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第6話 今さら戻れと言われても、エルフ母娘と女騎士に挟まれて忙しいので無理です

 国宝級の『世界樹の別荘』で、美魔女エルフ王妃・イザベラさんに膝枕をしてもらい、セレフィナちゃんとヴィオレに左右からマッサージをされながら、俺はのんびり過ごしていた。


「トウマ様、お耳のお掃除もしましょうね。さあ、こちらを向いてください♥」


「あ、ありがとイザベラさん。極楽すぎる……」


「ずるいですお母様! トウマ様の膝枕は私の特等席だったのに!」


「ト、トウマ殿! 私のこの肩揉みの力加減はどうだ……?」


 美女3人が俺を独占しようと、今日もキャッキャと大揉めしている。 毎日がご褒美すぎて、もうブラックギルドにいた頃の苦労なんて完全に忘れていた。


 そんな時――。


 ドン!!! と、別荘の頑丈な扉が乱暴に蹴り開けられた。


「おい無能トウマ! やっと見つけたぞ、こんなところに隠れてやがったか!」


 入ってきたのは、薄汚れた鎧を着て、ハゲ散らかった頭から油汗を流している男――元ギルマスのガルガだった。後ろには、魔力が枯渇してシワシワの婆さんみたいになっている魔術師ミーシャと、盾の重さに耐えかねて腰を痛めている重戦士ザボスもいる。


「……あれ、ガルガ? 何そのゴミみたいな格好。ウケるんだけど。」


 俺がソファに寝そべったまま雑に声をかけると、ガルガは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。


「うるせえ! お前が嫌がらせでギルドのポーションを全部盗んでバックくれたせいで、俺たちのギルドはCランクに落ちぶれたんだよ! 武器はサビるし、メンバーは全員ただの無能になっちまった!」


 いや、盗んでないし。俺の【解毒】サポートがなくなったから、お前らの魔力が使えなくなっただけだろ。マジで脳みそハッピーセットだな。


「だが、お前のそんなゴミみたいな【毒生成】でも、無いよりはマシだってことが分かった。特別に許してやるから、今すぐギルドに戻って奴隷に戻れ! 泣いて感謝しろよ!」


 ガルガは昔みたいに、上から目線で俺に命令してきた。 すると、俺の周りにいた美女たちが一斉に冷たい目をガルガに向けた。


「……そこの不潔人間。」


 最初に立ち上がったのは、王妃イザベラさんだった。強い口調、完全にゴミを見る目。


「トウマ様は、私の不治の呪毒を(エロく)解毒してくださった神のような御方。そのトウマ様を貶め、我が国宝の別荘を勝手に土足で汚した罪、万死に値する?」


「な、なんだこの超絶美少女は……!? って、エルフの王妃だと!?」


 ガルガが腰を抜かしそうになる。さらにセレフィナちゃんとヴィオレも前に出た。


「トウマ様は私の旦那様です! あなたのような無能のクズに渡すわけがありません!」


「我が王国の聖騎士団長の名にかけて、トウマ殿への侮辱は許さん! 叩き斬ってくれる!」


「ひえっ!? 聖騎士団長に、エルフの王女まで!? なんで、なんで無能のトウマがこんな美女たちを侍らせて、国宝の家に住んでるんだよぉぉぉ! おかしいだろぉぉぉ!」


 ガルガたちは嫉妬と絶望で発狂しかけていた。現実を受け入れられなくて顔が引きつっている。残念だけどこれが格差社会なんだよなぁ。


「おいガルガ、今さら戻ってくれって言われても、俺はもう戻らないよ。見てわかるだろ?可愛い女の子たちとイチャイチャしてて忙しいからさ。ねっ?みんな!」


「はいっ♥」


「クソがぁ! ナメやがって! 力ずくでも連れて帰るぞ! お前ら、やれ!」


 ガルガの合図で、ザボスとミーシャが武器を構えて俺に突撃してきた。 一応、元Sランクだし、無能に退化したとはいえ、普通の人間より少しは強いらしい。


「トウマ様、危ない!」


「問題ないよ。ほい、【概念猛毒】」


 セレフィナちゃんの心配をよそに、俺はソファに寝そべったまま、指先からシュパァンと黒い霧をちょっとだけ飛ばした。 狙うのは、こいつらの『攻撃する意思』という目に見えない概念だ。


ジジジジジッ!!!


「ギャアアアアア!?!? 何これぇぇぇ!?」


「う、腕が、足が、動かない……!? いや、戦うっていう気持ちそのものが、脳みそから腐って消えていくぅぅぅ!!」


 俺の毒を浴びた瞬間、ザボスとミーシャは武器を落とし、その場にカエルのようにペタンとへたり込んだ。


【概念猛毒】は、敵の『戦意』すら毒殺して消滅させることができる。


「ひっ、ひいいいいい! 化け物だァァァ!」


 仲間が一瞬で廃人みたいになったのを見て、ガルガはガタガタと震えながら、股間からじょわ〜っと温かい液体を漏らして失禁した。汚くて仕方ない。


「おいガルガ。お前、俺に『その辺の雑魚モンスターにでも殺されてろ』って言ったよな?でもお前の方が先に死にそうだぞ?」


「う、うるせぇ!!!」



———頭が高い!控えよ!


 その時、別荘の入り口に、怒り狂ったエルフの国王が軍隊を引き連れて突入してきた。


「我が国に不法侵入しただけではなく、私の妻と娘の恩人であり、愛するトウマ殿に刃を向けるとは……! おい衛兵! この者どもを全員捕らえろ! 国家反逆罪で、一生ドロドロの毒沼を掃除する強制労働施設にぶち込め!」


「嫌だぁぁぁ! 助けてくれトウマぁぁ! 俺が悪かった! ギルドの金を中抜きしてキャバクラに行ったのも謝るからァァァ!」


「お前、そんなことしてたんか。労働施設がお似合いだな。」


 ガルガたちは衛兵たちにボロ雑巾のように引きずられて、惨めに泣き叫びながら連行されていった。 こうして俺を苦しめていたブラックギルドは完全に崩壊したのだった。


「ふぅ、一件落着だな。」


  俺がため息をつくと、イザベラさんがすぐに後ろから抱きついてきて、豊かな胸を背中に押し付けてきた。


「トウマ様、やっと悪い虫が消えましたね♥ さあ、お耳掃除の続きをしましょう?」


「ずるいですお母様!トウマ様!今夜は私と一緒に寝てくださいね!」


「いや、私がお供する!」


 元ギルドの奴らがこれから毒沼で一生奴隷労働をするらしいけど、エルフ母娘と女騎士に囲まれてる俺には、まーーーーったく関係のない話だった。


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