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第29話 元ギルドの負け犬たちが、脱走して、また復讐にやってきた件について

『世界樹の別荘』に、俺とセレフィナちゃんは帰ってきた。


 国家を揺るがす伝説の厄災【万死の疫病王(プレイグ・ロード)】を片付けた帰り道、古城の最深部を超高級宮殿にリフォームし、そこでセレフィナちゃんに魔力を注ぎ込んだせいで、未だに腰が完全に抜けている。


 お姫様抱っこすると、とろんとした表情のまま幸せそうに俺の胸に顔を埋めていた。


 別荘の玄関を開けるやいなや、ツインテールを激しく揺らしたエレノアが突っ込んできた。


「おかえりなさい、2人とも! ……って、ずるーーーいッ!なんでセレフィナだけトウマくんに抱っこされてるのよ!しかも顔を赤くして!」


 頬を膨らませて、猛烈なやきもちを焼いている。ツンツン具合が可愛い。


「みんな、ただいま。セレフィナちゃんは、任務で力を使い果たしたから疲れてるんだ。今は休ませてあげよう。」


 俺はそう言って、セレフィナちゃんをベッドに寝かせた。


「あらあら、セレフィナ。大役を成し遂げたようね。トウマ様からご褒美もいただいちゃって。」


 背後から音もなく現れたイザベラさんが、妖艶な笑みを浮かべながら俺の背中に豊かな胸をぴったりと押し当てきた。背中に温かさが伝わる。イザベラさんは続けて耳元で囁いた。


「トウマ様…娘を守ってくれてありがとうございます…。」


「イザベラさん、セレフィナちゃんがいなければ勝てませんでした。」


 ——その時。


 ドン!!! と、別荘の頑丈な扉が乱暴に蹴り開けられた。デジャヴにしては最悪すぎる、下品な音だ。


「おい無能トウマァァァ! やっと見つけたぞ、こんなところに隠れてやがったか!」


 入ってきたのは、ドロドロの囚人服を着て、ハゲ散らかった頭から油汗を流している男――元Sランクギルド『聖なる光』のギルドマスター、ガルガだった。


 後ろには、元々シワシワだったのがさらに干からびてゾンビみたいになっている魔術師ミーシャと、腰を痛めすぎて完全に前屈みになっている大盾使いのザボスもいる。


 どうやら一生ドロドロの毒沼を掃除する強制労働施設から、執念で脱走してここまで復讐にやってきたらしい。マジで往生際が悪すぎる。


「……あれ、ガルガ? 何だその汚い格好。毒沼の次は肥溜めにでも落ちたわけ? ウケるんだけど。行き先はゴミ箱のはずだろう?」


 俺がソファに寝そべり、セレフィナちゃんを横に寝かせたまま声をかけると、ガルガは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。


「うるせえ! お前がエルフの王たちにチクったせいで、俺たちは地獄を見たんだよ! 毎日毎日ドロドロの毒沼を掃除させられてよぉ! だがなぁ、俺たちは諦めなかった! 警備の隙を突いて脱走し、お前に復讐するためだけにここまで来たんだよ!」


 いや、脱走してまでやることが逆恨みとか、マジで脳みそハッピーセットだな。


「お前さえ、お前のあのゴミみたいな能力さえあれば、俺たちはまたSランクに戻れるんだ! 今回は特別に許してやるから、今すぐ俺たちの奴隷に戻れ! 泣いて感謝しろよ!」


 ガルガは昔みたいに、上から目線で俺に命令してきた。学習能力が完全にゼロである。すると、俺の周りにいた美女たちが一斉に冷たい目をガルガに向けた。


「ね、ねぇ、トウマくんの知り合いなの…?」


「おにいちゃん、ミィナ、恐いよ~。」


「よしよし、2人ともこっちにおいで。」


 前回の襲撃にはいなかったミィナとエレノアが恐怖で震えている。


「……また現れたのね、不潔なドブネズミたちが。」


 立ち上がったイザベラさんの目は、もはや人間を見る目ではない。


「我が王国の聖騎士団長の名にかけて、今度こそ叩き斬る!」


 ヴィオレも剣を抜く。


 だが、ガルガたちはその美女たちの怒りよりも、別のことに向けられていた。


「ひえっ!?また新しい女が増えてやがる!? なんで、なんで無能のトウマがこんな美女たちを侍らせて、毎日毎日イチャイチャしてやがるんだよぉぉぉ! おかしいだろぉぉぉ!」


「美女が増えてなかったら勝てると思ってたのか?本当に頭が悪いな。」


 ガルガたちは嫉妬と絶望で発狂しかけていた。現実を受け入れられなくて顔が引きつっている。残念だけどこれが格差社会なんだよなぁ。


「おいガルガ、今さら戻れって言われても、俺はもう戻らないよ。見てわかるだろ?エレノアとイザベラさんの相手もできてないのに、なんでお前たちを優先しなきゃいけないんだ。」


「クソがぁ! ナメやがって! 力ずくでも連れて帰るぞ! お前ら、やれ!」


 ガルガの合図で、ザボスとミーシャがドス黒い執念の魔力を込めた武器を構えて俺に突撃してきた。脱走囚の火事場の馬鹿力ってやつか、一応、元Sランクの意地だけはあるらしい。


「トウマくん、危ない!」


 エレノアが前に出ようとするが、俺はそれを手で制する。


「問題ないよ。ほい、【概念猛毒】」


 俺はソファに寝そべったまま、指先からシュパァンと黒い霧をちょっとだけ飛ばした。


 狙うのは、こいつらの『攻撃する意思』と『復讐の執念』という目に見えない概念だ。

ジジジジジッ!!!


「ギャアアアアア!?!? またこれぇぇぇ!?」


「う、腕が、足が……っていうか、復讐したいっていう気持ちそのものが、脳みそから腐って消えていくぅぅぅ!!」


 俺の毒を浴びた瞬間、ザボスとミーシャは武器を落とし、その場にカエルのようにペタンとへたり込ん だ。


 【概念猛毒】は、敵の『戦意』すら毒殺して消滅させることができる。命までは取らないが、こいつらはもう二度と、人に刃を向ける凶暴さを持つことすらできない。…って前も同じことしたんだけど、その戦意が復活してるってことは、魔物よりもお前らの方が意地汚いのか?


「ひっ、ひいいいいい! 化け物だァァァ! 許してくれトウマぁぁ!」


 仲間が一瞬で廃人みたいになったのを見て、ガルガはガタガタと震えながら、囚人服の股間からじょわ〜っと温かい液体を漏らして失禁した。相変わらず汚くて仕方ない。そこへ、別荘の入り口からドタドタと足音が響いた。


「ハァ、ハァ……トウマ殿! 申し訳ありません!」


 突入してきたのは、脱走囚を追ってきた王宮の衛兵たちだった。


「強制労働施設から脱走した大罪人どもが、まさかここに現れるとは……! すぐに連行し、今度は一生、光の届かない地下監獄で大岩を砕く強制労働施設にぶち込みます!」


「嫌だぁぁぁ! 助けてくれトウマぁぁ! 俺が悪かったぁぁぁぁ!」


「お前は本当に地下監獄がお似合いだよ。でも…また来そうだな。」


 ガルガたちは衛兵たちにボロ雑巾のように引きずられて、惨めに泣き叫びながら連行されていった。


「ふぅ、一件落着だな」


 俺がため息をつくと、イザベラさんがすぐに後ろから抱きついてきて、豊かな胸を背中に押し付けてきた。お預けを食らっているエレノアも、ツンとしながらも、その瞳は完全にハートマークになって俺を見つめている。


「トウマ様、やっと悪い虫が消えましたね♥ さあ、次の任務までは、私たちがたっぷり癒やして差し上げますわ。」


 元ギルドの奴らがこれから地下監獄で一生大岩を砕くらしいけど、可愛い女の子たちに囲まれてる俺には、まーーーーったく関係のない話だった。


 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 

 この作品を評価してくださった方、ブックマークしてくださった方、毎話リアクションをくださる方、本当に励みになっております。ありがとうございます。


 もし『神毒の無双がスカッとした!』『登場するヒロインたちが可愛い!』と思ってくださったら、ページ下部にあります【評価☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】で応援していただけますと、毎日の執筆がすごく捗ります!


 明日も21:00に更新します!

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