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第8話 オークションに来たんだけど、敵の予算を毒殺したら破産してて草

「わぁ……! おにいちゃん、これ全部、お祭りの出店なの……!?」


 犬耳をパタパタと忙しなく揺らしながら、俺の服の裾をぎゅっと握りしめてくるのは、昨日奴隷市場から救い出したばかりの獣人ロリ、ミィナだ。


 絶対に外れないはずの『即死の呪毒の首輪』を、俺が魔力回路ごと【概念猛毒】で毒殺して外してあげて以来、彼女は完全に俺になついていた。


「いや、これはオークションハウスだよ。ミィナ、まだボロ布みたいな服しか着せてあげられてないからな。今日はここで、世界最高峰の服や防具を買おうな。」


「相変わらずトウマ様は太っ腹ですね。でも…私のことも忘れないでくださいね。」


 俺の右腕に、これ見よがしに押し付けてくるのは、エルフの国の王女であるセレフィナちゃん。奈落の呪毒を俺が毒殺して以来、隙あらばくっついてくる。


「トウマ殿! このヴィオレ、聖騎士団長の名に懸けて、オークション会場での不審者はすべて叩き斬ってみせます! ……ですから、その、終わったらご褒美に…頭を撫でて…ください…!」


 左腕には、スタイル抜群の巨乳女騎士ヴィオレ。剣の腕は確かなのだが、このポンコツとても具合が可愛い。


「あらあら、若いお嬢さんたちは元気ね。トウマ様、私のような『人妻』は、こういう公の場では一歩引いた方がよろしいかしら?」


 背後から妖艶な色気を漂わせながら、超絶美女のエルフ王妃のイザベラさんだ。「一歩引く」と言いながらも、俺の首筋に息を吹きかけてくる。


 世界樹の別荘から連れてきた、王女・女騎士・王妃・獣人ロリのハーレムを引き連れて、俺は王都最大のオークションハウス『黄金天秤館』のVIP席へと足を踏み入れた。


 周囲の男どもが、俺を見て血涙を流さんばかりの嫉妬の視線を送ってくるが、まーーーったく関係ない。俺はただ、ハーレムたちとスローライフを楽しみたいだけなのだ。


「さあ! 次の出品物は、伝説の聖獣の毛皮で編まれた『神鳥のケープ』です! 物理・魔法の防御力を極限まで高める至高の一品! スタート価格は金貨1,000枚から!」


 ステージ上で司会者が叫ぶと会場がどよめいた。 これならミィナの身を守る防具として申し分ないな。


「おにいちゃん、あんなに高そうなもの、私にはもったいないの……!」


「気にするなミィナ。俺にとっては金貨なんてその辺の石ころと変わらないから。」


 俺が手を挙げようとした、その時だった。


「ガハハハハ! 金貨5,000枚だ! 誰も俺に逆らうんじゃねぇぞ!」


 会場に響き渡る下品な声。振り返ると、そこにはいかにも「成金」といった風貌の、肥満体型の貴族が座っていた。隣国からやってきた大富豪、ブライ伯爵とかいうらしい。 彼は俺の隣にいるセレフィナちゃんたちを見て、下卑(げび)た笑みを浮かべた。


「おいおい、そこの優男(やさおとこ)。女を4人もはべらせていい気になっているようだが、そんな貧相な身なりで、このオークションの最高級品が買えると思っているのか? 身の程を知れ! 貧乏人は指をくわえて、俺様が買い占めるのを見てるんだな!」


 ブライ伯爵の言葉に、周囲の腰巾着どもが「そうだそうだ!」「ブライ様の総資産は国家予算並みだぞ!」とハハハと笑う。


 あーあ、変なのに絡まれちゃったよ。 せっかくのデートなのに空気を読めないバカがマウントを取ろうとしてくる。


「トウマ殿、あの無礼者、今すぐここで首を撥ねます!」


 と剣の柄に手をかけたヴィオレ、セレフィナちゃんとイザベラさんが冷酷な目でバカを睨みつける。


「まあ待て待て、みんな。暴力は良くないよ。ここはオークションなんだから、『お買い物』で解決しよう。」


 俺はふっと鼻で笑い、ソファに深く腰掛けたまま、ブライ伯爵に向けてそっと右手をかざした。


「【概念猛毒】――発動。」


「おい、何をブツブツ言って――」


 俺が狙いを定めたのは、ブライ伯爵の肉体ではない。彼が持っている「金銭」という概念。そして、彼が今日使えると認識している「予算」という目に見えない概念そのものだ。


 一瞬、ブライ伯爵の頭上に、黒くドロドロとした『概念の猛毒』がパシャリと降り注いだ。もちろん、一般人には見えない。


「……あ、あれ?」


 次の瞬間、ブライ伯爵が突然頭を抱えてガタガタと震え出した。


「な、なんだこれは……!? お、俺の、俺の金が……!!」


 舞台裏から、オークションハウスの支配人が青ざめた顔で走ってきた。


「ブ、ブライ様! 大変です! 今、我が行に預けられていたブライ様の口座の金貨、総額1億枚が……すべて原因不明の腐食を起こし、一瞬で消滅いたしました……!」


「な、何だとぉぉぉ!?」


 ブライ伯爵が慌てて懐から革財布を取り出すと、そこからボロボロと崩れ落ちたのは、完全に黒くドロドロに溶けた「金のカス」だった。物質としての金そのものだけでなく、彼が世界に所有していた「財産という価値」が、俺の毒によって完全に殺されたのだ。


「そんな……そんな馬鹿な! 俺は世界一の大富豪のはずだ! なぜ一瞬で一文無しに……! ギャァァァ! 破産だ! 破産してしまったぁぁ!」


 ブライ伯爵は泡を吹いてその場に卒倒し、そのままオークションの警備員によって「無一文の不審者」として引きずり出されていった。


 会場内は、何が起きたか分からずシーンと静まり返っている。いやぁ、国家予算並みの財産を概念ごと毒殺できちゃうんだなぁ。


「さて、邪魔者も消えたし。司会者さん、さっきのケープ、金貨1万枚で。」


 俺が平然と手を挙げると、司会者はガタガタと震えながら「ハ、ハンマープライスッ!」と叫んだ。


「さすがトウマ様! 悪い害虫を指一本触れずに駆除されるなんて、本当に素敵です!」


「私もトウマ殿を見習わねば…!」


「トウマ様、今日も本当にかっこよかったですわ……♥」


「おにいちゃん……!このケープ、一生大切にするの……!」


 4人の美女たちが、さらに身体を密着させてくる。 周囲の男たちは、ブライ伯爵の謎の自滅と、俺の圧倒的な勝ち組感に完全に恐怖し、もう誰も俺に視線を向けることすらできなくなっていた。


「よし、ミィナ。次はあっちの可愛いアクセサリーも買おうか!」


「おにいちゃん!ありがとう!」


「その後は、セレフィナちゃん、ヴィオレ、イザベラさんに似合うのも買おうね!」


「はいっ♥」


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