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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第三章 KJK編

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KJK.魔法少女にあこがれない 3



 圧倒的な暴力で場を蹂躙した信楽は、敵対した魔法少女達の顔写真の撮影と身元確認、簡単な治療を施してから彼女達を解放した。

 ……一人をのぞいて。


「この子だけは元々変身できていたみたいですし、安易に解放するのは危険ですからね」


 ほとんどの敵魔法少女達は、要するに「魔法少女怪人」だったわけなのだけど、一人だけ、星野だけは普通に魔法少女だったので信楽の判断で即解放というわけにはいかなかったのだ。

 そして星野は今、私の家のお風呂に入っている。

 濡れたパンツと共に。


「ほ、星野、替えの下着おいておくから。い、いちおう、新品。や、安いのだから、気にしないでいいから」

「ありがとう」


 折戸越しに、浴室で反響した星野の声が聞こえる。


「ごめんね」

「べ、別に気にしなくて、いい。」


 なんでこんなことしてやってるんだろうって思わなくもないけれど、今回の件は6対4くらいで信楽が悪いかなとも思うし。

 だから友達の尻拭いと考えればまあ、仕方ないと言えなくもない。


「そ、それじゃ、上がったら、わ、私の部屋に来て。ちょっと、取り調べがあるらしいから」

「あ!ちょっと待って白縫!……その、悪かったわね、色々……」

「色々?」

「その……小学生の頃のこととか……」

「……ちょ、ちょっと助けられたくらいでチョロすぎんだろ。アホか」

「は……はぁっ!?」

「わ、私はチョロくないからこんなことくらいで、ゆ、許すつもりはないから。そもそも、顔も合わせず謝るなんて、じょ、常識で考えろ。あと、正直もうお前に興味なんてないし、どうでもいい」


 これは強がりとかではなく、100%私の本音だ。

 許せはしないけど、最近は小学生の頃のことはあまり思い出さなくなっていた。

 桜沢先輩とか、黒浦さんとか、鳴川とか、華蓮とか……あとは多分、信楽とか。そういうみんなのおかげで最近の私はすこし前向きだ。

 

「このくらいで、精算してもらえるなんて思うなよ」

「……言うようになったじゃん……」


 言い返せるようになったのは、みんなのおかげだ。

 というか、最初からこのくらい言い返せていたら、いじめられなかったかもしれない。


「……決着はそのうちつける。謝罪を受け取るのはお前をわからせた後だ。魔法少女」

「え?」

「今回、増井先輩とか信楽任せで私はなにもしてないからな。昔の話は自分でやり返したその後で聞く」

「……あんたのいるステージまで上がってこいってことね?」

「そんなところだ」


 まあ、私のいるステージがどうこうという前に、まず、説教やら折檻やらをする気満々で手ぐすね引いて星野が風呂から上がってくるのを待っている信楽と増井先輩と黒浦さん相手に生き残れよ、という話ではあるんだけども……これを親切に教えてやることもないだろう。

 


 言いたいことを言ってやりきった表情の黒浦さん、星野には関係ない私怨をぶつけた増井先輩、未だやり足りないのか、ガルガル期から抜け出せないでいる信楽。

 3人の口撃にドン引きしている田中先輩と華蓮。そして部屋の隅で膝を抱えて小さくなっている星野。

 現在、私の部屋の空気はかなりのカオスだ。


「白縫ぃ……普通さぁ、助けるんじゃないの、こういう時は」


 私を睨みながら消え入りそうな声で不満を口にする星野。


「なんで?」

「ライバルのピンチは助けるでしょ普通!あんたが庇ってくれればもう少し手加減とかしてもらえたかもしれないのに」


 いや、いつからライバルになったんだよ、私たち。

 そもそも、たとえライバルだったとしてもそんな仲いいタイプのライバルじゃねぇだろ。


「ん?なんですかキララ。他責ですか?」

「他責はよくないわよ?そもそもこうして詰められているのはあなた自身の行いのせいなわけ、そこんとこちゃんとわからせてあげようか?」

「ヒエッ!」


 いや、増井先輩のは星野関係ないですけどね。

 というか、なんで星野じゃなくて田中先輩が悲鳴をあげてるんですか。


「はぁ……どうやら星野は反省が足りないようね」


 そうだそうだ!反省が足りないぞ!やっちゃってください、黒浦さん!


「ま、まあ待つのじゃ聖羅お姉ちゃん、真墨、ジェニー。昔、儂も悪者だった事があるからわかる。そやつも多分反省はしておるのじゃ、じゃが素直になれないというか……あー……」

「幼女!がんばれ幼女!」


 言葉が続かず言い淀む華蓮を星野が応援する。

 

「……正直、儂と一角お兄ちゃんが怖い思いするのでよそでやってほしいのじゃ……」


 3人の圧に負けた華蓮がしょんぼりと肩を落として諦めたようにそう言った。


「よ、幼女!?」

「おけおけ。じゃあよそでやるね」

「ウチがすぐそこなんでウチ行きましょうか」

「いや、一階のリビングでいいんじゃないです?」

「し、白縫ぃ……」


 すがるようにこっちを見るのやめろ。なんか私が悪いことしてるみたいになるだろ。


「あ、あの……ま、また漏らされても嫌なんで、星野に関してはこの辺でいいんじゃないですかね」

「白縫ぃ!」


 喜ぶな!私は自分の家の床を守っただけだ!




 

「さて、じゃあ取り調べも終わったところで、私はそろそろ行きますね」


 星野に対する一通りの聴取を終えた後で信楽がそう言って伸びをする。

 

「ああ、この辺は片付いたっぽいけど、まだまだ怪人とかいそうだもんね。まあ、舞雪達のことは私に任せてがんばってきなよ」

「……なんで真墨はすぐにそうやってマウント取ろうとするんですか!」

「別にそういうつもりじゃないし。というか、そっちこそ何ですぐに突っかかってくるわけ?」

「はいはい、喧嘩しない。ちなみに信楽ちゃん、私と一角も何か手伝ったほうがいい?」


 信楽と黒浦さんの間に入った増井先輩が尋ねると、信楽は首を振る。

 

「先輩たちはKJK所属なので有事の際は遊撃が任務。好きにしていてもらって大丈夫です」

「……ん?それだとお前には別の仕事があるみたいな感じがするんだけど」


 私がそう言うと、信楽は一瞬「ヤベッ」という表情を浮かべた。

 

「あー……まあそろそろ任務も満了なので言ってしまってもいいかもしれないですね。実はKJK2……特に、私と美沙都と真春、それに凛と梓はコスモ先輩と華音先輩、それに雅弓の監視が主任務なんです。まあ、もっとも凛と梓がKJKに組み込まれてからは私たちの方はほぼその任務から外れてKJK2メンバーの育成ばっかりでしたけど」

「でも、橘と華音と刑部ちゃんの監視って、何でそんな事をする必要があったの?」

「華蓮との戦闘が原因ですね。あの三人と、奈南詩子と紅林蓮華、それに邑田朔夜、東條蜂子、安藤こころが華蓮との戦闘で見せた合体は、この国の魔法少女の誰よりも強力でしたから、他国の諜報機関による誘拐や亡命……あとは暴走や反乱に備える必要があったんです」

「いやいやいや、反乱とか、あの三人はそういうタイプじゃないって!……まあ、エリカとか榊とか、それに私たちがやられたら多少の暴走とかはありそうではあるけどさ」


 増井先輩はそう言うが、高塚先輩が夢に閉じ込められてガチギレした橘先輩は以前鳴川を半殺しにしたことがあるわけで、そういう暴走はもちろん、仲間への危害の首謀者が国であった場合には反乱の可能性もゼロではない。


「とはいえ、この1年で、少なくとも国に対して反乱という可能性はないだろうという話に落ち着いていて、キリがいいので先輩たちの高校卒業を機に監視は外される予定ですけどね」

「うーん、でもやっぱり、あんまり気持ちのいい話じゃないね」

「そうは言っても、真っ当にこの国の諜報機関が機能しているからこそですからね。拉致しようとしていたり、亡命させようとしている国の人間が奥深くに入り込んでいたらこういう監視自体が()()()()ようにされちゃうんですから」

「それもそうか……ちなみにさ、ナイツ・メアとか、私と一角にも監視がついていたりしたの?」

「もちろん」

「ああ、もちろんなんだね。そっかそっか……はぁ……でもまあ、卒業までの期間だし我慢しよう」

「そうしてください……じゃあ、私は一応コスモ先輩や華音先輩の様子を見てきますから――」


 信楽がそう言って立ち上がろうとした瞬間だった。

 轟音が響き、家が揺れて信楽が少し体勢を崩し、黒浦さんと星野が悲鳴を上げる。


「今度は一体何!?」

「……なあ聖羅、もしかしてなんだけどさ、今話してたのってフラグ……だったりしないよな?」


 揺れが収まった後で、田中先輩が不穏なことを口にする。


「え?」

「いやいやいや、何を言ってるんですか田中先輩。コスモ先輩の暴走の話をちょっとしたからってまさかそんな。だって今、雅弓は神戸にいますし、最後に確認を取った限りだと、華音先輩とコスモ先輩も別行動ですよ?」

「でもさ、刑部さんがいなくても、っていうか合体なんかしなくても、橘1人でも、高塚1人でも、このくらいの音とか揺れくらいなら――」

「うわあああああっ、聞こえない聞こえない!」

「一角、やっぱり私たちも行こう。ほら、信楽ちゃんも現実逃避してないで行くよ。白縫ちゃんは華蓮ちゃん達をよろしくね」


 増井先輩はそう言いながら田中先輩と信楽の手を引いて立ち上がると、変身して窓から飛び立った。

 


 

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