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第33話 ついにイザベラさんが立ち上がった件

 エレノアが「特別なハーレムメンバー」の仲間入りを果たした翌日。『世界樹の別荘』の広いリビングでは、相変わらず俺を巡る静かな、しかし熾烈な戦いが繰り広げられていた。


「ふん、私はもうトウマくんにたっぷり愛されたんだから、みんなより一歩リードよ!」


 ソファーでクッションを抱きかかえながら、ドヤ顔でツインテールを揺らしているのはエレノアだ。すっかりデレデレなのだが、他のメンバーの手前、必死に強がっているのが最高に可愛い。腰の抜けもようやく治ったらしい。


「ふふ、エレノア。トウマ様の本当の底なしの愛は、一度や二度じゃ味わい尽くせないのよ?」


 セレフィナちゃんが上品に微笑みながらも、胸元のブローチに手を当てて対抗する。


「そうだぞ。私やミィナの方が、トウマ殿との絆の深さ(既済の回数)では上だからな」


「そうなのです! ミィナの尻尾はおにいちゃんの魔力を一番覚えているのです!」


 ヴィオレがふんす、と鼻を鳴らし、ミィナもと大狼の誇りを胸に主張していた。


 そんな少女たちの小競り合いを後目に、俺の背後からスルスルと近づいてくる影が一つ。


「あらあら、みんな若いわねぇ……。でも、本当にトウマ様を『大人の男』として癒やして差し上げられるのは、誰かしらね……。」


 背中に当たった極上の柔らかさと、耳元に吹きかけられる吐息の熱さで振り返らなくてもわかる。イザベラさんだ。


 彼女はエルフの王妃でありながら、俺が不治の呪毒を解毒して以来、心も身体も奪われたようだ。


 そんな余裕たっぷりのイザベラさんだが、微かに震えているのが胸から伝わった。


 ヴィオレやエレノアたちが次々と俺と二人きりで任務に行き、愛されて帰ってくるのを間近で見ていたせいで、彼女の「年上としての理性」もとっくに限界を迎えているのが丸分かりだった。


「イザベラさん、背中が熱いって。……まぁ、約束通り次はイザベラさんの番だからさ。」


「っ……! 期待して待っているわね……?」


 俺が耳元で囁き返すと、普段は妖艶なイザベラさんが一瞬だけ少女のように頬を染めて視線を彷徨わせた。実に素晴らしい。


 そんな、最高に煮詰まったハーレム空間の空気を切り裂くように――ドン!!! と、またしても別荘の扉が乱暴に開けられた。


 ……おいおい、今度はどこのゴミ虫だ? ガルガの次は別の脱走囚か?


 だが、入ってきたのはボロボロになったエルフ王国の近衛兵だった。


「ト、トウマ殿……! イザベラ様……! 大変です! 北の禁忌の森にある『常闇の聖堂』から、かつて世界を絶望に陥れた超特級の呪毒【虚無の浸食(ヴォイド・イレイザー)】が突如として噴出しました! 触れた者は存在そのものを『消滅』させられます……!」


 近衛兵は涙と鼻水を流しながら、その場でペタンとへたり込んだ。


「陛下も防衛に向かわれましたが、呪毒の霧に巻かれ、すでに意識不明の重体……! この呪毒の特性は【王族の血脈】に強く反応し、血の繋がりがある者を優先して死に追いやる呪いがかけられています! セレフィナ様も、今すぐここから避難を……!」


「な、なんですって……!? お父様が……!」


 セレフィナちゃんが顔を真っ青にして立ち上がろうとするが、血脈の呪いが微かに共鳴したのか、「うぅっ……」と胸を押さえてその場に倒れ込んでしまった。


「セレフィナ殿! ……くっ、私も救援に……あ、あれ……!?」


 ヴィオレが剣を抜こうとするが、急に膝から崩れ落ちた。見れば、ミィナもエレノアも、急激な魔力の乱れが一気に襲ってきたようで、身体を動かせなくなっている。


「おいおい、みんなタイミング良すぎだろ。」


 俺はやれやれと首を振った。世界を絶望に陥れた呪毒ねぇ。あらゆる毒や呪いを『解毒』できる俺の前では、ただの炭酸の抜けたソーダみたいなものだ。


 だが、王族の血脈に反応する即死呪いか。となると、エルフの第一王女であるセレフィナちゃんは当然動けない。


 ならば、エルフの「王妃」であるイザベラさんはどうなる?


「……トウマ様。私は『王妃』ですが、元々は他国から嫁いできた身。王族とは血の繋がりがありませんわ。つまり……あの呪毒の影響を一切受けないのは、私だけです。」


 イザベラさんが、妖艶な、しかしどこか獲物を見つけた肉食獣のような瞳で俺を見つめてきた。


 他のみんなは完全に戦闘不能。動けるのは、お預けを食らって限界寸前だったエルフ王妃のみ。


「なるほどな。じゃあイザベラさん、一緒にサクッとその呪毒とやらを片付けに行こうか。」


「ええ、喜んで……。 トウマ様のお背中をお守りしますわ。」


 イザベラさんは俺の腕にしがみつき、豊かな胸をこれでもかと押し付けながら妖しく微笑んだ。その瞳はすでにハートマークを通り越して、熱い欲望でドロドロに溶けかかっている。


「お、お母様、どうかお気を付けて…!!」


 セレフィナちゃんが苦しみながらも見送りをしてくれた。


「それじゃあ、不快な雑音を掃除しに行きますか。」


 俺はイザベラさんと共に夜の闇へと歩き出した。どんな超特級の呪毒だろうが、俺の【神毒】の前では無力だ。



 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 

 この作品を評価してくださった方、ブックマークしてくださった方、毎話リアクションをくださる方、本当に励みになっております。ありがとうございます。


 もし『神毒の無双がスカッとした!』『登場するヒロインたちが可愛い!』と思ってくださったら、ページ下部にあります【評価☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】で応援していただけますと、毎日の執筆がすごく捗ります!


 明日も21:00に更新します!

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