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第38話 ガルガの逆恨み、新たなる毒の苗床

「トウマ様、失礼いたします。朝食の後のデザートはいかがですか。」


 世界樹の別荘のテラス。イザベラさんが、いつも通り凛とした足取りでやってきた。


 新しく仲間になったダークエルフのフィオナが、俺の膝の上にちょこんと座って銀髪を揺らしている。


「ん……トウマ様、このお菓子、美味しいです。……あーん。」


「おいおい、フィオナ。俺の膝は椅子じゃないんだぞ。」


「いいえ、トウマ様の『神毒』の温もりが一番落ち着くのです。もうここから離れたくありません……っ」


 俺の胸に背中を預けて甘えてくるフィオナ。昨日の『魔界の門(ポータル)』での概念侵食を経て、彼女の魂は完全に俺の支配下――いや、俺の虜になっていた。


「もう! フィオナばっかりずるいですわ! 私だってトウマ様の膝の上で甘えたいのに!」


「ミィナもおにいちゃんの膝に座りたい!」


「新参者のくせにポジション確保するのが早すぎるのよ! ちょっとそこ代わりなさいよ!」


 セレフィナちゃん、ミィナ、エレノアがまたしてもやきもちの嵐を巻き起こしている。 俺は「やれやれ」と彼女たちの頭を順になでてやりながら、ヴィオレが持ってきた書状に目を落とした。


「ヴィオレ。その紙切れは何だ?」


「はい。我がギルド『万象の毒』に対して、元Sランクギルド『聖なる光』のガルガから、正式な『ギルド決闘(クラン・ウォー)』の挑戦状が届きました。」


「決闘(クラン・ウォー)、ねえ。借金まみれで泥水をすすっていると聞いたが、しぶといな。」


「ええ。どうやら裏で『帝国の暗部』と結託し、怪しげな『禁忌の呪具』を譲り受けたようです。『トウマの地味な解毒魔法など、この呪いの前には無力だ。別荘と女たちをすべて明け渡せ』と、身の程をわきまえない内容が書き連ねられております。」


 それを聞いた瞬間、俺の膝の上でフィオナがピクリと身体を強張らせた。


「トウマ様……それは危険です。『帝国の暗部』が操る呪いは、『毒の始祖』の眷属の力……! 触れるだけで魂が腐食する、因果をも捻じ曲げる悪意です!」


 怯えるフィオナの頭を、俺は優しく、しかし絶対的な自信を込めてポンポンと叩いた。


「安心しろ、フィオナ。世界の悪意だか始祖だか知らないが――俺の【万象解毒】の前に、解けない『毒』など存在しない。」


*


 決闘の場所に指定されたのは、王都の地下闘技場。


 観客席には、元Sランクギルドの凋落ぶりと、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの『万象の毒』の対決を一目見ようと、多くの野次馬が集まっていた。


「ヒャーハハハハ! 来たな、無能のトウマ!」


 闘技場の中央で待っていたのは、かつての威光など見る影もなく、ボロボロの黒ローブを纏い、狂気に目を血走らせたガルガだった。その手には、禍々しい紫色の光を放つドクロの形をした杖――禁忌の呪具が握られている。


「おいおい、ガルガ。ずいぶんと薄汚れたな。Sランクの面影が微塵もないぞ」


「うるさいっ! すべてはお前が抜けたせいだ! お前が小細工をして俺たちのバフを解除したから、俺たちは落ちぶれたんだ!」


 相変わらずの歪んだ認知。俺の解毒サポートのありがたみを理解せず、ただの無能と決めつけて追放した結果がこれだというのに、まだ気づかないらしい。


「死ねぇ! トウマ! 『帝国の暗部』より授かりし、始祖の呪毒に侵されて消え失せろ!」


 ガルガが杖を掲げると、闘技場全体が瞬時にどす黒い紫の結界に包まれた。


 あらゆる生命の「存在」そのものを否定し、強制的に死へと導く絶対不可避の即死呪界。


「ギャハハ! この結界の中では、どんな防御魔法も、どんな解毒薬も意味を成さない! 概念そのものが『死』へと変換されるのだからな!」


 勝ち誇るガルガ。観客席からも悲鳴が上がる。


 だが、俺は一歩も動かず、ガルガを睨んでいた。


「概念の変換、か。……だったら、その『死の結界』というルールそのものに、俺の『毒』を混ぜたらどうなる?」


――【概念猛毒・侵食】


 パシィン! と、闘技場に小気味よい指パッチンの音が響き渡る。


「なっ……!? 結界が……消えない!? だが、色が……!?」


 ガルガの顔が驚愕に染まる。


 ドス黒かった紫の結界は、次の瞬間、淡いピンク色の甘美な光へと書き換えられていた。


 俺が侵食したのは、結界が持つ「生命を害する」という因果そのもの。その悪意を綺麗に【解毒】し、代わりに俺の『概念猛毒』を極限まで充填したのだ。


「な、なんだこの匂いは……!? 体が、熱い……!? 悪意が、トウマへの『絶対的な服従心』に書き換えられていく……!?」


 ガルガの背後に控えていた、元『聖なる光』の残党の女魔術師や、ガルガを監視していた『帝国の暗部』の女刺客たちが、一斉に顔を真っ赤にしてその場に崩れ落ちた。彼女たちの瞳は完全にハートマークへと書き換えられている。


「あ、あぁ……トウマ様……なんて素晴らしいお方……。私、今までなんて愚かなことを……っ」


「トウマ様、私を……私をあなたの毒の苗床にしてください……!」


「な、何が起きてるんだァァァーーーッ!?」


 ガルガが絶叫する。敵が放った最強の切り札である「無敵の呪界」が、俺の指先一つでただの『トウマ専用・強制ハーレム化空間』へと早変わりしてしまったのだ。


「これで終わりだ、ガルガ。」


 俺は冷徹に言い放ち、もう一度指を鳴らす。 ガルガの持つ禁忌の呪具の「耐久値」を毒で侵食し、一瞬で粉々に砕いてみせた。


「ひっ、あ、あああ……!」


 武器を失い、すべての仲間を俺の虜にされたガルガは、絶望のあまり泡を吹いてその場に昏倒した。かつて俺を無能と見下した男の、これが完全なる自滅の末路だった。


 闘技場に、割れんばかりの歓声が響き渡る。


 しかし、俺はその喧騒に興味はない。足早に帰路につく。


 世界の悪意の端末を一つ潰したが、真の黒幕である『毒の始祖』、そして『帝国の暗部』の本体は、まだ奥底で蠢いている。 だが、どんな毒を仕掛けてこようと、俺の指【概念猛毒・万象解毒】で書き換えてやるだけだ。



 ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

  元ギルマス・ガルガの仕掛けた絶対不可避の呪いも、トウマ様の【神毒・概念侵食】の前には、ただの最高級惚れ薬空間へとリフォームされてしまいましたね(笑)。敵の女刺客たちも無事にトウマ様の苗床として収穫完了です!


「指パッチン無双、スカッとした!」「敵の女たちが蕩けていくの最高!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆(ポイント評価)】での応援をよろしくお願いいたします!

 

 明日も21:00に更新します!

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