第2話「オークション〜answer」
二三分後、オンコ達は老人ホームに到着した。
「――変だな、どの部屋もカーテンすらないじゃないか」と、老人ホーム――黄色い三階建て、横長、いくつも窓が並ぶ――を眺めてミシェナスが呟く。
「オンコ君」
オンコ達は振り返る。
中年男性がいて「智恵文市の老人ホームを当たるのは無駄なことだ、オンコ君」と、親切そうに言う。
「――どうして私の名前を?」
「悪いが私にも用事がある。これで失礼したい」
「――分かりました」
「ありがとう」
と、済まなそうに言って中年男性は立ち去る。
「次はショッピングモール“ナドレ”へ行かない?」と、マミコはオンコに言う「アイス食べたいな、なんて」
「良いよ、行こう」
「本当? やった!」
十数分後、マミコは笑顔でアイスを舐めて――二階建てショッピングモールの二階にある、アイスのチェーン店の前で――いる。ところで、智恵文市を知っている人ならこのショッピングモールはあそこがモデルだとぴんとくるかもしれないが、筆者のイメージとしては札幌の伏古にある大きなスーパーである。
「人が多いな」と、ミシェナスは残念そうにオンコに言う「外は全然人歩いていないのに」
「田舎ってそういうものさ。――それにしてもよかったじゃないか、人が死ななくて。私の言ったことが実証された」
ミシェナスは微笑し「ああ、よかった。実例を見せなくてほっとしているよ」
「こんにちは」
と、オンコ達は話しかけられた。
「オークションへ行きませんか?」
と、マミコと同年輩の少女――日本人、黒髪のロングヘア、茶色い目、頭のよさそうな顔、小柄、華奢、青い長袖ワンピース、青いスニーカー――はオンコを見ながら楽しそうに続けた。
「オークション?」と、ミシェナス。
「はい、屋上であります」
「駐車場で?」と、オンコ。
「はい」
「面白そうだね。オンコ、行ってみないか?」と、ミシェナスは誘う。私も行ってみたい、とマミコは言う。
「うん、行こう」
「嬉しいです」と、少女はオンコを見ながら笑って言う「私はユマ。案内します」
「待って。この子がアイスを食べ終えてからじゃ駄目?」と、オンコ。
「もちろんいいですよ。――あの、オンコさん」
なんで私の名前を? と一瞬オンコは思ったが、ミシェナスが口にしていたことに気づく。
「何?」
「――いえ、なんでもありません」と、ユマは楽しそうな表情で言う。
駐車場に人や車の姿はなく、ただの駐車場だった。
「何もないじゃないか? ここがオークション会場?」
と、ミシェナスは不思議そうな顔で、前方にいるユマに聞く。
「はい、そうですよ。ここがオークション会場です」
と、ユマは楽しそうに答え、彼の隣のオンコを見る。
と、少女は辛そうな顔をする「“黄緑の眉毛”のことについては分かりません。ごめんなさい」
「えっ?」
ふと少女は明るい顔になり「でも他のことはだいたい分かると思います。オンコさん、何か知りたいことはありますか?」と、楽しそうに聞く。
オンコは困惑しながらも考えて「――さっき病院と老人ホームに行ったんだけど誰もいなかった。どういうことだろう?」
「それはオンコさん、君の影響ですよ」と、ユマは嬉しそうに即答した。
「私の?」
ユマは笑顔で頷く。「はい、君によって病院の患者は患者じゃなくなり、老人ホームの利用者は利用者じゃなくなったんです。――私もその一人なんです」と、ユマはオンコの隣のマミコを見る「その子もです」
「マミコちゃんも?」と、困惑中のオンコはその少女を見る。
「そうだよ、オンコ」と、マミコは笑顔で答える「君のおかげで救われたんだ。ありがとう」
依然困惑しているオンコは、ふと微笑する。
「どういう理屈なんだ?」と、ミシェナスはユマに聞く。
「それは分かりません……オンコさん! 他に知りたいことはありませんか?」と、ユマは笑顔で聞く。
オンコも微笑み「――オークションはいつ開催するの?」
「もう開催中ですよ。だから私はアピールしているんです。私は品物ですから」
「君が品物……?」
「はい」と、ユマはふいに緊張した表情になり「オンコさん、私をゲットしてくれませんか? 私は君のお役に立ちたいんです。必ずお役に立ちます! あっ、質問してください。私を欲しいと思うまでアピールしたいので!」
「君は私の対等な友達だ。物じゃない。オークションから抜けて」
「――はい、分かりました」と、ユマは笑顔で答えた。
「私も君の友達になっていいかな?」と、ミシェナスはユマに言う。
「私も私も!」と、マミコ。
「はい、お二人共よろしくお願いします」
「――どうしてオークションに参加したの?」と、オンコは聞く「言いたくないなら言わなくていいよ」
「大丈夫です。――私にどれだけの価値があるか確かめたかったんです」と、ユマは笑って答える「あとは一番になることです。あわよくばですけど。でもなれました」
「なってないよ」
「――すみません……」と、ユマはちょっと嬉しそうな顔をして謝る。
「一番じゃないよ」
その声にユマは右のほうを見て「誰ですか?」
「ほら、一番じゃない」と、少女――マミコやユマと同年輩の日本人、黒いロングヘア、茶色い目、クールな顔立ち、小柄、華奢、黄色い長袖ワンピース、黒いスニーカー――は嘲笑う「私のことも分からないようじゃね」と、オンコを見る「私はユミ。私もオークションの品物なの。だからアピールするわね。代弁者の私を」
「代弁者? ――今は誰の?」
「まず開催者よ。『ユマは君のものだ』」
「不愉快だな」
「私もよ」と、ユミは呆れたように言う「私達は眼中にないんだから」
「どういうことだ?」
「みんな目玉狙いってことよ」と、ユミはミシェナスを見る「よかったわね、死神さん」




