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【挿絵のみAI使用】琴線のコレクト〜異形殺しの黒天使と必然の少女〜【なろう限定】  作者: パスタ・スケカヤ
第2章 collectー妖殺しー

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2章2話 深まる謎


 突然、私たちの前に現れた『紅の悪魔』。だが、同じく突然姿を消した。


 私たちは命の危機を感じつつも、学校に戻ることができた。


 生活指導室まで着いてきた雨野くん。海道くんは扉を開く前に、止まった。


 「君はもう帰った方がいい。なるべくお友達と、人目のある場所を通って。」


 「そんな……あんなのに襲われたんですよ!?このままひとりで帰ろって?ふざけないでくださいよ!僕にも協力させてください!」


 「嘘をつくような人間と行動をするのはリスクがある。僕は君を信用出来なくなった。」


 「う、嘘!?なんのことですか!?」


 「分からないかな。早く帰ってって言ってるんだよ。」


 「なっ……」

 

  酷く冷たい眼差しを向ける海道くん。なんだか、雨野くんへ怒りが向けられている気がする。


 それに嘘って何?


 一瞬頭が混乱するが、ここで考えても仕方ないことだろう。


 私はひとまず海道くんの態度を注意する。


 「か、海道くん!そんな言い方しなくても!それに雨野くんがまた狙われたらどうするの!?」


 「……どうもしない。あれは僕たちが何とかできる相手じゃなかった。いや多分、この世界の人誰だっても対抗できない類だよ。」


 確かに、霊力を感じ取り始めた私でも理解できるぐらいには、恐ろしい相手だった。まだ胸がざわつくような感覚が染み付いている。


 でも被害が出るのをわかって、見逃すことはできない。彼を放置する理由にもならないはずだ。


 「それは、見捨てるってこと?」


 私は少し声色を低くし、軽蔑するような目線を向ける。


 海道くんにはこれぐらいしないと伝わらない。


 私が感情的になっていることに気がつくと、海道くんは柔らかい表情になって説明を始める。


 「いや、そんなことにはならないよ。あいつは何故か人目に付くことを恐れてターゲットを襲っている。被害者も全員人目のつかないところで襲われていた。だから目撃者も少ないし大きな問題になっていない。それにさっき無関係だった僕や天空さんを攻撃しなかった。……もしかしたら、周りを巻き込みたくないのかもしれない。」


 海道くんの言葉には説得力があった。


 被害者は全員人目のつかないところで襲われていた。それに目撃情報も少ない。だからこそ被害にあった場所の情報もなかった。


 そして雨野くんが持ってきてくれた情報は、被害者達は人目のつかないところで襲われた、というもの。森で3名襲われ、実際にその現場で『紅の悪魔』は現れた。そして私たちは生き延びている。特に能力の干渉を受けることもなく。


 逆に言えば、人目のつくところで、複数人で行動していれば、襲われない可能性が高いということになる。


 現状、紅の悪魔を対処することは難しい。


 それに私たちが受けた依頼は『紅の悪魔を調べること』。紅の悪魔を倒すことでも雨野くんを守る事でもない。


 それでも危険があるなら放置はしたくないと思ってしまうのは、偽善だろうか。


 延々と思考を続け、難しい顔をしていたと思う。


 すると、海道くんはため息をついて微笑む。


 「……わかったよ。……一人護衛をつけた。これでいいかな。」


 海道くんは渋々瞳を閉じて、指を弾く。私に対して『これでいいんでしょ?』と言いたげだ。


 私はコクリと頷く。


 「わかりました。今日のところはこれで失礼します。……紅の悪魔のこと、任せましたよ。」


 雨野くんは納得したのかその場から立ち去る。


 雨野くんの姿が見えなくなったところで、私は海道くんに目線を送る。


 雨野くんが嘘をついている。そのことについて、聞きたかったからだ。


 言わなくても伝わったのか海道くんは話し始めた。


 「最初から少し違和感はあったんだ。」


 「違和感?」


 「彼は紅の悪魔のことについてやけに詳しかった。一緒に聞き込みしてわかったと思うけど、そんなに事件のことって分からないはずなんだ。それなのに、雨野くんは最初から『妖殺し』とか『妖の血が強いひとが襲われてる』とかそんな話をしていた。」


 「それは、噂で聞いたんじゃないの?」


 「それを言われたら、そうかもだけど。逆に天空さんは聞いたことあった?紅の悪魔なんて。」


 「なかったけど……でも私は学校内で起きてるいじめのことだって、知らなかったし。」


 「その件は天空さんが転校してきた頃には落ち着いていたからね。最近になって過激化してたみたいだけど、紅の悪魔が出てからは落ち着いたようだし。知らなくても無理はないよ。」


 「でもそれだけじゃ、嘘ついてる、とはいえなくない?」


 「そうだね。だから、警戒することにしたんだ。」


 「警戒……?」


 「猿飛に見張らせていた。」


 「え、それって。」


 


 その発言は、さっきの護衛の話が出る前から見張らせていた、ということだろうか。その中で怪しい行動があったのだろうか。


 それなら、信じない理由もわかる気がする。


 海道くんは私の顔を見て、その通りと言うように頷いて見せる。どうやら、私の考えている通りのようだ。


 「雨野くんはこの一週間、僕たちを見張っていた。」


 「なっ……」


 「なにか、知られたくないことがあったのかもね。」


 確かに。今日現れたタイミングは次の調査に移行するタイミングだった。


 私たちにイジメの件を調べさせないようにするため?


 でもどうして?


 「まだ他にも怪しいところはあるよ。事件の被害者について思い出してみて欲しい。目撃情報があったのは誰だった?」


 「え、えっと。確かスーパーでアルバイトしている女の子……?」

 

 「それと?」


 それと?もう他に目撃情報あったっけ?


 海道くんの言葉に頭を悩ませる。


 「詳細不明の目撃情報があったね。」

 

  「ああ!あったね。それで?それがなにか関係あるの?」


 「雨野くんは目撃者から話を聞いてあの森にたどり着いたんだよ。少しおかしくない?」


 「なんで?別に変なことはないような気がするけど。」


 「おかしいことばかりだよ。スーパーの目撃者は主に主婦。そもそも場所は人目があった。それなのに、雨野くんの持ってきた情報は『被害に遭った人は人気のないところで襲われた』だ。そもそもスーパーではないし、目撃情報は少ない事件だ。」


 「じゃあその、詳細不明の目撃情報の目撃者から聞いた……とか?」


 「普通に考えたらそうなるよね。でも雨野くんはあの森で『3名襲われた』って言ったんだ。」


 「あっ!」


 ようやく話が見えてくる。


 それじゃあ被害にあった人数が合わなくなるからだ。

 

  詳細不明の目撃情報があったのは2名の被害者。


 あとは情報が無い6名。内の一人芽木くんは襲われたかどうかも正直分からないような人だ。


 「でも待ってよ。その目撃通報をした人は自分を含めて3名襲われたって説明したなら、別に問題はなくない?」


 「確かにそうだね。でもこうも考えられないかな。───────その通報をしたのは雨野くんだった、とか。」


 「え?待ってよ。なんでそんなこと隠す必要があるの?普通に紅の悪魔に襲われたから助けて欲しいって相談に来れば良くない?」


 「雨野くんは霊能協会に相談したけど、取り合って貰えなかったって言っていたよね。いくら妖怪派が襲われているからってそこまでするかな。」


 「人の感情はそれぞれだよ。それだけ怖かったんじゃないの?」


 「ならどうして───────そんな怖い相手がいるかもしれない現場に行こうとしたのかな。」


 言われてみれば、不自然すぎる行動だ。


 私は海道くんの問いかけに答えることができなくなった。


 「つまり、どういうこと?」


 「あの場所に行けば紅の悪魔が絶対に現れる自信が彼にはあった。そして僕たちに紅の悪魔がいることを認識させた。こうでもしないと、対処して貰えないから。」


 「その仮説が正しいとして、そんなまわりくどいやり方、変じゃない?少し飛躍しすぎというか……」


 「そうだね。証拠もある訳じゃない。ただの妄想だよ。……でも、信用出来ないのもわかるでしょ。」

 

  それはそうだ。現に私たちのことを監視してた訳だし、持ってきた情報も変なところが多い。


 海道くんの話を信じるなら、紅の悪魔が出現するとわかっててあの場所に連れていかれたことになる。


 それは言い換えるなら、故意に私たちを傷つけたことと同義となる。

 

  海道くんが怒っていたこともそれなら納得だ。


 「何も考えられてなくて、ごめん。」


 わたしはなんだか自分の推理能力の無さや無力感に苛まれる。私何もやってない。

 

 「そんなことないよ。君はフラットな意見で物事を客観的に見てくれている。調査するなら、色んな意見があった方がいい。バイアスかかるのがいちばん良くないからね。」


 「そんなもん?」


 「そんなもんだよ。気楽に行こう。ひとまず次は、なんで妖怪派の混血が襲われやすいのか調べる。それでいいかな?」

 

  「そうだね。」


 切り替えるように微笑む海道くん。私は少し笑って頷く。


 


 雨野くんはどこかで、嘘をついているかもしれない。


 それでも紅の悪魔は実在し、人を襲うこともわかった。


 それなら、何故襲うのか。次はそこを調べる必要があるだろう。


 だが、まずは報告だ。


 紅の悪魔は危険すぎる。


 現地調査はストップがかかるだろうか。そもそも調査を打ち切ることになるかもしれない。


 それぐらい紅の悪魔にはもう会いたくない。


 そう言えば、今回はアキラ助けに来てくれなかったな。


 アキラならきっと、簡単にやっつけてくれるんだろうな。


 ───────アキラが現れるのも条件とかあるのかもしれない。


 少し考えすぎだろうか。



 そんなことを軽く考えながら、生活指導室に入室する。



 ◆◇◆


 扉を開けると、ちょうど来客があったようで、犬飼と拓ちゃん先生が応対していた。


 そこにいたのは、首藤さんと───────神威さんだ。


 「神威さ───────」


 私が神威さんの名前を呼ぼうとした刹那、黒い影が神威さんを包み込みその姿は異形へと変わっていく。


 「なっ……!?」


 そうだ、神威さんは私と近づき過ぎると異形化するんだ。


 学校内にいるなら、これぐらい起きて当然のことなんだ。


 そして、私は気持ちを押し殺して避け続けていた神威さんに自ら歩み寄った。


 ───────必ず何とかすると誓って。


 脳内で鳴り響く警鐘とは裏腹に思考はゆっくりと進んでいく。



 呆気にとられ動けない私。


 海道くんはすぐに槍を形成し構え、首藤さんは首を長く伸ばし神威さんを拘束する。


 そして、犬飼が神威さんに銃口を突きつけ、弾丸を打ち込む。


 「えっ!?」


 躊躇いのない一撃。止めることも、理解することもできなかった。



挿絵(By みてみん) 


 銃弾を打ち込まれた神威さんは、その場に倒れ体から影が消えていく。


 「神威さんッ!!」


 私は焦る様に神威さんに近づこうとするが、先生に頭を叩かれる。


 「落ち着け。死んでない。異形化を抑えたんだ。」


 「……え!?で、でも銃で撃たれて、い、犬飼が!」


 「人聞きの悪い言い方しないでくれる?……これは私の霊能力。弾丸に私の霊力を込めて撃っただけ。死んでない。霊力と妖力のバランスが急激に変化したから気絶してるだけ。……それよりアンタが近づくとその人、異形化するから離れて。」


 「わ、わかった。」


 混乱する私に呆れたように説明してくれる犬飼。


 ようやく冷静になってきた。


 そうか、犬飼も霊能者だった。


 死んでないなら良かった。


 「すみません。わたしが無理やり連れてきたからこんなことに。」


 「いいや。同じ学校にいるんだ。遅かれ早かれこういうことは起きただろ。俺らがいるときでむしろ良かった。少なくとも3m以上は離れないと危険らしいな。……ひとまず神威は保健室だな。依頼を海道と天空にもしてやってくれ。」


 申し訳なさそうに顔を伏せる首藤さん。いつの間にか首の長さは戻っていた。


 先生は話しながら神威さんを抱き抱えると、部屋から出ていく。


 「……空気最悪ね。お兄も槍しまって。」


 「あ、うん。ごめん。」


 犬飼は腰に手を当てため息をつく。海道くんもようやく気が抜けたようで、槍が消える。


 銃やら槍やら、霊能者って武器どこからでも出せるのかな。


 「依頼の話をしましょうか。首藤さん。」


 「……は、はい。」


 未だ顔を伏せる首藤さん。


 一体どんな要件なんだろう。


 神威さんと首藤さん、ふたりが依頼に来るなんて。


 全員が席につくと、首藤さんは話し出した。


 「私の……というか、美琴ちゃんの依頼は、『大鳳妃奈』さんを助けて欲しい、です。」


 また大鳳妃奈。


 大鳳妃奈を助けて欲しい、それが首藤さん、いや、神威さんの依頼内容?


 「詳しく聞かせてもらってもいいですか。」


 海道くんは真剣な眼差しで問いかける。


 知り合いらしいし、当然か。


 それに、なぜかはわからないけど、今回の件とも関係ありそうな気がする。


 「大鳳さんが最近学校に来ていないのは、みなさん知っていますよね。」


 「そうね。『あの堅物生徒会長が』ってやたらと噂になってる。」


 「今更だけど、もしかして、面識がないのは私だけ?」


 「あっ、そっか!鈴華さんは転校生だからまだ会ってないのか!」


 首藤さんが驚いたように目を丸くする。


 この反応でどれだけ有名人だったのか想像出来る。


 「天空さんが転校してくるまでは学園のアイドル生徒会長、なんて言われるぐらいには人気者だったよ。」


 海道くんが優しく説明してくれる。人気だったのはわかったけど、なんでそこで私の名前が出てくるんだろうか。私はそのまま疑問符を浮かべる。


 「なんでそこで私?」


 「あんたね。本当にアイドルが転校してきたんだもの。呼びづらいに決まってるじゃない。」


 「……ああ、そういう。」


 そういうことか。犬飼の説明でようやく理解する。


 どうしても自分が芸能人だったという自覚が欠落する時がある。前の学校はみんな芸能人だったからだろう。


 自分がなにか特別な存在というのはあまりしっくり来ない。


 自分にできることを全力でやっていただけだし。


 「個人的には人気者というか、小うるさい人って感じ。堅物というか、真面目というか。美人だけど、アイドルって言うよりそのまんま生徒会長って感じ。」


 「まあ確かに、凄く厳しい人なんだけど、規律を重んじるとても立派な人だね。」


 犬飼と海道くんがそれぞれ印象について話してくれる。


 美人で真面目な人、か。


 なんで学校来なくなっちゃったんだろう。


 「美琴ちゃん曰く『鈴鹿にゃんに〜可愛さ足した人だよ!』だそうですよ。」


 「ぶん殴ります、あの人。」


 何を思ったのか、首藤さんはご丁寧にモノマネしながら私に攻撃してくる。


 誰が可愛げないよ!!言われなくてもわかってるよ!


 というか、あの人私のファンなんじゃないの!?


 「まあまあ落ち着いて。」


 「まあ確かに、アンタって割と頑固よね。口悪いし。可愛げないわ。」


 「ぶん殴ってあげようか?皐月ちゃん♡」


 「語尾にハート付けても言ってることが物騒だよ。」



 


 「えと、まあ、そんな感じで人気のある人で、美琴ちゃんとは昔からのお友達らしいんですよ。」


 私たち三人がくだらないやり取りを続けていると、首藤さんが話を進めてくれる。


 「それで?助けて欲しい、というのは?」


 ようやくここから本題だ。


 不登校になっているのを助けて欲しいのなら、神威さんがまずは話をしたり相談に乗ったりするのが自然の流れだと思う。


 それなのに、私たちを頼ってきたり、首藤さんがいるのはなんでなんだろう。


 「美琴ちゃんは大鳳さんが学校に来なくなってすぐに会いに行ったそうです。でも一向に学校を休んでいる理由は話してくれなかったみたいで。」


 「仲がいいからこそ、言えなかったんでしょうね。」


 「私もそう思います。……それで、どうしようも出来なくて悩んでいた時にとある噂を聞いたそうなんです。」


 「……噂?」


 「はい。大鳳さんは風紀委員と一緒に妖怪派の活動を牽制し取り締まっていた、そのせいで妖怪派の方たちから酷いイジメを受けていた、とか。」


 妖怪派の過剰なイジメ……。やっぱり関係してくるのか。となると、紅の悪魔とも関係があるかもしれない。


 それにしても、いじめから人を守って虐められる。とんでもない話だ。


 

 でも、考えれば簡単にわかることだ。


 過激化する妖怪派のイジメ。


 そんなのを取り締まっていたら、被害に遭う可能性だってある。


 大鳳さんはそれをわかっていて、活動を続けていたんだ。


 自分を犠牲にして。


 多分大鳳さんが独自で動いていたんだろう。


 学校側は対応が遅かった。もしくは、取り合ってくれなかった。


 その点、風紀委員は活動の名目に近いものがあって動きやすかった。だから、一緒に活動していた、そういうことなんだろう。


 そこを狙われた。活動の邪魔をする大鳳さんを排除しようとしたんだ。酷い話だ。


 「それで事実の確認も含めて今日来た、と。そうですね?」


 思考を続ける私を他所に犬飼が話を進める。


 「そうです。もともとは私だけを行かせるつもりだったんです。『鈴華にゃんにあったら、危険だから、お願い』って。……でも私、なんとかなるって、大丈夫だよって、美琴ちゃんが鈴華さんのこと大好きなの知ってたから。……危険なことをしてしまい申し訳ありません。まさか、異形化するなんて。」


 「謝る必要ないですよ。人が異形化するのは隠されていることですし。それを選んだのは神威さんです。」


 申し訳なさそうに頭を下げる首藤さん。私が言葉を紡ぐ前に犬飼がフォローしてくれる。


 「私は何もできませんでしたけど、実際みんな無事ですから。もう謝らないでください。先生も気にしなくていいって言ってたじゃないですか。……それに首藤さんが謝るなら、私にも非があります。もっと気をつけるべきでした。」


 こないだ神威さんと話をするために首藤さんの力を借りた。


 私が歩み寄ろうとしていたことを首藤さんは知っていたんだ。

 

 だからこその提案だったんだと思う。


 それに心構えが足りていなかったのは、本当のことだ。


 もう少し注意しなければならなかった。


 「そんな……鈴華さんが謝ることでは……」


 謝りあいが続く中、先生が戻ってくる。


 「2人とも話は聞けたか?」


 先生の問いかけに私たちは頷く。


 犬飼と先生は事前に聞いていたんだろう。


 「個人的にはまずは本人に会うしかないと思ってな。事実確認もそうだが、これは本人の心の問題だ。ほんとうに助けを求めているなら俺たちが動くべきだろうな。でもそうじゃないなら、見守るのは必要なことだ。」


 全員がその言葉に納得してみせる。


 「大鳳の方は俺がつこうと思う。さすがに教師はついた方がいいだろう。それから、面識がない天空も来い。知らない間柄の方が話せることもあるだろ。」


 「え、でも私、別の依頼も受けてますけど」


 「そっちは海道に任せる。いいな。」


 「ちょうど良かったです。個人的に調べたいこともあるので。」


 「だそうだ。」


 「は、はい。わかりました。」


 私は渋々承諾する。


 初対面の人にいきなり凄い重たい話、あまり気は進まない。


 でも確かに、面識ない方がいいかもしれない。


 それに大鳳さんは神威さんに話さなかったみたいだし、身近な人に心配をかけたくないのかもしれない。


 流石に適任か。


 紅の悪魔の件は正直足手まといになっていたし、仕方ないね。


 「は!?ちょっと待ってよ!私も直接話したことは無いけど!?まさか、またここで待機なわけ!?」


 犬飼が立ち上がり抗議する。


 もはや受付嬢だな。いや番犬か?


 「まあ、だってほら、天空ここに残すと面倒そうだし。」


 「先生つけないなら、面倒な依頼来るかもだし!相談は締め切って、私はお兄と行動させて!」


 「そういう訳には行かない。迷える子はしっかり導かないとな。面倒な依頼対策は首藤についてもらうことで解決だ。」


 「え?私ですか?私は部活が……」


 「三年で茶道部部長、オマケに風紀委員に助けられた経験があると。適任だな。」


 「えぇ……」


 強引に手伝わされる首藤さん。流石に苦笑いだ。


 犬飼はお餅のように頬を膨らませている。


 そろそろ本当にお兄ちゃん不足かもしれない。


 ひとまず方針は決まったみたいだ。


 「よし行くぞ、天空。」


 「は、はい!」


 先を急ぐ先生。私は遅れてついていく。


 だが、首藤さんが私の袖を引っ張り足を止めさせる。


 「え、なに?」


 「お気を付けて。」


 「う、うん。」


 いつにも増して真剣な顔で言い放つと、さらに耳元で小さく囁く。


 「鈴華さんを監視している人がいます。ご用心ください。」


 「……わかり、ました。」


 私を監視?どういうこと?


 少しだけ怖くなる。誰が何のために私を見張っているの?いつから?


 もしかして紅の悪魔?もしくは、雨野くんがまだ監視しているとか?


 それとも───────アキラ?



 


 何も分からない事柄の連続の中、ただ一つだけわかることがあった。



 私たちはまだ事件の入口に立っているだけだ。


 紅の悪魔、妖怪派のイジメ。


 そして、大鳳妃奈。


 次は監視ときたか。


 この先どうなるのか、私には全く見当もついていなかった。



 

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