第49話 そして神域へ。
「……ここが、世界の最果て――『神域の海』ですか…」
特注の魔導飛空艇の甲板から、元聖騎士団長のヴィオレが眼下を見下ろして息を呑んだ。
眼前に広がるのは、いわゆる普通の青い海ではない。
銀色に輝く液体が静かに波打ち、空と海の境界すらも曖昧な、神聖にして不気味な空間。
『世界の歪み』の源流であり、かつて世界の神々が「触れてはならない」と封印した神域の領域だ。
「綺麗な海……。でも、魔力が、存在そのものが押し潰されそうなプレッシャーを感じますわ……っ」
セレフィナちゃんが、俺の腕をぎゅっと掴んで身体を寄せてくる。
「大丈夫よセレフィナ。トウマ様が一緒にいるんだから、どんな世界のルールだって関係ありません。」
イザベラさんが力強く頷き、俺の反対側の腕をしっかりと確保する。
「ミィナ、おにいちゃんと一緒だから、全然怖くないのです!」
犬耳のミィナがパタパタと尻尾を振り、俺の腰にしがみついてくる。
エレノア、フィオナ、レイラ、始祖の王女アバちゃん、帝国皇女のシャルロット……。
「みんな、なんか旅行気分だな。」
俺は甲板の縁に手をかける。
『世界の最果て』に存在する不気味な歪み。
普通なら近づくだけで魂が崩壊し、存在の概念そのものが消滅するような死の海だが――。
グオオオオオオオオオン……ッ!!!
その時、銀色の海が大きく割れ、天を突くほど巨大な影が姿を現した。
「な……ッ!? 竜……!? いえ、あれは神話に謳われる、空間そのものを喰らう神域の海竜『リヴァイアサン』……ッ!?」
ヴィオレが腰の剣に手をかけ、警戒を強める。
現れたのは、全身が銀色のウロコで覆われた体長数百メートルの巨大な海竜だった。
その口からは、周囲の「空間」や「存在」そのものを噛み砕き、無へと還す『絶滅の波動』が放たれようとしている。
「トウマ様、あれは危険です! あの波動は魔法や防壁といった概念を無視して、世界の存在そのものを消滅させる『神の牙』……ッ!」
シャルロットが蒼白な顔で叫ぶ。
だが、俺は一歩も引かず、ただフラットな瞳でその巨大な海竜を見上げた。
「存在の消滅、ねえ。大層なルールを背負っているな。」
俺はゆったりと右手を掲げ、親指と中指を重ねる。
「存在を消し去る波動なら――その『消滅させる』という威圧感そのものに、俺の『神毒』を混ぜたらどうなる?」
――【概念猛毒】
パシィィィン……!!!
澄み切った指の音が、神域の空に響き渡る。
「グガ……ッ!? ガ、ガアァァァーッ!?」
海竜の口から放たれた『絶対消滅の波動』が、俺の【神毒】に触れた瞬間――。
漆黒の破壊光線は、甘い香りを放つ『いちごミルク色の光の粒子』へと一瞬で書き換えられた。
さらに、その粒子は海竜自身の体内に逆流し、巨大な巨体を内側から優しく『浄化』していく。
「グ……グオ……? ガ、ギャオン……ッ♪」
数千年も荒ぶっていた神域の海竜は、俺の【神毒】によって荒ぶる闘争心を完全に毒殺され、うっとりとした表情で銀の海にぷかぷかと浮かび上がった。
そして、小さく身を縮めると、手のひらサイズの可愛らしい「銀色のミニドラゴン」へと姿を変え、俺の肩の上にチョコンと乗って、すりすりと頬を寄せてきたのだ。
「……え?」
シャルロットが口ぐせのように口をぽかんと開ける。
「神域の絶滅竜が……【概念猛毒】で、ただの可愛いペットになっちゃった……!?」
エレノアが呆然と呟く。
「ふぅ。ペットとしては丁度いいサイズだな。」
俺は肩の上のミニドラゴンをポンポンと撫でてやり、眼下に広がる神域の海を見渡す。
「さあ……世界の最果ての『毒の源流』とやら。どんなルールで俺を楽しませてくれるか、見せてもらおうか。」
俺の不敵な笑みに応えるように、ハーレムメンバーたちの歓声が神域の空へと響き渡るのだった。
第49話を読んでいただき、ありがとうございました!
神話の超巨大海竜すらも、可愛い肩乗りペットに早変わりです。
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明日も21:00に更新します!




