第30話 お預けを食らったツインテールと緊急任務
元ギルドのゴミ虫どもが地下監獄に連れて行かれた翌朝。
『世界樹の別荘』のリビングには、異様なまでの重労働(?)に耐える熱気が満ちていた。
「もうっ! トウマくん、私の番はいつなの?」
朝食のテーブルで、ツインテールをブンブンと振り回しながら俺に猛抗議してくるのはエレノアだ。
やきもちのゲージはとっくに限界を突破して、顔を真っ赤にしながら俺を睨みつけている。その瞳は完全に「早くちょうだい!」と訴えかけていた。
「あらあら、エレノア。トウマ様は昨日帰ってきたばかりよ? あまり困らせちゃダメじゃない」
クスクスと妖艶に笑いながら、俺のコーヒーにお砂糖を入れてくれるのは美魔女エルフ王妃のイザベラさんだ。大人の色香たっぷりに、さりげなく俺の肩に豊かな胸の弾力を押し当ててくるのを忘れない。
「そ、そうだぞエレノア殿。トウマ殿にも休息が必要だ(……本当は、私もそろそろトウマ殿のあの熱い魔力が恋しいのだが……)」
ヴィオレはほんのり頬を赤らめている。
「ミィナも、おにいちゃんの匂いが欲しい……!」
犬耳と尻尾をしょんぼりと垂れ下げて甘えてくるミィナ。さらに、昨日たっぷり愛されてまだ少し足元が覚束ないセレフィナちゃんが、とろんとした至福の表情のまま俺の隣にぴったりと寄り添っていた。
美女5人に囲まれて朝から全力で求められるとか、マジでギルドのブラック時代からは考えられない。
「わ、私だってトウマくんの匂いが足りないわよ…!」
不満をもらすエレノアの頭をポンポンと撫でてやると、彼女は「う、うにゅぅ……」と可愛らしい声を漏らして一瞬で茹でダコのように赤くなった。実に可愛い。
――その時。
ピピピッ!!!
リビングの机に置いてあった、王宮直通の魔導通信機がけたたましく鳴り響いた。
『トウマ殿! 緊急事態だ! 我が国の北方にある古代遺跡『天の逆鉾』から、超特級の古代呪い【万物を侵す影が漏れ出した! すでに調査に向かった精鋭騎士団も、触れただけで魔力を吸い尽くされて全滅しかけている!』
「はい、古代遺跡の呪いですね。」
俺はソファにもたれかかったまま、コーヒーをすすりつつ相槌を打つ。
『お願いだ、トウマ殿! そなたの能力で、どうか解決してはくれないか! すぐにギルドのメンバー総出で向かってくれ!』
「分かった。じゃあ、みんなで行くか。」
俺が立ち上がろうとした、その瞬間。
「うっ……!? な、なんだか、急に体が熱くて、力が入らない……っ」
さっきまで元気だったヴィオレが、急に顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。見れば、ミィナも「ふにゃぁ……」と声を漏らして床にへたり込み、セレフィナちゃんにいたっては最初から腰が抜けている。さらにイザベラさんまでもが、吐息を荒くしてソファに倒れ込んでいた。
「おいおい、みんな大丈夫か?」
尋ねる俺に、イザベラさんが潤んだ瞳で苦笑いを向ける。
「あらあら……ここ数日トウマ様からいただいた魔力の残りが、このタイミングで一気に体に回ってしまったみたい……。」
「な、情けない……! トウマ殿の任務だというのに、体が言うことを聞かん……っ!」
ヴィオレが悔しそうに身悶えするが、その表情はどこか恍惚としている。
「だそうだ。エレノアの番が来たぞ。」
つまり、動けるのは――。
「え、えええええっ!?このタイミングで動けなくなるのよ!?」
ツインテールを直立させて驚愕しているエレノアだけ。
「……というわけで決まりました。今回は、俺とエレノアの2人だけで解決してきます。」
通信が切れると、エレノアはガタガタと震えながら、顔をこれ以上ないほど赤くして俺を見上げてきた。
「つ、つまり……トウマくんと、2人きりでクエスト……? 他のみんなは、留守番……?」
「ああ。エレノアの力が必要なんだ。俺に付いてきてくれるか?」
微笑みながら手を差し伸べると、エレノアはツンとそっぽを向きつつも、その小さな手をぎゅっと握り返してきた。
「まぁ良いわ。願ったり叶ったりよ!2人でもちゃんと解決できるっての!」
「でもなんで、エレノアだけ無事なんだ?まさか“あれ”だけじゃ足りないのか?」
「うっさいわね!!全然足りないわよ!!」
エレノアはツインテールを逆立たせ、顔を赤くしながらガミガミと猛反発した。やっぱり可愛い。
「じゃあ解決したらご褒美を上げないとな。エレノア、空間転移を頼む。」
「ま、任せなさいっての!」
エレノアが嬉しさを隠しきれない様子で魔術を発動し、俺たちの体は光に包まれた。
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