第11話 ギルドを設立したんだが、周囲がお通夜状態になって・・・
隣国の天才召喚術師エレノアを5人目のメンバーとして迎えた。 俺たちは、エルフの王都にあるギルド管理総本部に足を運んでいた。目的は一つ。新しい冒険者ギルドを設立するためだ。
「……おいおい、見ろよ。あれって、元Sランクギルド『聖なる光』の裏方だった無能のトウマじゃねぇか?」
「ガルガさんたちをハメて追放処分に追い込んだっていう噂の卑怯者だろ? どの面下げてここに来てんだ?」
「そんな奴が新ギルド設立? ギャハハ! 裏方の雑魚が集まって何すんだよ? せいぜい薬草採取のDランクギルドがお似合いだな!」
受付ロビーに入った瞬間、周囲の冒険者どもが下品な笑い声を上げながら、俺に聞こえるように陰口を叩いてくる。
あーあ、どこに行ってもこういう「情報のアップデートができない可哀想なヤツ」って湧いてくるんだなぁ。
「トウマ様、あの無礼な羽虫どもの口を、今すぐ私の『魔言』で永遠に溶かして塞いでしまいましょうか……?」
俺の右腕に豊満な胸を押し付けながら、エルフの第一王女セレフィナちゃんが氷のように冷たい視線をヤツらに向ける。
「いや、トウマ殿の手を汚すまでもありません! 私の聖剣で、あの者たちの首をまとめて撥ねてみせます!」
「あらあら、ヴィオレちゃんも物騒ね。でも、トウマ様を愚弄する不届き者は、私がじわじわといたぶってさしあげますわ♥」
巨乳女騎士のヴィオレが剣の柄に手をかけ、王妃のイザベラさんが妖艶かつ残虐な笑みを浮かべる。
「おにいちゃん! ミィナがあいつらを噛みちぎってあげます! ガルルッ!」
犬耳を逆立てて威嚇する忠犬ミィナもやる気満々だ。
「まぁ待て待て、みんな。雑魚相手にそんなにカリカリすんなって。ほら、エレノア、書類の提出頼むわ。」
「言われなくてもやるわよ。まったく…。」
新加入した黄金ツインテールのエレノアが、少しイラだった様子で受付カウンターへ歩み出た。
「おいおい、お嬢ちゃん。そんな可愛い顔して、その無能のために書類を提出しにきたのか? 悪いことは言わねぇ、あんな裏方の雑魚とは別れて、俺たちのギルドに――」
受付の前に立っていた他国のAランク冒険者が、エレノアの肩に手を置こうとした。 その瞬間、エレノアの瞳が冷酷な獣のように細くなる。
「――無礼者が。その汚い手を避けろ。」
エレノアが小さく指を鳴らすと、地獄の業火を纏った魔獣『地獄の番犬』が、異空間から首だけを出して冒険者を見る。
『グルゥゥォォォォン!!』
「な、なんだこの圧倒的な魔力は……!? じ、地獄の番犬だとぉぉ!?」
「ひっ、隣国の召喚術師エレノア様だ! なぜ彼女がここに……!?」
先ほどの冒険者たちは、ケルベロスの凄まじい熱風と威圧感だけで腰を抜かし、床にへたり込んでガタガタと震え出した。
「エレノア、そこまで。これ以上の騒ぎになると後が面倒くさいからな。でも、これで誰も文句はないだろ。ギルド名は……そうだな。『万象の毒』で登録しといてくれ。」
「ふんっ……。」
エレノアがしぶしぶ地獄の番犬を引っ込める。さっきまで俺を笑っていたロビーの冒険者や職員どもは、全員が顔面蒼白になり、歯をガタガタと鳴らしながら完全にお通夜状態になっていた。
「は、はいぃぃ! 只今、登録いたしましたぁぁ!」
受付嬢が涙目で震えながらギルドプレートを俺に手渡した。こうして、裏方だった俺をトップとした、史上最強のギルドが誕生した。
新ギルドの設立手続きを終え、別荘へ戻る道中。馬車の中で、エレノアが突然、いつもの強気な態度を崩し、深刻な表情で俺の服の袖をぎゅっと握りしめてきた。その瞳には、かすかに涙が浮かんでいる。
「……トウマくん。折り入ってあなたにお願いがあるの。」
「ん? なんだよ、エレノア。改まって。」
エレノアは俯き、震える声で告白した。
「私の祖国……『グランゼリア王国』が、今、魔王軍の幹部が率いる大軍と戦争をしているの。このままじゃ、数日以内に国が滅ぼされて、私の家族も、民も、みんな殺されてしまう……!だから、私は力になってくれる人を探しに来ていたの。お願い、トウマくん……! 私の国を、救ってほしいの……っ!」
「魔王軍の大軍ねぇ。エレノアの祖国の危機ってわけか。」
うつむくエレノアを、セレフィナちゃんたちが心配そうに見つめている。俺はふっと鼻で笑い、エレノアの涙を優しく指で拭ってやった。
「なんだ、そんなことか。一大事みたいな顔するから焦ったじゃん。」
「え……? そ、そんなこと、って……魔王軍よ!?」
驚愕するエレノアに、俺はいつも通り言い放った。
「いーよ、散歩がてらサクッと行って、その魔王軍ってやつを【概念ごと毒殺】してきてやるよ。俺たちの最初の初仕事にはちょうどいいだろ?」
エレノアの祖国の危機。ちょっとお出かけして来ようかな。




