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機械仕掛けのドラグーン ~遺伝子操作の最高傑作は、機械の体で復讐する~  作者: 纏笛


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第6話 第一章(2/3) エースの転落

遺伝子操作によって生まれた完全な人間――エース。


その能力は、あまりにも人間離れしていた。


それでも彼は、妹とともに“普通の高校生活”を望んでいた。


友人に囲まれ、笑い合う日々。


だが――その平穏は、たった一度の悲劇で崩壊する。


全てを奪われたとき、彼は“人間”でいられるのか。


登場人物

エヴァン・クリスティアン・アトラス:『Asエース』

ブルーノ:エヴァンの親友

ミア:エヴァンの彼女

マリー:エヴァンの妹

ミキ・竜宮:エヴァンの同級生

アカリ・竜胆:エヴァンの同級生

「エヴァン。そういえば進路はどうしたの?」


 エヴァンは少し躊躇したが、ゆっくりと告げた。


「『ガーディアン』になろうと思う」


 ミアは驚く。


「どうして? 私と一緒に研究者にって……」


 ミアのもつパッドには知性数値がAと表示されていた。


「俺の知性数値はAだが、ミア程じゃない。いろいろ考えたんだ。俺がどうなれば一番皆のためになるかって」


 ミアは食い下がる。


「そんな……。私と一緒に病気を治す研究者になるって……」


 エヴァンは優しく微笑んだ。


「ミアなら俺と一緒じゃなくても結果を出せる……。そうだろ?」


「そんな……」


「それに俺はいなくなるわけじゃない。一緒に働けなくても、一緒に助けあって行けばいいじゃないか」


「そう言うことじゃない!」


 そう言うとミアは泣きながら走り去って行ってしまった。その様子を見て溜息をついたエヴァンの後ろから声がする。


「とうとうミアに愛想をつかされたらしいな」


 エヴァンは振り返った。


「ディランか……。何か用事かな?」


 エヴァンは180センチと高身長だが、同じくらいの高さの青年がそこに立っていた。


「ふん……。俺だって別に話しかけたいわけじゃない」


 そう言うとディランは二枚のチケットを差し出した。


「これはなんだ?」


 ディランはあまり言いたくなさげだった。


「今度うちでやるパーティの招待だ。親父がお前に会いたいと言ってきかない」


 最後の一言を言う時、ディランは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。


 それを見てエヴァンはどこか察した。ディランの家は裕福で父親は政治家だったが、息子のディランに駆ける期待は大きく、デザイン・チルドレンとして最大限の技術が使われていた。


 しかし、ディランの総合評価はBだった。ゆえにディランは常にエヴァンに対して劣等感のようなものを持っており、たびたび敵意をむき出しにしていた。


 エヴァンはそんな背景をしってから、ディランに対してはむしろ同情の気持ちを持ち始めていた。


「妹と一緒でもいいか?」


 ディランはうなずいた。


「元から、妹とお前の分だ。だがミアなら連れて来ても構わない。ガードにIDは連絡しておく」


 エヴァンはチケットを受け取るとそれをポケットにしまった。


「お前の能力値の高さを俺は認めていない。どうせお前らの親父が何か裏工作をしたに決まっているからな。いずれ真に優れているのは俺の方だと証明されることになる……。肝に銘じておけ」


 一瞬エヴァンの表情が変わった。


「お前の人間に対する評価基準はアビリティ・パラメータの総合評価値だけなのか?」


 ディランは黙った。


「そうじゃないだろう……。お前の優れた部分は他にもある。リヴァン・エネルギーの論文なんて俺は感動した。あれは俺には書けない」


 ディランはうつむく。


「お前のそう言うところが気に食わないんだ」 


 そう吐き捨てるとディランは駆け出して行った。様子を見てブルーノが近寄って来る。


「相変わらずだな。ディランの奴」


「そうだな。あいつも大変なんだろう」


 エヴァンは渡された招待状を見ながら話す。


「お前ってやっぱすげえな。俺だったら親父出されたら殴り飛ばしてるぞ」


 ブルーノはエヴァンが怒らないことを不思議に思っていた。


「奴のストレスの根源は本質的には俺の人間性に対してじゃない……。親からの偏った評価軸の押し付けによる自己肯定感の喪失なんだ。誰もあいつの本質を評価しないなら俺がする」


 ブルーノは肩をすくめた。


「さすが対人評価Aだな。勉強になるよ」


 アビリティ・パラメータの評価対象には大きく分けて三つのカテゴリーがある。運動能力、知性

そして対人能力だ。そして三つのそれぞれに対して五角形の詳細項目がある。


 エヴァンのアビリティは対人評価も含め全てA、その異次元のバランスがAs(エース)としてもてはやされる一つの理由でもあった。


「俺のやり方が、必ずしも当たっているわけじゃない。それに正直あいつと話すのは少し楽しいんだ。最近は俺に直接ネガティブな感情をぶつけてくれる奴はすくない」


 ブルーノはこれに顔をしかめて見せる。


「おいおい俺が物足りないみたいじゃないか」


 エヴァンは肩をすくめて笑った。


 その日の午後は、初期テストの返却があった。成績順に生徒が先生に呼び出されていく。


 エヴァンのクラスでは当然のようにエヴァンが一番最初に呼ばれる。テスト結果を手渡されるときにエヴァンが微笑みかけると、女のミリア先生も思わず微笑み返してしまう。


 中間ほどでブルーノがよばれ、周りの皆におどけた表情をする。そして最後に、アカリ・リンドウという名前が呼ばれた。眼帯を付けた長髪の女生徒が、トボトボと出て来る。


 ミリア先生はエヴァンの時と打って変わって厳しい表情を浮かべながら、テストを彼女に手渡す。そして、「あとで個別で話しましょう」と告げた。

 

 アカリが自分の席にもどると、近くにいた小柄で眼鏡の女生徒が彼女の頭をはたく。


「痛いよ。ミキ」


「あんたねえ……」


 授業が終わった後の休憩時間にエヴァンはブルーノに問いかける。


「アカリ・リンドウか。彼女先週は眼帯してなかったよな」


 ブルーノは面白そうにつぶやく。


「なんだ? 気になるか? アジア系が好みだったとは知らなかったな」


 茶化すブルーノにエヴァンは呆れる。


「そうじゃないが……」


「たしかに先週は無かったな。どうせこけたりしたんじゃないか? 頭も良くないようだし」


 これが聞こえたのかミキはキっとブルーノを睨んだ。アカリは恥ずかしそうにミキを連れて教室を出ていく。


「いや、こけるとは考えづらい。運動能力はBを超えてるはずだ」


 ブルーノは驚く?


「は? あいつがか?」


「間違いない」


「どうして知ってる。パッドを見せてもらったのか?」


「体幹を見ればわかる。筋肉の質も見ている感じ平均値を大幅に超えている。身長も170を超えているのに身体操作もかなりできるはずだ」


 ブルーノは半ば呆れながら疑問を呈した。


「本当か? そんな話は聞いたことないが……B以上なら噂になっているだろ」


 エヴァンは納得いかなそうだったが、特に気にせずに帰り支度を始めた。


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