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第27話 万象解毒vs万死の疫病王

「――久しいな、エルフの末裔よ。神聖なる魔術を我が身に捧げに来たか。」


 城の最深部、底なしの闇の奥から響く声は、それ自体が空間を激しく震わせる強力な精神汚染を孕んでいた。


 不完全ながらも覚醒を迎えた伝説の厄災――【万死の疫病王(プレイグ・ロード)】。その姿は、幾千の髑髏(どくろ)が融解したかのような漆黒の鎧をまとい、背中からは世界のすべてを腐らせる「死の翼」を広げた、まさに終末の権化だった。


「くっ……! なんという禍々しい魔力……!」


 セレフィナちゃんは、大扉の奥から溢れ出る圧倒的なプレッシャーに息を呑み、咄嗟に俺の前に立ちはだかった。


 彼女の綺麗な金髪が呪毒の風に激しく揺れ、胸元に飾られた贈りもののブローチが、闇の中で健気に、けれど必死に聖なる光を放っている。


「トウマ様、下がってください……! この【万死の疫病王(プレイグ・ロード)】が放つ『死の因果』は、触れるだけで魂そのものを腐らせます。いくらトウマ様の解毒魔法が優れていようとも、この呪いをまともに受けては――」


「エルフの小娘が、我が前で(さえず)るな。秩序も、生命も、すべて溶けるが良い!」


万死の疫病王(プレイグ・ロード)】がその巨大な腕を天に掲げると、古城の全域、いや王国西方すべてを一瞬にして死滅させる規模の超特級呪詛魔術――『エンドレス・ディストピア』が発動した。


 城の石壁がボロボロと崩れ落ち、大気そのものが腐ったヘドロのような紫黒色へと変色していく。国家最高位の魔術師が数百人いようとも、防ぐことすらできない絶対的な滅びの概念。


「トウマ様……っ!」


 セレフィナちゃんは自らの全魔力を王家の紋章へと注ぎ込み、命を賭して俺を守る盾になろうとした。エルフの誇りとして、そして何より愛する人の盾として死ねるなら本望だと、その綺麗な瞳に決意の涙を浮かべる。


 だが俺は彼女の細い肩を、後ろからポン、と優しく叩いた。


「大丈夫だよ、セレフィナちゃん。よく頑張って結界を解いたね。……あとは俺がやる。」


 セレフィナちゃんの前に一歩踏み出した。そして、世界を呑み込もうとする漆黒の死の波動に向けて、軽く右手の指をチッと鳴らした。


【万象解毒・終末の概念の中和】。


 次の瞬間、【万死の疫病王(プレイグ・ロード)】は自らの目を疑った。


 世界を腐食させ、すべての生命を消滅させるはずだった漆黒の津波が、俺の手前数十センチの空間に触れた瞬間、すべての毒性と殺傷力を「完全解毒」され――ただの、温かく瑞々しい『春のそよ風と、キラキラ輝く光の粒子』へと変えられてしまったのだ。


「な……!? 我が、我が放った終末の呪詛が……ただの、風だと……!? 貴様、一体何をしたァ!!」


万死の疫病王(プレイグ・ロード)】が驚愕のあまり兜の奥の紅い眼光を激しく揺らす。


「何をしたって、『解毒』したんだよ。体に悪そうだったし、何より、俺の可愛いセレフィナちゃんを泣かせようとしたからな。」


 俺は圧倒的な強者の笑みを浮かべた。今度は【万死の疫病王(プレイグ・ロード)に向けて、もう一度指をパチンと鳴らした。


【概念猛毒・不死性の毒殺】。


「が、あ、ああああああああっ!? なんだ、これは……!? 我の体内の、死の魔力が、逆に我を蝕んで……!? バカな、我は不滅の存在のはずだァァッ!」


万死の疫病王(プレイグ・ロード)】の漆黒の肉体が、自らの放っていた呪毒の因果を【概念猛毒】によって逆流させられ、内側から白い灰へと変わっていく。そしてサラサラと散って行った。数千年の封印を経て復活した伝説の疫病王も、俺の能力の前では無力だ。


「お前みたいな物騒なものは毒に飲み込まれるのがお似合いだ。」


万死の疫病王(プレイグ・ロード)】はその絶大な魔力もろとも、跡形もなく完全に消滅し、ただの水に変わって地面の草花を潤す雫となった。


 静寂を取り戻した古城の最深部。


 そこには、俺が放った【万象解毒】の余波によって、不気味な骸のようだった周囲の枯れ木や荒れ果てた玉座の間が、一瞬にして最高級の白磁と金箔で彩られた宮殿のようなト空間へと生まれ変わっていた。


「トウマ、様……」


 セレフィナちゃんは、腰を抜かすようにしてその場にへたり込んでいた。


 王国の終わりすら覚悟した絶望が、俺の指先一つで、一瞬にして完璧な日常へと塗り替えられた。その圧倒的な神域の強さと、自分を守ってくれたという事実に、彼女の胸の奥は、これまでにないほど激しく、熱く焦がされていた。


「怪我はない、セレフィナちゃん?」


 俺はセレフィナちゃんに近づき、優しく手を差し伸べると、セレフィナちゃんはその手を両手でぎゅっと握りしめ、胸の中へと飛び込んできた。


 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 

 この作品を評価してくださった方、ブックマークしてくださった方、毎話リアクションをくださる方、本当に励みになっております。ありがとうございます。


 もし『神毒の無双がスカッとした!』『登場するヒロインたちが可愛い!』と思ってくださったら、ページ下部にあります【評価☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】で応援していただけますと、毎日の執筆がすごく捗ります!


 明日も21:00に更新します!

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