第42話 神毒の前では無敵結界もザコだった
『死のダンジョン』の最深部を自家用のプライベートサロンへとリフォームし、ハーレムメンバーたちと甘美な宴を催してから数日。
自滅したガルガたち元Sランクギルドの噂は王都中で広まり、「トウマを見限った愚か者どもの自業自得な末路」として語り草になっていた。
それも束の間、真の『世界の悪意』は、その程度で退くほど甘くはなかった。
「――トウマ様、別荘の敷地境界線上にて、異様な魔力反応を感知しました。」
世界樹の別荘の庭園。 俺の膝の上で甘えていた始祖の王女アバちゃんが報告してきた。
「異様な魔力反応?」
「ええ。物理攻撃、魔法攻撃、さらには精神干渉すらも百パーセント遮断すると言われる、帝国極秘の概念兵器――『神威の無敵結界』が、この別荘全体を包み込むように展開されています。」
庭に出て空を見上げると、そこには金と紫が混ざり合った幾何学模様の巨大なドームが、空を覆い尽くすように展開されていた。
「クックック……ついに見つけたぞ、トウマ」
空中からゆったりと舞い降りてきたのは、豪華絢爛な装飾が施された法衣に身を包んだ男。 『帝国の暗部』を率いる最高幹部の一人、魔導大公ルシアンだった。
「ガルガを捨て駒にした甲斐があったというものだ。おかげでお前の【毒】の性質はすべて分析させてもらった。」
ルシアンは不敵な笑みを浮かべ、空中に展開された結界の陣を指差す。
「この『神威の無敵結界』は、あらゆる『攻撃』『異常状態』『干渉』の概念を弾く絶対不可侵の領域! お前が得意とする地味な解毒魔法も、毒による侵食も、この結界の表面で全て無効化される! お前はここで外界から隔離され、干上がり、餓死するのを待つのみだ!」
「トウマ殿……剣では対抗できそうにありません…。」
背後に控えていたヴィオレが、蒼白な顔で俺の袖を掴んだ。
「帝国の暗部が誇る最高の防衛概念……! どんなに強力な攻撃魔法を叩き込んでも、結界そのものが『干渉を受けない』というルールを持っているため、破る手段が存在しないと言われています……!」
アバちゃんが、俺の膝から立ち上がって慌てふためいている。
「破る手段が存在しない、ねえ」
俺はふっと口元を緩めた。
相変わらず、どいつもこいつも「世界のルール」という狭い枠組みの中でしか物事を考えられないらしい。
「ねえトウマくん、あの生意気なおじさん、空間魔術で吹き飛ばしていいかしら?」
ツインテールを揺らし、不満そうに魔法陣を展開しようとするエレノア。
「待て、エレノア。無駄な魔力を使う必要はない。――俺の『神毒』が、何を意味するかを教えてやる。」
俺はゆったりとした足取りで結界の境界線へと歩み寄ると、その金色の光の膜へとそっと指先を触れさせた。
「な、なんだ? 降伏の打診か? 無駄だぞトウマ! この結界にはどんな『干渉』も通じな――」
「干渉が通じないなら、その『無敵』という概念そのものに、毒を混ぜたらどうなる?」
――【概念猛毒・侵食】
パシィン!
静かな庭園に、澄み渡る指パッチンの音が響き渡る。
次の瞬間。
絶対不可侵を誇っていた金色の結界が、毒に侵されたようにドロドロとした紫色へと変色し始めた。
「な……!? 何が起きている!? 結界が……侵食されている!? バカな、干渉を遮断する結界だぞ!? なぜ干渉されている!?」
ルシアンが激しい狼狽を見せ、叫び声を上げる。
「簡単な話だ。お前の結界は『あらゆる干渉を退ける』という強固な意志で成り立っている。だから俺は、その『無敵であろうとする意志』そのものに【神毒】を注ぎ込んだ」
毒とは、肉体を蝕むものだけではない。 ルール、概念、存在意義――世界を構成するあらゆる『絶対』を侵食し、俺の都合の良いように書き換えることこそが、覚醒した俺の【神毒】の真価だ。
「『無敵結界』のルールを書き換えた。……これよりこの結界は、『中にいる者の魔力を無制限に吸収し、俺に捧げる永久献上結界』とする。」
「は……? なにを言っ――ガハッ!?」
ルシアンが突然、胸を押さえて吐血した。 彼が全魔力を注ぎ込んで維持していたはずの無敵結界が、逆に彼の体内から魔力と生命力を容赦なく吸い上げ、俺の『永久魔力炉』へと流し込み始めたのだ。
「ひ、引き剥がせ……ッ! 結界の展開を解除しろ!!」
「無駄だ。すでに結界の制御権という概念そのものが俺の毒で溶けている。お前が死ぬまで、魔力吸収は止まらないぞ。」
「あ、あぁ……ッ! 我が誇る絶対防御が……ただの吸血装置に……!? 助けてくれ、トウマぁぁぁッ!!」
絶対の自信を崩された魔導大公ルシアンは、自らが展開した結界にすべてを吸い尽くされ、絶望の悲鳴を上げながらその場に膝をつき、干からびた木のように崩れ落ちた。
絶望的な刺客の襲来は、わずか数秒の「魔力補給イベント」へと成り下がったのだった。
「さすが、私の旦那様…。」
「おにいちゃん、今日もカッコよかった!」
セレフィナちゃんとミィナが抱きついてくる。
「ふふ。これでまた、トウマ様の魔力が一段と強大になりましたわ。」
イザベラさんがうっとりとした目で俺の腕に身を寄せてくる。
「さて……『帝国の暗部』の幹部を一人潰した。向こうもそろそろ、本気で焦り始める頃だな。」
俺は空を見上げた。さらなる無双の予感に唇を吊り上らせるのだった。
第43話を読んでいただき、ありがとうございました!
『帝国の暗部』が誇る「絶対無敵の結界」すらも、トウマの【神毒・概念侵食】にかかれば、一瞬で「魔力補給機」に成り下がってしまいました。 敵が強くなればなるほど、トウマのチートぶりが際立って爽快です!
「敵の絶望顔がたまらん!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆(ポイント評価)】での応援をよろしくお願いいたします!
明日の21:00の更新をお楽しみに!




