第47話 帝国皇女と極上ご当地スイーツの試食会
「な、なんて巨大で神聖な建物……! ここが、あの伝説の『世界樹の别荘』……っ!」
別荘のエントランス。
震える声で感嘆の声を漏らしたのは、神聖ゼノビア帝国の第一皇女・シャルロットだった。
プラチナブロンドの長い髪に、碧眼の瞳。
帝国では「氷結姫」と恐れられる孤高の天才魔導師だが、今の彼女は仕立ての良いドレスの裾をぎゅっと握りしめ、仔鹿のように足をガクガクと震わせている。
それもそのはず。 彼女は父である皇帝から、『トウマ様の機嫌を損ねたら我が国は一瞬で消滅する。身を挺して彼を満足させてまいれ』という命を受けて、貢ぎ物の山と共に「献上」されてきたのだから。
「どうぞ楽にしてください、皇女様。俺は別に減点方式で国を滅ぼしたりはしませんから。」
俺はソファに深く腰掛け、つんと澄ました顔をしつつも怯えているシャルロットに、視線を向ける。
「は、はいっ! 申し訳ありませんトウマ様! わが国の非礼、このシャルロットがどのようなお咎めでも受けますので、どうか……どうか我が国に【神毒】をお与えにならないでくださいまし……っ!」
必死の形相でその場に平伏しようとするシャルロット。
「ちょっと、大袈裟ですわよ。」
「そうよ、トウマ様は襲ってこない敵を無駄に虐めたりしないわ。……まあ、調子に乗ったら泡を吹かせて自滅させるけどね」
セレフィナちゃんとエレノアが、慣れた様子で彼女を宥める。
「それよりトウマ様! 帝国から届いた数々の貢ぎ物の中に、帝国の極上ご当地スイーツ『雪解けスフレタルト』が入っていましたのです!」
ミィナが犬耳をパタパタと激しく振らせながら、銀のトレーに乗った出来立てのタルトを運んできた。 口の中に入れると一瞬で甘く溶け出すという、帝国宮廷秘伝の超高級スイーツだ。
「ほう……どれどれ。」
スプーンでひとくちすくい、口に運ぶと、濃厚なミルクのコクと、甘酸っぱいベリーの風味が口いっぱいに広がった。
「……悪くないな。だが、少々『甘さの鋭さ』が立ちすぎている。」
「えっ……? 宮廷の最高峰パティシエが作った品なのですが……」
シャルロットが固まった。
俺はそっと、スプーンの上に残ったタルトに右手をかざした。
――【万象解毒】
パシィン。
静かな音が響くと、タルトから放たれる香りが一変した。 素材が持つエグみや余分な糖分の「刺激」だけを綺麗に【解毒】し、代わりに俺の『神毒』による極上のまろやかさと甘みを注入したのだ。
「召し上がってみてください。」
「は、はい……っ」
恐る恐る、俺から差し出されたスプーンを口に含むシャルロット。
「――っ!? なん、ですの……これ……っ!?」
次の瞬間、シャルロットの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
氷のように固かった彼女の表情が、一瞬で蕩けるように崩れていく。
「口に入れた瞬間……身体の細胞ひとつひとつに、トウマ様の温かい魔力が染み渡っていく……! 美味しい……ううん、美味しいなんてレベルじゃありませんわ……っ! 脳が、蕩けてしまいます……っ!あ……あぁ……トウマ様……っ。わたくし、こんなに甘くて幸せな『毒』、知りません……っ!」
頬を赤く染め上げ、うっとりとした瞳で俺を見つめるシャルロット。 一瞬にして「氷の姫」の仮面は融解し、俺の『神毒』に胃袋も心も完全に調教された王女へと書き換えられてしまったのだった。
「ふふ、これでシャルロット様も、トウマ様の甘美な毒の虜ですわね」
イザベラ王妃が妖艶に微笑む。
「ずるいずるい! 私にもトウマ様がリフォームしたスイーツ『あーん』してくださいまし!」
「私だって! 新参の皇女に一番乗りされるなんて許せないんだから!」
またしても始まる、賑やかで愛おしいやきもちの嵐。 彼女たちとの甘美な日常を堪能するのだった。
第47話を読んでいただき、ありがとうございました!
怯えて平伏していた「氷の皇女」シャルロットちゃんも、味覚調律スイーツによって一瞬で蕩けてしまいましたね。
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明日も21:00に更新します!




