第26話 第二章 クロノスタワーの攻防 (4/4)
アカリとミキ、そして新たに入ったエヴァン。
三人が今回暗殺のターゲットに選んだ人物は、エヴァンと同じ、遺伝子操作によって自身の能力を引き上げられらたデザイン・チルドレンだった。
厳重なセキュリティが施されたクロノス・タワーで果たして三人は暗殺を成功させられるのか?
登場人物
エヴァン・アトラス:主人公 通称『As エース』
Dr.竜宮:科学庁のお荷物
ミキ・竜宮:エヴァンのクラスメイト
アカリ・竜胆:エヴァンのクラスメイト
クロノス:本話の暗殺対象
エリス:クロノス暗殺の依頼者
ライハ:クロノスにやとわれた弁護士
ドラグーンから放たれたレーザーは町の各地に浮かんでいた三つの反射装甲を順番に通っていく。
最後に、アカリの横の最後の反射装甲までたどりつくと、反射したレーザーが窓ガラスを完全に破壊し、同時にアカリは社長室に降り立った。
時間軸を、アカリの攻撃がライハに止められたところまで進める。
「なんなのこいつ……。ただの弁護士じゃないの?」
クロノスが言う。
「いずれ刺客が来ることはある程度予想していた。 ライハはそのために雇ったサイボーグの弁護士だよ」
ライハの右足に戦闘機の模様が浮かんだ。ミキは眼鏡を直す。
「あの模様……。コンバットシリーズか」
反射装甲のカメラを通じて戦場を見ているエヴァンが呟く。
「コンバット・シリーズ? 戦争がない今廃棄されたはずだ」
ライハは胸ポケットからバッジを取り出す。そこには人が人を抱きしめるデザインが描かれていた。
「俺たちは、戦争被害者だ。俺たちのような人間を出さないためにも、この力は武力解決を優先する輩に使う」
ミキは舌打ちした。
「『ピース・キーパー』か……。『コンバット・シリーズ』の元兵士を抱え込もうとしてるって噂は聞いてたけど、もうこんなのがいるとはね」
弁護士ライハはアカリとクロノスの間に立つ。
「僕はシリーズで言うとNo.5だ。 普通の人間の君では僕に勝てない。大人しく出頭してくれ」
「機械に頼った奴にあれこれ指図されたくはないね」
ライハはため息をつく。
「人は武力を捨てたら自由になれる。なぜ気づかないんだ」
言いながらライハはスーツケースをとって横のボタンを押す。すると、スーツケースが銀色のソードガンに形状を変えた。
ミキはライハを見てため息をつく。
「エース。あんた。このバカ止められない?」
ミキの問いかけにエヴァンが答える,
「再装填まで時間がかかる。もう10秒耐えてくれ」
ミキは指示を出す。
「充分! アカリ! 合図出したらそのバカ窓側に押し付けな!」
「エースの助けなしでやれるよ」
そういうとアカリは、居合で剣を抜きながら一気にライハに向かっていく。
――『鬼涙』!
ライハは剣を弾き返すと、ソードガンのトリガーを押す。
その弾をアカリはギリギリで剣で弾いたが、超弾が足を掠める。
「バカ! あんまり舐めんな。相手はコンバットの一桁台だよ!」
アカリも舌打ちすると、ライハから距離を取る。
「窓側に押し付ける必要はない」
エヴァンの声にアカリとミキは一瞬ついていけなかった。
「アカリ、俺の合図でクロノスの方に飛び込んでくれ。ライハは気にするな」
「気にするな、ってあんた……」
「わかった。クロノスに集中する。ライハはまかせるよ」
アカリはそう言うと、また構えた。
「行け!」
アカリは一気にクロノス側に突っ込んで言った。
ライハの義眼はアカリの動きを完全にとらえている。その先のシュミレーションまで完璧だった。
――0.2コンマ先で仕留める。
ライハがソードガンで、アカリを斜め前から刺そうとしたが、気づくとソードガンはライハの手にはなかった。
――これは?
ライハの義眼は出来事を瞬間再生して、レーザーがソードガンに当たっていることを確認する。
しかし、それでもライハは懸命に手を伸ばしてアカリを止めようとする。だがその手は僅か及ばず、アカリはそのままクロノスの目の前に踏み込む。
アカリの眼前には、恐怖の色が見えない、クロノスがいた。
――突きの方が速い!
アカリはクロノスの目を剣で貫く。そして一気に引き抜くと、クロノスはその場に倒れた。
アカリは追い縋ろうとするライハを横目に一気に空中制御パックで社長室から脱出する。
ライハはその場に無惨に横たわるクロノスを眺めるしかできなかった。
クロノスタワーから降りながら、アカリは剣を見つめていた。
――また勝てない……。
ミキの声がする。
「よくやったよ。早く戻って来な」
「エース……。いやエヴァン……。ありがとう」
アカリの変化にミキは少し驚いた。
クロノスが死んだ知らせを受けて、エリスはふうっとため息をつく。
「なんとか防げたわね……」
しかし次の瞬間強烈な頭痛が彼女を襲った。
「なに……これ……」
次にエリスが目を開けた時、そこは自分の部屋ではなく、ただの真っ白い空間だった。
「おはようエリス」
「その声はクロノス?」
エリスの目の前に、急にクロノスが現れた。
「あなたは死んだんじゃ……」
「死ぬ……か君は僕をAIが産んだ意識だと思っていただろう? その僕がどうして死ぬんだい?」
エリスは困惑する。
「だって、流石に肉体が死ねばいくら意識が機械でも……」
「機械はバックアップを取れる。君が新しい僕の邪魔をすることは気づいていたからね」
「これは……。なんなの?」
クロノスは笑った。
「おそらく、今回の計画も気づいていたのは君だけだ。すなわち僕の邪魔ができる人間も君だけと言うことになる」
「だから……なに?」
「君の体と思考をもらうよ。君さえいなければ僕の計画は完成に向かう」
「何を馬鹿な……」
「君の義足、うちの会社のものに変えただろう? 去年のメンテナンスの時にチップを埋め込ませてもらった。徐々に脳神経を乗っ取れるようにね」
「そんな……」
「いつでも乗っ取ろうと思えばできたんだが、なぜかいつも手が止まるんだ。不思議だね……まあ、君が僕を殺したことでその傾向もなくなったが……」
エリスはハッとする。
――自我がまだあったんだ。それを私が殺してしまった……。
「まあこれからは君が僕として、あの会社を率いていく。残り少ない社員も君なら納得だろう」
「嫌! 私はそんなことはしないわ」
クロノスは笑った。
「これは選択できる話ではない、一応最後だからきただけだよ。これからよろしくね」
そこでエリスの意識は途切れた。




