

「誰だ!!」

「貴様らに名乗る名はないのじゃ!!」


 そう言って民家の屋根から跳んだ華蓮は空中で変身をして、私を囲んでいた魔法少女の1人の頭を踏んで私の横に降り立つ。


「ちょっと見ない間に少しデカくなってないか?」

「以前弱男怪人に手も足も出なかったからのう。こんなこともあろうかと、20%まで力を解放できる権限をもらっておったのじゃよ」

「なにそれ、ちょっとカッコいいじゃん」


 華蓮の20%とやらがどの程度なのかはわからないけれど、2人。これで2対10。TS怪人は未だ気絶中。弱男は未だ悶絶中――お前もう帰れよ。

 とにかく、まだまだ戦力差は埋まっていない。だけど、風谷達がくれば――そう考えた私に、にわかに影が差す。

 見上げると、そこには合体してアルビトレイターに変身した田中・増井カップルが浮いていた。


「なるほど、一角が騒ぐから来てみれば、ご主人様のピンチに呼ばれてたってわけか」


 少し不機嫌そうにそう言いながら増井先輩がゆっくりと降りてくる。


「え、ええと……ご主人様って……?」

「一角を怪人にしたのは白縫ちゃんでしょ?だから、怪人としての一角のご主人様は白縫ちゃんってわけよ……あれ?あなた、華蓮ちゃんよね?なんか大きくなってない?」

「20%華蓮なのじゃ!」

「それだとなんか小さくなりそうな感じだけど……まあいいや。それで、どうする?白縫ちゃん」

「どうって……」

「私と一角は防御しかできないけど、そこの二人の怪人を回収して、みんなで逃げるくらいはできるよ。というかあの二人、今は味方ってことでいいのよね?」

「じゃ、じゃあ、防御しながら逃げる方向で。相手が多いので、どこかで風谷達か月島達と合流してから相手をしたいです」

「了解。それじゃとりあえず防御魔法を張って――」


 そう言って増井先輩が防御魔法を使った次の瞬間、頭上からゴチンと鈍い音がした。

 私たちが見上げると、そこには防御魔法に阻まれて、空中でうつ伏せに寝そべっている信楽がいた。


「突然登場してハグするドッキリがしたかったのに防御魔法使うなんてひどいですよ舞雪〜」

「し、信楽?なんで?お前、滋賀に居るはずじゃ……」

「幹部はもう片付けました。で、あとは滋賀のJCJKでなんとかなりそうなので、こっちに戻ってきたんです」

「い、いや、片付けたってお前、か、軽く言うけど……」

「私はこう見えて奈南詩子に勝った女ですよ?敵幹部程度、どうってことないです」


 そう言って防御魔法の上に寝そべったままドヤ顔で言う信楽。

 あれ?信楽って奈南詩子に並ぶ才能があるとかなんとかってだけの話じゃなかったっけ?勝ったの?いつ?


「あれはお姉ちゃんの調子が悪かっただけじゃ!」


 あ、信楽のハッタリとかじゃなくて、本当なんだ。


「白縫てめぇ!仲間呼んで余裕のつもりか?ああっ!?」

「白縫ちゃん、知り合い?」

「舞雪の知り合いっぽくないですけど誰です?」

「えと、昔、私をいじめてた同級生」

「あー……そかそか。エリカの言ってたやつかー」


 そう言いながら、なぜか目が細く鋭くなる増井先輩。


「私もさー、京言葉だっけ?転校してきた頃、なんかそんなんでチクチクチクチク、それはもうチクチクチクチクとやられたんだよねぇー。ほんとねー、京都のいじめっ子のタチの悪さったらさぁ」

「増井先輩のことは知りませんが、舞雪を虐めていたというだけで万死に値しますね」

「まあ、さすがに万死はやりすぎだからバンジーぐらいで私は許してやらないこともないけどさ。あ、でも100回くらいはしないと許さない。もちろん紐無しね」


 増井先輩のは星野に関係ないヘイト向いてませんか?大丈夫ですか?


「くっ……こ、こっちのほうがまだ数で有利なんだぞ!?なんなのその余裕は!」

「ど、どうすんの星野!?やるの?」

「やるに決まってんでしょ!2人も4人も大して変わらないし!」

「あ!思い出した!星野、空から降りてきた奴は確か防御と魔法の威力が弱くなる反射しかできないやつやで!」

「ああ!私もKJKのミニ番組で見たわ!弱くなる反射とかクソ雑魚能力やんな!」


 弱い反射など避けられると思ったのか、それともアルビトレイターの防御魔法を抜けるとおもったのか、舐め腐った言動を取った2人がステッキに魔力を集中させ始まる。


「――は?誰の彼氏の魔法がクソ雑魚だって?」


 増井先輩はそう言って私たちの周りに展開させていた防御魔法を解除すると、魔力を集中させて攻撃魔法を放とうとしていた2人の周りを囲うように展開しなおした。

 次の瞬間、2人が放った攻撃魔法を増井先輩の防御魔法が何度も何度も反射する。

 防御魔法が音を遮っているのか、悲鳴は聞こえない。

 しかし、悲鳴など聞こえなくても自分の魔法に何度も何度も傷つけられ、倒れ伏した2人の痛みや負傷の度合いは一目瞭然だ。


「あら良かったわねぇ、私と一角の魔法がクソ雑魚だったおかげで死なずに済んでぇ」


 増井先輩はにこやかにそう言い放つ……京言葉出てますけど大丈夫そうどすか?


「さて舞雪。とりあえず、あのいじめの主犯以外は倒しちゃって構わないですよね?」


 そう言いながら、ステッキであり得物でもあるハンマーを取り出す信楽。

 

「え?ああ、うん……」


 というか別に星野も倒してくれて構わないのだけど。


「じゃあ、遠慮なく」

「ちょ、ちょっと待って、私ら別にそいつのこといじめてへん!」

「え?そうなんですか」

「そ、そう!そいつとは、今日が初対面で全部星野が――」

「うーん……でもそれ別に関係ないですよね」

「「え?」」

「あなたの友達が私の友達を傷つけた。つまりこれは私とあなたたちによる代理戦争です」


 そう言いながら信楽が弁解をしてきた魔法少女にハンマーを向けると、どこからともなくコロコロと拳大くらいの大きさがあるミシンのボビンのようなものが転がってくる。


「私、某国とのクォーターなんですけれど、私のルーツである彼の国はとてもユニークな兵器を作ったことがありまして。私の魔法はそれをモチーフにさせてもらっているんですよ。パンジャンドラムっていうんですけどね」


 信楽が喋っている間にもコロコロと転がるボビンは数を増やしていき、やがてピタリと制止する。


「な、なに!?なにをする気?」

「これに懲りたら、みなさん友達は選んだほうが良いですよ」


 相手の質問にまるで返事をする気のないそんなセリフの後、信楽が「PAN-CORO」と唱えると、ボビンの側面、丁度車輪のようになっているところから火が噴き出し、ネズミ花火のように不規則な軌道を描きながら敵の魔法少女達に向かっていく。

 逃げ回る敵、追いかけるパンジャン。今度はさっきの静かな地獄とは打って変わって阿鼻叫喚の地獄絵図が展開された。

 やがて星野以外の魔法少女は地に伏し、間近で地獄絵図を見ていた星野は、呆然とした表情で周りを見渡して自分以外が全滅したことを確認したあとでペタンと地面に座り込み、座り込んだ星野の周りには水たまりが広がっていく。

 

 尊厳破壊されてて草。

 

 腰を抜かし、小便を漏らした星野を見た私の頭に浮かんだのはそんな短い感想だった。


「ささ、舞雪」

「長年の恨みを晴らす時が来たわよ」


 そう言って私を星野のほうに押し出す信楽と増井先輩。


「あー……その、星野」

「ヒッ……!?」

「なんかごめんな……」


 なんかもう、本当にこう。ごめんって感じだ。

 さっきまでの星野に対する恨みつらみが消え去ったとは言わないが、今この時私が星野に対して抱いた感情は「なんかごめん」だったのだ。

 もちろん許したわけではない。許したわけではないが急に頭が冷えたのだ。

 多分アレだ「へへ、やってやるぞ!やっちゃうからな!?」みたいな感じで『自分ヤベえ!』って思っていたところに自分なんて大したことがないと思わされるヤベえ奴をお出しされてしまうと、急に感情がスンとなるやつ。

 名前は知らないがなんかそういうやつ。


「な、何で舞雪があやまってるんですか!?」


 主にお前のせいだよ。


 

 

もっとシリアスになるはずだったんだけどなぁ

まあ、まとまった(?)からヨシ!

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