第4話「今日、全ては散る〜next hell」
オンコは首をかしげる。「今日を抜け出す?」
「はい。全人類は今日に閉じ込められ、明日を迎えることができなくなっています」と、ユマは深刻な表情で話す。
「えぇ!? そうなの!?」と、マミコは驚愕する。
「はい……オンコさん、信じてくれますか?」
「もちろん信じるよ。――でもどうしてここにいようと?」
微笑しているユマは「ここはまだオークション会場です。だから来るかもしれません。今日を終わらせることができる人が」
「なるほど――どうして今日に閉じ込められたんだろう? 原因分かる?」
「悪い人によってとしか……」と、ユマは済まなそうに答える。
「ありがとう。人為的か……ならなんとかなるかもしれないな」
「どうしてそう言えるんだ?」と、ミシェナスが鋭く言う「どうにもならないかもしれないぞ? 人の何かを変えるんだから」
「――やってみよう。楽しみだね?」
「楽しみ? ――ふっ、そうだね」
「私もよ」と、横から言ってきたのは高齢女性で「楽しみだわ、そこの女の子二人の死に顔が」と、マミコとユマを見ながら笑って言う。
「――雇われか。理解できないな、なぜ二人まで殺す必要がある?」と、オンコは聞く。
「雇われ? なんのことかしら? 私はただ憎しみでここへ来た」
「憎しみ? ――君の顔には覚えがないな」
「当たり前よ、初対面なんだから。そもそも私は君に用はないの。そこの少女二人に用があるのよ」
「どうして?」
「不愉快なのよ、若くて楽しそうな女の子が」と、高齢女性は顔をしかめて言う。
「――ちょうどいい。ミシェナス、見ていて」と、オンコは高齢女性を見たまま言う。
「見ている?」
「そうだ」
と、オンコは利き手を見る。
五枚のカードがある。
と、見た瞬間にカードが全て消える。
「オンコ!」「オンコさん!」
と、マミコとユマは同時に悲鳴を上げる。
と、オンコは顔を上げる「これからが楽しみだね、ミシェナス」と、また高齢女性を見たままで言う。
「楽しみ? ――それより平気なのか?」と、ミシェナスは困惑しながら聞く。
「気が済んだはずだ。帰ってくれ」と、オンコは高齢女性に言う。
相手は無表情な顔で「うん……でもいつかまた必ず二人を殺すから」
(何!?)
と、オンコが驚いたと同時に高齢女性はぱっと消えた。
その途端に「大丈夫なの!?」と、マミコはオンコに聞く。
「うん、大丈夫だよ。――しかし、別の意味でもちょうどよかったな」
「えっ? 何が?」
「ここがまだオークション会場なら見てるかもしれないから。私を倒そうとしている奴が。悩むことだろう、倒し方に」
「あっ、そっか」
「君達」と、オンコの後ろから言ってきたのは若い男で「君達はオークションの落札者か?」
「違うよ」と、マミコが答えた「君はもしかして品物?」
「そうだよ。だから私は言う。私は世界中の移動手段を使えなくした。人間は徒歩で移動するしかなくなった」と、男は誇らしげに言った。
「えぇ!? どうしてそんなことするの!?」
「歩くのが好きだからだよ」と、男は微笑して答えると上を向いて「私を落札したい人はいるか!」と、叫ぶ「……いないようだな」と、ぱっと消えた。
「――まずいことになったな」と、ミシェナスはオンコに言う。
「何が?」
「“黄緑の眉毛”探しだよ。歩いて探すなんて大変すぎるだろ?」
「ああ、確かに。――ユマ、明日を迎えられないってことは今日の出来事を繰り返すってことか? 記憶とかリセットされて」
「違います。繰り返しもリセットもありません」
「なら歩けるな」と、ミシェナスは苦笑してオンコに言う「大変だけどどこにだって行ける」
「……いや、違うな」
「うん? あっ、確かに徒歩じゃ行けない場所もあるな」
「それだけじゃないよ、ミシェナス」と、オンコは真剣な顔で言う。
「うん?」
「マミコちゃんとユマちゃんも、様々なことがあって生きづらいね。だから――」
屋上へのエスカレーターに乗りながら、ユミはふと溜息をついた。
屋上へ出ると、そこには一人の背中があった。
「オンコ」歩み寄りながらユミは呼ぶ。
彼は振り返る。
と、ユミはふいに立ち止まる。
「オンコ――じゃないわね。よく似ているけど違うわ。君は誰?」




