第27話 第二章 野生のイルザ (1/6)
女刑事イルザは、部下とともにホテル・エアリアの事件を調査していた。
並行して行われるテロ組織『ラビド・ミスル』の一斉摘発。
エースの従姉妹であるイルザに課される試練とは?
登場人物
■刑事
イルザ:女刑事
アレックス:イルザの後輩
ラルフ:重大犯罪捜査課 本部長
■チーム:マッド・ドラゴン
エヴァン・アトラス:主人公 通称『As エース』
Dr.竜宮:科学庁のお荷物
ミキ・竜宮:エヴァンのクラスメイト
アカリ・竜胆:エヴァンのクラスメイ
ホテル・エアリアでの事件が起こった次の日、女刑事イルザは部長から呼び出されていた。
「入りたまえ」
イルザが入るとその部屋には『重大犯罪捜査課』本部長のラルフがデスクに座って待っていた。
「ガーディアン・ブルーまでつけて、援護対象に死なれるとはな」
イルザは頭を下げた。
「すいません。敵を過小評価しました」
ラルフは腕を組みながらしゃべる。
「死因は狙撃だったな。鬼人には仲間がいるのか?」
「調査中です」
「何もわかってないと言うことだな」
イルザは歯を食いしばる。ラルフはとにかく厳しい人間だった。
「お前に鬼人を担当させている意味を本当に理解しているか?」
イルザは返せない。
「それは何がなんでも絶対に捕まえろと命令されているからだ。そのために一番優秀な奴を入れている。だが、どうやら俺の見立ては間違っていたらしい」
イルザは間発入れずに返す。
「それは外す、という意味でしょうか」
ラルフは笑う。
「お前にこの手のやる気の出させ方は通用しないな。俺が言いたいのは、手段を選ばずにやる覚悟が見えないってことだ」
イルザは反論する。
「私は最大限あの時やれる範疇でリソースを配置してます」
「『ガーディアン』のことか? だとしたらぬるいな。あいつらは守りであって攻めじゃない。もし本気で捕まえるつもりなら増員もある。守りの観点もそうだ。庇護対象にもプロテクターを常時させるべきだった」
イルザは少しイラついた。
――後からならいくらでも言える。
「もう一度だけお前にチャンスをやる。手段を選ばない姿勢を俺に見せろ。そうすりゃ勝手に成果はついてくる。お前は捜査において本当に勘所を理解している。しかしその勘所にフルベッドするのを、まだ理性が邪魔している。それが気に食わないんだ俺は」
普通は結果を求める。しかし、ラルフは違った。彼は管理職としては珍しくプロセスを重視する。
あまり結果を気にしていないように見えるのだ。イルザはたまにどうやって彼が管理職の仕事を回しているのか気になることがあった。
「わかりました。肝に銘じます」
そう言うと、イルザは部屋から出る。
廊下を歩きながら、すぐ空中に画面を出すと電話のアイコンを押した。
「何か、見つかった?」
画面からは後輩であるアレックスの音声がきこえてくる。
「一応、見せたいんですが、映像分析班のモニタールームに来れます?」
「すぐ行く」
イルザがモニタールームにつくと、アレックスそして映像班のナターシャがいた。
「いいの見つけてくれましたよ」
アレックスは得意げにそう言うと、ナターシャに合図した。ナターシャは座ったまま空中で映像の再生を始める。
「これが当日の映像ですね。撃たれた瞬間です」
ガーディアン・ブルーが男を抱えて降りてくる。次の瞬間、レーザーが一瞬横切り、男の意識がなくなった。そこで映像が止まる。
「少し巻き戻しますね。」
映像を巻き戻すと、男の胸をレーザーが完全に撃ち抜いている。
「これは何?」
イルザの問いにナターシャが答える。
「レーザー兵器の類ですね。他の国の戦争でいくつか使われた事例があります。しかしここまで線が細いのはあまり見たことないですが」
「レーザー兵器……。ギールとの戦争で使われたTHELαが最新のはず、ただあれは、容量が大きかったね」
ナターシャは頷いた。
「そうですね。まあ一旦どこから来たのか、そこを辿りましょう」
空中に事件現場のホログラムを映すと、徐々にレーザーの軌道を示すホログラムを追加して、あるポイントを指し示す。
「実際は100メートル先のここから撃たれています。しかしそこにあるのは」
「何これ……何もない。完全に空中からいきなりレーザーが出てるように見える」
アレックスはうなずく。
「初めは僕らもそう思いました。でも」
ナターシャがさらにいくつかの画像を繋げる。
「これは曲がってる?」
「そうですね。レーザーが空中で曲がってます。さらに……」
ナターシャが大量の写真を追加する。最終的にかなり大きめのホログラムになった。
すると、レーザーはかなり遠くの建物の1階から斜め上に放たれ、計四回曲がって男に当たってることがわかった。
「これは……。こんなことが……。だからダウナーに引っかからなかったのね」
「実際の発射はこの廃ビルの一階からです。残念なことに付近の映像には誰も映ってなかったですが」
イルザは言う。
「ここに行きましょう。行くよアレックス。ナターシャは引き続き映像の解析を進めて」
二人はうなずいた。
アレックスは廃ビルに向かう道中の車内でイルザに聞いてみる。
「ラルフ本部長なんて言ってたんです? まさか外れないですよね」
「大丈夫。いつものお小言だった」
イルザはアレックスに気を使った。
「まあ、外れたらまた次の課にも連れてってくださいね」
「あんたは他のところでやりたくないの?」
アレックスはニヤッとした。
「まだ僕はあなたから学ぶことがあります。それが終われば勝手に消えますよ」
イルザはアレックスのこういう野心家かつ以外にドライな所を高く買っていた。
廃ビルに着くと、アレックスが場所を教える。
「一回の窓側ですね。その辺りです」
イルザはその場所に立つと、あたりを見てみる。
「黒い跡がある、ここで撃ったんだろうね」
アレックスは解析を始めるためにいくつか小型の調査用ロボットを出した。
「何か手がかりを掴めるといいですが……」
イルザは床についている黒い跡を見ながら考えていた。
「やっぱり相当な電力を使ってるはず……。でも他からエネルギー引いてるようには見えない。蓄電装置があるんだろうね」
アレックスが言う。
「そこまで大きな装置使ってんなら目立ちそうですけどね」
イルザは歩きながら、昔の鬼人の映像を思い出す。
「鬼人が他の人間になれるのは、スキンの技術を使ってるからだって話があった。それが正しいとすると、協力者も同じ技術が使えるはず」
「でもそもそもビルに近づいてる奴がいないんですよ?」
「透明化のスキン。持続時間が少ないけどそう言う技術があったはず」
話を聞いていたナターシャが指摘する。
「たしか今の技術だと最長で10分程度です」
「10分か、少し時間範囲を広げて、映像分析をかけてみて? 何か引っかかるかもしれない」
ナターシャが了解と返事をする。
イルザはその後も歩き回りながら周りを見ていた。
「エネルギー発生のトレース……。そうか管理局だ。アレックス、行くよ」




