1章1話 喪失のスタートライン
目を開くと、そこには見知らぬ天井があった。白で埋め尽くされた空間。
病院のベッドで寝かされているらしい。そうか私、『あのストーカーの人』に刺されたんだ。
意識が覚醒するにつれて、ようやく状況への理解が追いついてくる。
身動きできず、霞んだ視界。私は辺りをゆっくりと見渡す。
傍らには、泣きじゃくるお母さんとそれを支えるお父さんがいた。
また、私は二人に心配をかけた。
人々を笑顔にしたい、そんな願いの果てがこれか。
アキラみたいに上手くは行かないなあ。
もう、疲れた。
知らない誰かを笑顔にするために、大切な二人を悲しませた。
潮時かもしれない。
その日を最後に、私はずっと続けてきたアイドルをやめた。
◆◇◆
小さい時、懐かなかった私の気を引こうと、両親は色んなところに連れていってくれた。
アキラに助けられたあと、少しだけ心を開いた事が、嬉しかったのかもしれない。
色んな場所に連れていくことで、打ち解けられると思ったのだろう。
博物館、美術館、映画館、水族館、遊園地。
色んなところに連れて行ってもらった。
実際楽しかったし、甘えられるタイミングをようやく見つけられた気がした。
中でもアイドルのライブは素敵だった。
煌びやかなステージに、美しい装いの少女たち。
会場にいるみんなは笑顔で、歌と踊りでこんなにも満たされたことはなかった。
なにより、力が湧いてきた気がした。
当時上手く馴染めなかった学校も、そのアイドルの話題を出したらみんなと一気に距離が縮まった。
嫌なことがあっても、曲の力が背中を押してくれた。
そんな時に思ったのだ。
私がなりたいのは、こういう人間だと。
誰かの心を救って、助けられる人間。みんなを笑顔にするアイドル。
「私、アイドルになりたい!!!!!」
私は初めて、両親に本気で想っていることを伝えた。
「そうか!!鈴華は世界一可愛いもんな!!!鈴華が思うように、やってみるといいよ!」
「お母さんも大賛成!鈴華なら、絶対なれる!!!」
両親は笑顔で応援してくれた。
二人の期待に応えるためにも、絶対アイドルになる!
それからの毎日は楽しくて仕方なかった。
歌もダンスも最初は全然上手くできなかったけど、できるようになった時の嬉しさはすごくて。
理想の自分に近づいているようなそんな気持ちになっていく。
あまり褒められたことがなかった私だけど、両親は可愛い、素敵といつも褒めてくれて。同年代に負けた時もいつもうんうんと、話を聞いてくれた。
オーディションも簡単には受からなかったし、周りにはたくさん努力している子達がいるのを知った。
自分も負けじと練習に励み、魅せ方を覚え、研究を始めた。
容姿は結構整っていた方だったから、書類審査は通りやすかったけど、無愛想というか緊張しやすいというか、そういう所が全然ダメで、苦手だった。
だから、明るく見えるような服装やお化粧を学んで、必至に可愛い子たちの笑顔や仕草を真似て研究した。
声の出し方ひとつ、姿勢の正し方、目線の動き、手指の動かし方、そんな些細のことで、見た目の印象は大きく変わる。
普通の子より、可愛い。それだけを武器に必死に努力を重ねた。
可愛いだけじゃ、生き残れない。常に戦争な業界。
わたしは夢を叶えるために走り続けた。
いつかアキラに会った時、誇れるように。
◆◇◆
それから4年。10歳になる頃には事務所に所属し、晴れてジュニアアイドルとなることができた。
12歳になる頃には5人組アイドルに所属し14歳から16歳までセンターであり続けた。
でもそれから少しずつ私の世界は煌びやかなものから、黒ずんでいった。
ずっと信頼していたマネージャーは、私の下着を常習的に盗んでいたし、いわゆる会食の接待なんかも増えていった。
初めて会うはずなのにベタベタと触ってくる業界の人や爽やかで売ってる芸能人もしつこく連絡先を聞いてきた。
それにストーカーにも遭うようになった。気持ち悪いメッセージも毎日送られてくるし、エゴサしたらいやらしい目線のことばかり。
有名になるにつれて、私の世界は灰色に染まっていた。
でも、それでも私は応援してくるファンためにも、必死で我慢して耐えて、色んなことを上手く交わして何とか生きてきた。
これが自分のやりたかったことだと、みんなを笑顔にできている、私は必要とされている。そう信じて。
◆◇◆
「明日久しぶりにみんなオフ被ってるし、どこかみんなで行こうよ!」
グループのひとりがライブの後、そんなことを言ってくれた。
当然行きたかったけど、私には予定があった。久しぶりにお母さんと買い物に行く予定があった。
「ごめん!私予定入ってて!」
「あっと、彼氏か〜?」
「違うよ、お母さんと最近できたデパートに買い物行くの。」
「え!あそこ!?あの駅の近くの!?めっちゃ人気だよね!ブランド品も多いし!」
「相変わらずお母さんと仲良いね〜センター様は!」
「なんだ〜!彼氏じゃないのかよ!」
「もうぉ、違うって〜それに、アイドルで恋愛はダメでしょ!」
「そだよね、鈴華の王子様は黒い羽の天使様だもんね!」
「もーそれ、他の人には言わないでよ?」
「わかってるよ!でもさ、折角だから、予定合わせて行こうね!センター様!」
「うん!」
自分でも思うけど、心を許した相手には私は甘かった。
人間の汚さというものを散々みてきたのに。
一緒に頑張ってきた仲間だから。
そんなありもしない信頼を勝手に作っていた。
みんな私のセンターを狙っていただけ。
上辺だけの付き合いだったのに。
私は心を許しすぎていた。
その結果、私はお母さんとの買い物中、ずっと私のことをストーカーしていたファンの男に刺された。
今日出かけることはメンバー以外には言っていない。つまり、そういうことだ。
その後、ストーカーをしてきた男は捕まったし、お店に行くことをストーカーに教えたメンバーもすぐに謝罪に来た。
私がセンターであることが妬ましく、ストーカーに嘘の情報を送ったそうだ。『天空鈴華』には彼氏がいてデートに向かった、と。軽く炎上すればいい、その程度の認識だったようだ。
両親は殺しそうな勢いでメンバーたちを責め立てたが、私は大事にしたくなかったので、そのまま見逃した。
だが、その後グループは解散したことを、しばらく経ってから聞いた。私の件を押し付けあいをし、私が居なくなったことで、バランスが大きく崩れたとか、色んな記事を見たけど、どうでもよかった。
◆◇◆
それから、アイドルを辞め自宅での療養を続けていたが、両親にこれ以上心配をかける訳にも行かない。
無理してでも学校に行った。
でも行けなかった。
都会の町は毎日激しい人の往来があって、誰しもが私を見ているようなそんな気分になった。
ただ、歩いているだけで背後に誰かいるような気がして。犯人はもう捕まったのに、ただ歩くのが怖かった。
学校に着く前にわたしは息切れが激しくなって、たどり着くことはできなかった。
それに学校には、同じグループのメンバーもいる。もうどうでいいと思っていたはずなのに、息が苦しくなった。
そんなことを思い出したら、足が動かなかった。頭痛も激しくなって、視界は歪んで、一歩も動けなくなっていた。
◆◇◆
そして、1ヶ月後。
わたしは通っていた高校を辞め、地方に転校した。
私は今、お父さんの車に乗って、おじいちゃんの別荘のある街に向かっていた。
車で三時間程の、都会から離れた街。
少し利便性は悪いが、景色は綺麗でなによりあそこには、アキラとの思い出もある。
心身療養のために、出来れば人が少ない場所で生活するのが一番、とお医者さんには言われた。
アイドルという仕事から離れることができる環境。大金持ちだからこそ、出来たことだけど。
そこは両親に感謝しかない。
「おじいちゃんには、丸め込まれたけど、いつでもお父さんは仕事辞めて飛んでいくからな!」
「一流企業の社長がそんな事言わないの。私は大丈夫だから。」
「仕事より娘の方が大事だよ。」
「……お父さん。」
「でも本当に、何かあったら、必ず、必ず連絡する。それだけは約束して。」
「……うん、わかったよ。」
揺れる車内。お父さんとお母さんは心配そうに呟いた。
私も心配をこれ以上かけないために、しっかり答えた。
別荘で両親から離れての暮らし。それはおじいちゃんからの提案だった。
おじいちゃんが元々管理していた豪邸。高齢により中々家に行くことができなくなり、様子を見に行くタイミングが欲しかったとの事。
私の状態も良くなかったし、療養のために行くことを勧められた。
もちろんお父さんとお母さんは猛反発した。
だが、実際のところ学校を変えたり住む場所を変えたりする必要はあった。
私が通っていた学校は芸能特化だったし、一般科に移る事も出来たけど、通学がそもそも難しかった。
通学しようと外に出ると発作が起きる。大勢の人や喧騒や雑踏が酷く苦手になっていた。
トラウマのようにあの日をフラッシュバックしたり、ライブをやっていたあの頃を思い出したりするからだ。
近くの学校に転校することも考えられたが、やはり私の家から都心部の学校に通うには電車に乗ること、バスに乗ることが必須だった。
お父さんの仕事も朝から早く送ってもらうことも難しかった。
自転車で通える圏内にも学校はあったけど、評判の悪い学校で元アイドルである私を行かせることに両親は難色を示した。
通信制という手段もあったが、それは私の気が進まなかった。別の悪いことじゃないとはわかってる。でも今人との関わりを避けたら、一生人と関わるのができなくなると思った。やることを全てやってからの手段にしたかった。
そんな平行線の話し合いをしていると、おじいちゃんが割って入り今回の提案をしてくれた。
両親と暮らすという点以外は全て条件にあっていたと思った。
それに使用人もいるようで、家の事は問題ないとの事。
使用人は女ひとり、男3人とお父さん的にはアウトらしいけど、おじいちゃんが選んだ使用人ということでそれ以上は何も言えなかった。
『絶対だめだ!そんな男だらけのところ!俺仕事辞める!』
『こんの馬鹿息子が!そんなことをして鈴華が喜ぶと思っとるのか!それに何か?ワシが用意した使用人に文句があるのか!?あのな!わしだって鈴華がいなくなるのめちゃくちゃ寂しいんだぞ!それに鈴華に手を出したら殺すと言ってある。心配するでない。』
『でもせめて、私だけでも鈴華について行ってもいいでしょう?』
『ちと、お主たちは鈴華に干渉しすぎじゃ。見守るのも親の勤めと思わんか。それに鈴華にも一人でゆっくり考える時間を与えたらどうじゃ。鈴華が言わんから言うけどな。昔からこの子はお前たちの顔色を伺っていたぞ。少しゆっくりさせてやれ。』
『でも……』
『お母さん、お父さん。私、もう少しだけ頑張ってみたいの。ダメだったら、諦める。これが最後だから、お願い。』
『鈴華がそこまで言うなら、わかったよ。』
そんなわけで私の療養のための別荘暮らしは認めて貰えた。
◆◇◆
もう新しい高校の試験は受けて通えることになっている。もともとレベル的には私が通っていた学校の方が上だった。そんなに試験は難しくなかった。
新しい制服に身をつつみ、手鏡で髪の毛や身だしなみを確認する。
童顔な顔つきに黒髪。長いまつ毛と大きな瞳。ストレートなサラサラ髪をひと撫でし、準備は万端だ。
セーラー服なんて着たことなかったけど、可愛い。
もう既に住む予定の家には荷物は送ってある。準備は整った。あとは今日一日を乗り越えるだけ。
校門の前で車を止めると、二人に見送られる。
私は決意を新たにその一歩を踏み出す。
車から降りると、サイドウインドウを開け両親が顔を覗かせる。
「いってらっしゃい。鈴華なら、絶対大丈夫。」
「辛かったらいつでも戻ってこいよ。少しの間はここで待ってるから。」
二人は暖かく見守ってくれる。
私を信じて、送り出してくれる。
都会とは違って、周りに人はそんなにいない。
周りの木々や山々も色彩豊かで、空気も美味しい。
わたしはニコッと微笑むと「行ってきます!」そう声に出して駆け出した。
夢を失って、心を傷つけて、そしてこれから再スタート。
初恋の人と出会ったこの地で、わたしはまたその一歩を歩み始める。
少しだけ、アキラに会えることを夢に描きながら。
また私に光を与えてくれるなんて、そんなことはないのに。
淡い期待だけがあった。
今の私に残っているのは、家族への愛情と初恋の淡い記憶だけ。
小さい頃に戻ったみたいだ。
◆◇◆
ゴールデンウィーク明けの学校。まだ生徒は来ておらず静けさがある。
私は職員室へと向かった。
「失礼します。」
3回ノックし、扉を開ける。広い職員室には男性の教職員が一人だけ待っていた。
茶髪に黒縁のメガネ。黒のワイシャツを腕まくりして着こなし、コーヒーを片手に座っている。
「おお、待ってたぞ。今誰もいないからここでもいいか?」
「え、あ、はい。」
事前に聞いてはいたけど、男の人が担任の先生ということで緊張する。
男の人はどこか怖いとか気持ち悪いとかそんな印象が強い。
促されるまま、用意された席とテーブルにドアを閉めてから向かう。
「ああ、いい、いい。開けとけ開けとけ。男苦手なんだろ。無理すんなって。もしあれだったら女の先生来るまで待っててもいいぞ。」
「い、いえ。そこまでは。」
「おう?そうか?ならいっか!」
目の前の先生は笑ってみせる。かなり話しやすい人だ。そういう態度を心がけているのだろうか。嫌な気分にならない。
「てか思ったより、まともなんだな。」
「え?なにがですか?」
私が椅子に腰掛けると、先生は私の顔をじっと見て疑問符を浮かべる。
「いやいや、都会暮らしでお嬢だろ?んでもってアイドルときた。こりゃあ、やべーやつとくると思ったんだけど。」
「ふふ、なんですか、それ。」
べつに面白いことを言っている訳では無いのに、つい笑ってしまう。話し方というか雰囲気がちょっと面白い人だ。
なんだか緊張かほぐれる。
「あっそうだ!なんか飲む?お菓子もあるぞ!」
先生は立ち上がると、棚からいっぱいのお菓子を取り出す。スナック菓子にせんべい、グミにアメにチョコ、本当にたくさんのお菓子が目の前に置かれる。
「あちゃーコーヒーしかねえ!ちょっと買ってくるわ!何がいい?」
「あっ!いえ、べつに大丈夫ですって!」
「いいからいいから!色々大変だったんだろ?前途を祝してってことで、少しぐらい貰っとけ!」
「ええ〜、じゃあ、いちごミルクで、お願いします」
「おっしゃあ!承った!うちの自販機のいちごミルクは美味いぜ?」
風のように職員室を後にすると、私は一人職員室に残された。
目の前に大量のお菓子を置いて。
いや、どういう状況?
わたしは緊張していたことが馬鹿らしくなり、席を立ち窓の外からグラウンドを見渡す。
朝練だろうか。生徒たちが走り込みを行っていた。
そのうちの一人先頭を走る一人の少女と視線が行く。
明るい茶髪をポニーテルで結んで走る少女。息一つ切れておらず、汗もかいていないように見える。
なにより目を引いたのは楽しそうだったからだ。
少女はこちらに気がつくと、一瞬驚いたように目を丸くすると、笑顔で手を振ってくる。
私は恥ずかしくなり、顔を背ける。
「おい!美琴何手を振って笑ってる!」
「あ、いや!可愛い子こっち見てたから!」
「集中しろ!」
「はい!すみません!応援ありがとう!可愛い君!ふぅー!!!!!」
「だから集中しろ!」
「はいよ!!」
ごめんなさい。私のせいで怒られてしまいました。見知らぬ人ごめんなさい。
ミコトと呼ばれた少女はコーチに叱責されたものの、そのまま走り込みを続け微笑んでいた。
本当に楽しそう。
大会とか目指してるんだよね。きっと。
応援しています。
私はそんなことを思った。
それからしばらくして、先生が戻ってくると、キンキンに冷えたいちごミルクを私にくれる。
ひとくち飲むと、口いっぱいに甘酸っぱさが広がってミルクの濃厚さと口当たりの良さで幸せいっぱいとなる。
「美味しすぎますね。これは。」
「どうだ?楽しみひとつはできただろ?」
「はい!」
私は微笑んだ。
「一応、事情は聞いてるけど、こっちからなんかした方がいいことあるか?」
テーブルに戻ると、優しい顔付きながら真面目に聞いてきた。
「い、いえ、特には。」
「個人的には先に男性が苦手なことは提示した方がいいとは思うんだが、どうだ?やめておいた方がいいか?」
「はい。普通の生活をするために、ここに来たので。なるべく普通でお願いします。」
「まあ、お前がそういうなら、そうしよう。だが、助けが必要な時はきちんというんだぞ。大人も周りも助けてって言われないと、動かないもんだからな。……お前の姿勢は評価する。それでも、無理なもんは無理だし、きついもんはきつい。遠慮せずに言ってくれ。ゆっくりでもちゃんと歩んでる時点ですげえんだからな。頼るのも方法の一つだ。」
言葉の一つ一つがとても今日一日で生み出されたものではなかった。
この人はかなり多くの悩み相談を受けてきて、それと同じようにこの人も悩んで来た。そんな風に思う。
「ありがとうございます。」
「まあ、さすがにアイドルが転校だからよ。男どもに手出すなっていう注意と、噂大好き女子たちに詮索はするなって言うのは、許してくれよ?」
「それはむしろ、ありがたいです。」
「そりゃあ良かった。ま、そんなもんかな。他に何かあるか?」
「いえ、大丈夫です。思いついたら聞きます。」
「おう、そうしてくれ。……ああ、あとひとついいか?」
メモに記載を続けていく先生。私が事前に提出した書類に視線を落とすと、思い出したかのように質問してくる。
「おまえのこの新しく住む予定の住所だけどな。この辺じゃあ有名な旧御三家の屋敷なんだわ。本当に間違ってないか?」
「ああ、はい。おじいちゃんの管理していた屋敷です。うちで別荘として使ってました。」
私も念の為に住所を確認するが、不備はない。
「ふーん、そっか。なんか御三家と繋がりとかあんのか?」
「い、いえ。昔におじいちゃんが友人から譲り受けたって、それしか知りません。その、御三家って言うのはよく分かりません。」
「ふーん。そっか。いや、別に大したことじゃないんだ。悪いな、変なこと聞いて。」
「いえ。あとは大丈夫ですか?」
「おう!大丈夫だ!あとこれ、俺の連絡先な。学校じゃあいえないこともあるだろうから、一応渡しておく。別に連絡しなくてもいいし、捨ててもいい。こういうあると安心だろ?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
先生は名刺入れから名刺を取り出し私に手渡す。
「……霊能協会特別顧問?なんですかこれ?」
先生から受け取った名刺には名前の他にそんな文言が書いてあった。
「ああ、別でもう一個仕事しててな。教師出てきたら、後々面倒そうだろ?」
「それは、はい。そうですね。」
私はなんとなく納得してみせると、立ち上がる。
「んじゃあ、朝のホームルーム時よろしくな。この学校はそこそこ部活で有名だ。生徒たちものんびり過ごしてる。自分の大切な何かをここで見つけてみるといい。悩んで楽しんで、青春を謳歌してくれ。……あとは、そうだな。俺のことは気軽に『拓ちゃん先生』とでも呼んでくれ。苗字呼びとか堅苦しいの苦手なんだよ。つーことで!俺からは以上!幸あれ、若人よ!」
「はい、よろしくお願い致します!た、拓ちゃん先生!」
「おう!!」
先の見えない学園生活で不安はまだある。それでもこの先生の元ならもう少し一歩先に進める気がした。
この場所でまた夢を見つけるられるかな。




